• 商業登記法ー27.持分会社の種類の変更の登記
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1持分会社の種類の変更の登記

堀川 寿和2022/01/31 14:10

持分会社の種類の変更の登記ー1

(1) 実態手続

 持分会社は、定款変更をすることにより、他の種類の持分会社になることができる。したがって、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意が必要である。

 

(2) 変更の態様

① 合名会社から合資会社・合同会社への変更

 合名会社は、次に掲げる定款の変更をすることにより、それぞれに定める種類の持分会社となる。(会社法638条1項)

(イ)有限責任社員を加入させる定款の変更 ⇒ 合資会社

(ロ)その社員の一部を有限責任社員とする定款の変更 ⇒ 合資会社

(ハ)その社員の全部を有限責任社員とする定款の変更 ⇒ 合同会社

② 合資会社から合名会社・合同会社への変更

 合資会社は、次に掲げる定款の変更をすることにより、それぞれに定める種類の持分会社となる。(会社法638条2項)

(イ)その社員の全部を無限責任社員とする定款の変更 ⇒ 合名会社

(ロ)その社員の全部を有限責任社員とする定款の変更 ⇒ 合同会社

③ 合同会社から合名会社・合資会社への変更

 合同会社は、次に掲げる定款の変更をすることにより、それぞれに定める種類の持分会社となる。(会社法638条3項)

(イ)その社員の全部を無限責任社員とする定款の変更 ⇒ 合名会社

(ロ)無限責任社員を加入させる定款の変更 ⇒ 合資会社

(ハ)その社員の一部を有限責任社員とする定款の変更 ⇒ 合資会社

④ 合資会社の社員の退社による定款のみなし変更

(イ)合資会社の有限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が無限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合名会社となる定款の変更をしたものとみなされる。(会社法639条1項)

(ロ)合資会社の無限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が有限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合同会社となる定款の変更をしたものとみなされる。(会社法639条2項)

 

(3) 定款変更に伴う出資の履行

① 合名会社がその社員の全部を有限責任社員とする定款の変更(会社法638条1項3号)、又は合資会社がその社員の全部を有限責任社員とする定款の変更(会社法638条2項2号)に掲げる定款の変更をする場合において、当該定款の変更をする持分会社の社員が当該定款の変更後の合同会社に対する出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、当該定款の変更は、当該払込み及び給付が完了した日に、その効力を生ずる。(会社法640条1項)合同会社では、出資の履行が完了していなければ、社員になれないためである。

② 合資会社の無限責任社員全員が退社したことによる定款のみなし変更(会社法639条2項)により合同会社となる定款の変更をしたものとみなされた場合において、社員がその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、当該定款の変更をしたものとみなされた日から1か月以内に、当該払込み又は給付を完了しなければならない。ただし、当該期間内に、合名会社又は合資会社となる定款の変更をした場合は、この限りでない。(同条2項)

 

(4) 登記申請手続

① 登記期間

 持分会社が他の種類の持分会社となったときは、定款の変更の効力が生じた日から、本店の所在地においては2週間以内に、支店の所在地においては3週間以内に、種類の変更前の持分会社については解散の登記をし、種類の変更後の持分会社については設立の登記をしなければならない。(会社法919条)

② 登記すべき事項

(イ)種類の変更後の持分会社についてする設立の登記

 「一般の設立の登記と同一の事項」のほか、「会社成立の年月日」、「種類の変更前の持分会社の商号」並びに「持分会社の種類を変更した旨」及び「その年月日」である。

(ロ)種類の変更前の持分会社についてする解散の登記

 解散の旨並びにその事由及び年月日である。その後登記記録は閉鎖される。

③ 同時申請

 上記(イ)(ロ)の登記は、同時にしなけれればならない。(商登法106条項)申請書の添付書面に関する規定は、(ロ)についての登記の申請については、適用しない(同条2項)ため、解散登記の申請については添付書面を要しない。登記官は、(イ)(ロ)のいずれかに却下事由があるときは、これらの申請を共に却下しなければならない。(同条3項)

④ 添付書面

(イ)合名会社への変更(合資会社又は合同会社⇒合名会社)

a) 合名会社の設立登記

総社員の同意があったことを証する書面

定款

・代理人によって申請する場合、「委任状

b) 合資会社又は合同会社の解散登記

 添付書面を要しない。

(ロ)合資会社への変更(合名会社又は合同会社⇒合資会社)

a) 合資会社の設立登記

総社員の同意があったことを証する書面

定款

有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面

・有限責任社員を加入させたときは、「有限責任社員の加入を証する書面

・代理人によって申請する場合、「委任状

b) 合名会社又は合同会社の解散登記

 添付書面を要しない。

(ハ)合同会社への変更(合名会社又は合資会社⇒合同会社)

a) 合同会社の設立登記

総社員の同意があったことを証する書面

定款

・会社法640条1項の規定による「出資に係る払込み及び給付が完了したことを証する書面

・「資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面

・出資の履行により資本金の額を増加した場合にはその額の決定を証する「業務執行社員の過半数の一致を証する書面

・代理人によって申請する場合、「委任状

b) 合名会社又は合資会社の解散登記

添付書面を要しない。

(イ)(ロ)(ハ)いずれのパターンも債権者保護手続は不要であるため、債権保護手続関係書面の添付は不要である。変更登記前の会社債務については社員が従前の責任を負うからである。

 

   持分会社の種類の変更による設立登記の添付書面 まとめ

 

変更後の持分会社

合名会社

合資会社

合同会社

 

 

 

 

 

  総社員の同意書

  定款

  有限責任社員が既に履行した出資の価格を証する書面

  有限責任社員を加入させたときは、その加入を証する書面

・総社員の同意書

・定款

・会社法640条1項の規定による出資に係る払込み及び給付が完了したことを証する書面

・資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面

・総社員の同意書

・定款

 

 

 

 

・総社員の同意書

・定款

・会社法638条2項2号の

規定により合同会社となった場合には同法640条1項の規定による出資に係る払込み及び給付が完了したことを証する書面

・資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面

・総社員の同意書

・定款

  総社員の同意書

  定款

  有限責任社員が既に履行した出資の価格を証する書面

  無限責任社員を加入させたときは、その加入を証する書面

 

 

 

 

 

⑤ 登録免許税

(イ)種類の変更後の持分会社についてする設立の登記

 種類の変更後の持分会社の設立の登記の登録免許税額は、本店の所在地においては、次に掲げる区分に応じ、申請1件につき、次のとおりである。

a) 合名会社又は合資会社の設立登記

 金6万円(別表一、二十四(一)ロ)

b) 合同会社の設立登記

 資本金の額の1000分の1.5を乗じた額である。

 ただし、種類の変更の直前における資本金の額として財務省令で定めるものを超える資本金の額に対応する部分については、1000分の7となる。 (これによって計算した税額が金3万円に満たないときは、金3万円)(別表一、二十四(一)ホ)なお、財務省令で定めるものは、種類の変更をした会社の種類の変更の直前における資本金の額(当該種類の変更をする会社が合名会社もしくは合資会社である場合には、金900万円)である。(登録免許税法施行規則12条1項3号)

(ロ)種類の変更前の持分会社についてする解散の登記

 申請1件につき、本店の所在地においては金3万円である。(別表一、二十四(一)レ)

(ハ)支店所在地での登記

a) 支店の所在地における設立の登記

 申請1件につき金9000円である。(別表一、二十四(ニ)イ)

b) 支店の所在地における解散の登記

 申請1件につき金9000円である。(別表一、二十四(ニ)イ)

 

持分会社の種類の変更の登記ー2

種類変更による設立登記 申請書 記載例 (合名会社⇒合資会社) 

登記の事由

  種類変更による設立

登記すべき事項

  商号 合資会社ABC

  本店 何県何市何丁目何番何号

  公告する方法 官報に掲載してする。

  会社成立年月日 平成何年何月何日

  目的

  1. ・・・・・

  2. ・・・・・

  3. ・・・・・

  何県何市何丁目何番何号 

  無限責任社員 A

  何県何市何丁目何番何号

  無限責任社員 B株式会社

  何県何市何丁目何番何号 

  有限責任社員 C

  金100万円 全部履行

  代表社員 A

  登記記録に関する事項

  平成何年何月何日合名会社ABCを種類変更し設立

登録免許税

   金万円

添付書類(*1)

   定款                          1通

   総社員の同意書                     1通

   有限責任社員が既にした出資の履行を証する書面      1通

   委任状                         1通

(*1)合名会社が有限責任社員Cを加入させた場合には、当該「加入を証する書面」を添付する。

また、代表社員の選定について、定款の定めに基づく社員の互選による場合には、当該「互選書」と「代表社員の就任承諾書」も必要となる。

 

  完了後の登記記録

商 号

合資会社ABC

本 店

何県何市何丁目何番何号

公告する方法

官報に掲載してする。

会社成立年月日

平成何年何月何日

目 的

1. ・・・・・

2. ・・・・・

3. ・・・・・

社員に関する事項

何県何市何丁目何番何号

無限責任社員 A

何県何市何丁目何番何号

無限責任社員 B株式会社

何県何市何丁目何番何号

社員 C

代表社員 A

登記記録に関する事項

平成何年何月何日合名会社ABCを種類変更し設立

                     平成何年何月何日登記

 

種類変更による解散登記 申請書 記載例 (合名会社⇒合資会社) 

登記の事由

  種類変更による解散

登記すべき事項

  平成何年何月何日何県何市何丁目何番何号合資会社ABCに種類変更し解散

登録免許税

   金万円

添付書類

   なし

 

  完了後の登記記録

登記記録に関する事項

平成何年何月何日何県何市何丁目何番何号合資会社ABCに種類変更し解散

                     平成何年何月何日登記