• 商業登記法ー25.持分会社に関する登記
  • 6.登記申請手続
  • 登記申請手続
  • Sec.1

1登記申請手続

堀川 寿和2022/01/31 13:58

登記申請手続ー1

(1) 登記の申請人

 会社を代表すべき者の申請による。

 

(2) 登記期間

 本店での設立登記については、期間の定めはないが、設立に際して支店を設けた場合の支店所在地における設立登記については、本店所在地において設立登記をした日から2週間以内にしなければならない。(会社法930条1項1号)

 

(3) 登記の事由

 「設立の手続終了」と記載する。本店所在地における設立登記については、登記期間の定めがないため、年月日の記載は要しない。cf 株式会社の設立登記

 

(4) 登記すべき事項

① 持分会社に共通する登記事項(会社法912条〜914条)

 すべての持分会社に共通の登記事項は以下のとおりである。

1. 目的

2. 商号

3. 本店及び支店の所在場所

4. 会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがある場合は、その定め

5. 会社を代表する社員が法人である場合は、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所

6. 会社法939条1項の規定による公告方法についての定款の定めがある場合は、その定め

7. 公告方法についての定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものである場合は、次に掲げる事項

(イ)電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令(会施規220条)で定めるもの

(ロ)会社法939条3項後段の規定による定款の定めがある場合は、その定め

8. 公告方法についての定款の定めがない場合は、会社法939条4項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨

 

② 各持分会社特有の登記事項

(イ)合名会社

1. 社員の氏名又は名称及び住所

2. 会社を代表する社員の氏名又は名称(会社を代表しない社員がある場合に限る。)

(ロ)合資会社

1. 社員の氏名又は名称及び住所

2. 社員が有限責任社員又は無限責任社員のいずれかであるかの別

3. 有限責任社員の出資の目的及びその価額並びに既に履行した出資の価額

4. 会社を代表する社員の氏名又は名称(会社を代表しない社員がある場合に限る。)

(ハ)合同会社

1. 資本金の額

2. 業務を執行する社員の氏名又は名称

3. 会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所

 

持分会社の社員に関する登記すべき事項

 

合名会社

合資会社

合同会社

すべての社員

氏名又は名称及び住所

氏名又は名称及び住所

 

業務執行社員

 

 

氏名又は名称

代表社員

氏名又は名称

(合名会社を代表しない社員がいる場合に限る)

(*1)

氏名又は名称

(合資会社を代表しない

社員がいる場合に限る)

(*1)

氏名又は名称及び

住所(*1)

(*1)法人であるときは、これに加えて当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所

 

(5) 添付書面

① 本店所在地における登記

(イ)合名会社、合資会社、合同会社共通の書類

1. 定款

 株式会社の設立登記の際と異なり、公証人の認証は不要である。

2. 定款の定めに基づく社員の互選によって代表社員を定めた場合には、社員の互選を証する書面及び代表社員の就任承諾書

3. 代表社員が法人であるときは、次に掲げる書面

a) 当該法人の登記事項証明書

 当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合と会社法人等番号を申請書に記載した場合には、不要となる。

b) 当該社員の職務を行うべき者の選任に関する書面

 例えば、持分会社の社員が株式会社である場合、会社の中で持分会社の職務執行を行う者を選ぶ必要があり、その選任したことを証する書面が必要となる。

ex)取締役会議事録や取締役が選任したことを証する書面

c) 当該社員の職務を行うべき者が就任を承諾したことを証する書面

4. 持分会社の社員(代表社員を除く。)が、法人であるときは、登記事項証明書

 当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合と会社法人等番号を申請書に記載した場合には、不要となる。

5. 社員の一致を証する書面

 登記すべき事項について、総社員の一致や社員の過半数の一致が必要となる場合に添付を要する。例えば、定款に具体的本店の所在場所を定めていない場合には、原則として(業務執行)社員の過半数で決定することになり、それを証するために添付することになる。

6. 代理人に登記申請を委任する場合には、「委任状

持分会社の設立登記の申請書には株式会社と異なり、代表社員が就任承諾したことを証する書面に押された印鑑につき市区町村長の作成した印鑑証明書を添付しなければならない旨の規定は存在しない。

(ロ)合資会社特有の書類

1. 有限責任社員がすでに履行した出資の価額を証する書面

 合資会社の有限責任社員の出資の目的、その価額、すでに履行した出資の価額は登記事項とされている関係上、添付を要求される。

(ハ)合同会社特有の書類

1. 出資に係る払込み及び給付があったことを証する書面

 合同会社の社員になろうとする者は、定款作成後、合同会社の設立登記をするまでの間にその出資に係る金銭の全額を払い込み又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならないため、それを証するために添付を要する。

2. 設立時の資本金の額につき業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面

3. 資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面

 

先例

(H19.1.17民商91号)

 

合同会社がする設立の登記(出資に係る財産が金銭のみである場合に限る。)の申請書には、当分の間、資本金の額の計上に関する書面の添付は要しない。

 

② 支店所在地における登記

 本店及び支店の所在地において登記すべき事項について支店の所在地においてする登記の申請書には、本店の所在地においてした登記を証する書面(登記事項証明書)を添付しなければならない。

 この場合、委任状を含めて他の書面の添付を要しない。

 

(6) 登録免許税

合名会社・合資会社の設立登記

 申請1件につき、本店の所在地では金6万円である。(登録免許税法別表一、二十四(一)ロ)

 支店所在地では、9000円(登録免許税法別表一、二十四(二)イ)である。

② 合同会社の設立登記

 申請1件につき、本店の所在地では資本金の額に1000分の7を乗じた額である。なお、これによって計算した税額が6万円に満たない場合には、金6万円である。(登録免許税法別表一、二十四(一)ハ)

 支店所在地では、9000円(登録免許税法別表一、二十四(二)イ)である。

 

合名会社の設立登記 申請書 記載例 

登記の事由

  設立の手続終了

登記すべき事項

  商号 合名会社ABC

  本店 何県何市何丁目何番何号

  公告する方法 官報に掲載してする。

  目的

  1. ・・・・・

  2. ・・・・・

  3. ・・・・・

  何県何市何丁目何番何号 

  社員 A

  何県何市何丁目何番何号

  社員 B

  何県何市何丁目何番何号 

  社員 株式会社C

  代表社員 A

  登記記録に関する事項

  設立

登録免許税

   金万円

添付書類

   定款                          1通

   社員の互選書                      1通

   代表社員の就任承諾書                  1通

   登記事項証明書                     1通

   委任状                         1通

 

登記申請手続ー2

  完了後の登記記録

商 号

合名会社ABC

本 店

何県何市何丁目何番何号

公告する方法

官報に掲載してする。

会社成立年月日

平成何年何月何日

目 的

1. ・・・・・

2. ・・・・・

3. ・・・・・

社員に関する事項

何県何市何丁目何番何号

社員 A

何県何市何丁目何番何号

社員 B

何県何市何丁目何番何号

社員 C

代表社員 A

登記記録に関する事項

設立

                     平成何年何月何日登記

 

合資会社の設立登記 申請書 記載例 

登記の事由

  設立の手続終了

登記すべき事項(*1)

  商号 合資会社XYZ

  本店 何県何市何丁目何番何号

  公告する方法 官報に掲載してする。

  目的

  1. ・・・・・

  2. ・・・・・

  3. ・・・・・

  何県何市何丁目何番何号 

  無限責任社員 株式会社X

  何県何市何丁目何番何号

  有限責任社員 Y

  金500万円 内金250万円履行

  何県何市何丁目何番何号

  有限責任社員 

  何県何市何丁目何番地 宅地 何平方メートル(*2)

  この価額 金300万円 全部履行

  代表社員 株式会社X

       何県何市何丁目何番何号

       職務執行者  甲野 太郎(*3)

  登記記録に関する事項

  設立

登録免許税

   金万円

添付書類

   定款                          1通

   社員の互選書                      1通

   代表社員の就任承諾書                  1通

   職務執行者の選任に関する書面(*4)          1通

   登記事項証明書                     1通

   有限責任社員がすでに履行した出資の価額を証する書面   1通

   委任状                         1通

(*1)合資会社の社員については社員の有限責任・無限責任の別及び有限責任社員については、履行の終わった部分についても登記する。

(*2)現物出資の内容である。

(*3)会社を代表する社員が法人である場合は、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所も登記事項となる。

(*4)代表社員が法人の場合に、添付を要する。具体的に添付する書面は、以下の通りである。

 

法人の種類

選任したことを証する書面の具体的内容

株式会社

取締役会設置会社 ⇒ 取締役会の議事録

取締役会非設置会社  ⇒ 取締役が選任したことを証する書面

指名委員会等設置会社  ⇒ 執行役が選任したことを証する書面

持分会社

社員が選任したことを証する書面

 

合同会社の設立登記 申請書 記載例 

登記の事由

  設立の手続終了

登記すべき事項

  商号 合同会社甲乙丙

  本店 何県何市何丁目何番何号

  公告する方法 官報に掲載してする。

  目的

  1. ・・・・・

  2. ・・・・・

  3. ・・・・・

  資本金の額 金 何万円

  業務執行社員 甲

  業務執行社員 株式会社乙

  何県何市何丁目何番何号 

  代表社員 甲

  何県何市何丁目何番何号

  代表社員 株式会社乙

  何県何市何丁目何番何号

  職務執行者 丙野 三郎

  登記記録に関する事項

  設立

課税標準価額

  金何万円(*1)

登録免許税

   金万円(*2)

添付書類

   定款                          1通

   出資に係る払込み及び給付があったことを証する書面    1通

   社員の決定書                      1通

   職務執行者の選任に関する書面              1通

   職務執行者の就任承諾書                 1通

   登記事項証明書                     1通

   資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面  1通

                                         (*3)

   委任状                         1通

(*1)資本金の額が課税標準価額となる。

(*2)課税標準価額に1000分の7を乗じた額で、これによって計算した額が6万円に満たない場合には、金6万円となる。

(*3)出資に係る財産が金銭のみである場合には、添付は不要である。