• 商業登記法ー21.組織再編に関する登記
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  • 株式移転の登記
  • Sec.1

1株式移転の登記

堀川 寿和2022/01/31 13:06

株式移転の態様

株式移転は、完全子会社完全親会社いずれもが株式会社の場合にのみ認められる。

 

株式移転ー1

(1) 手続きの流れ

 

(2) 株式移転計画の作成

 1又は2以上の株式会社は、株式移転をすることができる。この場合においては、株式移転計画を作成しなければならない。(会社法772条1項)また、2以上の株式会社が共同して株式移転をする場合には、当該2以上の株式会社は、共同して株式移転計画を作成しなければならない。(会社法772条2項)

 株式移転計画には、次に掲げる事項を定めなければならない。(会社法773条1項)

1. 株式移転設立完全親会社の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数(1号)

2. 1.に掲げられたもののほか、株式移転設立完全親会社の定款で定める事項(2号)

3. 株式移転設立完全親会社の設立時取締役の氏名(株式移転設立完全親会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役とそれ以外の設立時取締役とを区別して定めなければならない。)(3号、2項)

4. 株式移転設立完全親会社が会計参与設置会社である場合は、株式移転設立完全親会社の設立時会計参与の氏名又は名称(4号イ)

5. 株式移転設立完全親会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合は、株式移転設立完全親会社の設立時監査役の氏名(4号ロ)

6. 株式移転設立完全親会社が会計監査人設置会社である場合は、株式移転設立完全親会社の設立時会計監査人の氏名又は名称(4号ハ)

7. 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の株主に対して交付するその株式に代わる当該株式移転設立完全親会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式移転設立完全親会社の資本金及び準備金の額に関する事項(5号)

8. 株式移転完全子会社の株主に対する7.の株式の割当てに関する事項(6号)

9. 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の株主に対してその株式に代わり株式移転設立完全親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法(7号イ)(*2)

10. 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の株主に対してその株式に代わり株式移転設立完全親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法(7号ロ)

11. 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の株主に対してその株式に代わり、株式移転設立完全親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債について の9.に掲げる事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についての10.に掲げる事項(7号ハ)

12. 9.11.の場合は、株式移転完全子会社の株主に対する9.11.の社債等の割当てに関する事項(8号)

13. 株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付するときは株式移転計画新株予約権の内容(9号イ)

14. 株式移転計画新株予約権の新株予約権者に対して交付する株式移転設立完全親会社の新株予約権の内容及び数又はその算定方法(9号ロ)

15. 株式移転計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、株式移転設立完全親会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法(9号ハ)

16. 13.15.の場合は、株式移転計画新株予約権の新株予約権者に対する株式移転設立完全親会社の新株予約権の割当てに関する事項(10号)

 なお、株式移転完全子会社が種類株式発行会社であるときは、株式移転完全子会社は、その発行する種類の株式の内容に加えて、上記8.及び12.の事項として次に掲げる事項を定めることができる。

(イ)ある種類の株式の株主に対して株式移転設立完全親会社の株式又は社債等の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式又は社債等の種類(会社法773条3項1号、5項)

(ロ)(イ)に掲げた事項のほか、株式移転設立完全親会社の株式又は社債等の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容(会社法773条3項2号、5項)

 8.及び12.の事項についての定めは、株式移転完全子会社の株主((イ)の株主を除く。)の有する株式の数((ロ)の事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて株式移転設立完全親会社の株式又は社債等を交付することを内容とするものでなければならない。(会社法773条4項、5項)

 

(3) 株式移転に関する書面等の備置き及び閲覧等(事前開示)

 株式移転完全子会社は、新設合併契約等備置開始日から株式移転設立完全親会社の成立の日後6か月を経過する日までの間、株式移転計画の内容その他法務省令(会施規206条)で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。(会社法803条1項3号)株式移転完全子会社の株主及び新株予約権者は、株式移転完全子会社に対して、その営業時間内はいつでも、上記の書面又は電磁的記録の閲覧等を請求することができる。(同条3項)

 なお、ここでいう新設合併契約等備置開始日とは、次に掲げる日のいずれか早い日のことである。(同条2項)

1. 新設合併契約等について株主総会(種類株主総会を含む。)の決議によってその承認を受けなければならないときは、当該株主総会の日の2週間前の日(会社法319条1項の場合にあっては、同項の提案があった日)

2. 株式買取請求の機会を与えるための、株主に対する会社法806条3項の通知の日又は同条4項の公告の日のいずれか早い日

3. 新株予約権者に対する会社法808条3項の規定による通知の日又は同条4項の公告の日のいずれか早い日

4. 債権者保護手続をしなければならないときは、会社法810条2項の規定による公告の日又は催告の日のいずれか早い日

5. 1.4.以外の場合には、新設分割計画の作成の日から2週間を経過した日

 

(4) 株式移転計画の承認等

① 株式移転完全子会社

単一株式発行会社

(イ)原則(株主総会の特別決議)

 株式移転完全子会社は、原則として、株主総会の特別決議によって、株式移転計画の承認を受けなければならない。(会社法804条1項、会社法309条2項12号)

(ロ)例外

a) 株主総会特殊決議

 株式移転する会社(株式移転完全子会社)が公開会社であり(種類株式発行会社を除く。)、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合は、株主総会特殊決議が必要である。(会社法309条3項3号)

b) 総株主の同意

 吸収合併・新設合併・株式交換の場合のように、総株主の同意を要する場合はない。株式移転は完全子会社・完全親会社ともに株式会社であるため、完全親会社が完全子会社の株主に交付する対価が持分会社の持分ということはあり得ないためである。

種類株式発行会社

(イ)全体株主総会特別決議+譲渡制限株式等の割当てを受ける譲渡制限株式でない種類株主の種類株主総会特殊決議

 株式移転完全子会社が種類株式発行会社である場合において、株式移転完全子会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(譲渡制限株式その他これに準ずるものとして法務省令(会施規185条)で定めるものをいう。)であるときは、株式移転は、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が2以上ある場合にあっては、当該2以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議(特殊決議 会社法324条3項2号)がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この限りでない。(会社法783条3項)

(ロ)全体株主総会特別決議+ある種類株主全員の同意

 上記(ロ)b)と同様の理由により、完全子会社が種類株式発行会社の場合に、種類株主全員の同意が必要になるということもない。

略式手続による株式移転(略式株式移転)

 株式移転完全親会社は、これから設立するため、特別支配関係にある場合は考えられないため、略式手続によることができる場合はあり得ない。

② 登録株式質権者等への通知又は公告

 株式移転完全子会社は、株式移転計画の承認決議をした株主総会の決議の日から2週間以内に、一定の登録株式質権者及び新株予約権の登録新株予約権質権者に対し、株式移転をする旨を通知又は公告しなければならない。(会社法804条4項5項)

 

(5) 株式の買取請求等

 新設合併における新設合併消滅株式会社や新設分割における新設分割株式会社の場合と同様に株式移転に反対する一定の株主は、株式移転完全子会社に株式買取請求をすることができる。

 株式移転完全子会社は、株式移転計画の承認決議をした株主総会の日から2週間以内に、その株主に対し、株式移転をする旨並びに他の株式移転完全子会社及び株式移転設立完全親会社の商号及び住所を通知し又は公告しなければならない。(会社法806条3項4項)

 

(6) 新株予約権買取請求等

 株式会社が株式移転をする場合において、次に掲げる新株予約権であって、株式移転計画の定めが新株予約権の内容に合致する新株予約権以外の新株予約権を有する新株予約権者は、株式移転完全子会社に対し、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる。(会社法808条1項3号)

1. 株式移転計画新株予約権

2. 株式移転計画新株予約権以外の新株予約権であって、株式移転をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもの

 新株予約権付社債を有する者が新株予約権の買取請求をする場合は、その新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがあるときを除き、当該新株予約権と併せて、新株予約権付社債についての社債を買い取ることを請求しなければならない。(同条2項)

 

(7) 債権者保護手続

(イ)異議を述べることができる債権者

 株式移転計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合、当該新株予約権付社債についての社債権者は、株式移転完全子会社に対し、株式移転について異議を述べることができる。(会社法810条1項3号)

 株式移転がされたとしても、債務の承継はないため、債権者保護手続は原則として不要であるが、株式移転計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合、当該社債に係る債務は株式移転設立完全親会社に承継されるため、特に当該新株予約権付社債の社債権者に対しては債権者保護手続をする必要があるのである。

(ロ)公告及び催告

 異議を述べることができる債権者がいる場合には、株式移転完全子会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(異議を述ベることができるものに限る。)には、各別にこれを催告しなければならない。(会社法810条2項)

1. 株式移転をする旨

2. 他の株式移転完全子会社及び株式移転設立完全親会社の商号及び住所

3. 株式移転完全子会社の計算書類に関する事項として法務省令(会施規208条)で定めるもの

4. 債権者が一定の期間内(1か月を下ることができない。)に異議を述べることができる旨

 なお、株式移転完全子会社が上記の公告を官報のほか定款の定めに従い、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙により、又は電子公告の方法により公告をするときは、知れている債権者への各別の催告は省略することができる。(同条3項)

(ハ)異議を述べた債権者に対する対応

 債権者が期間内に異議を述べない場合には、株式移転を承認したものとみなされる(会社法810条4項)が、異議を述べた場合は、株式移転完全子会社は、弁済をするか、相当の担保を提供するか、弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。

 しかし、株式移転してもその債権者を害するおそれがないときは、この限りでないため、会社は弁済等の手続きをとる必要はない。(同条5項)

 

(8) 株券の提出に関する公告等

 株券発行会社が株式移転をする場合には、当該株券発行会社は、株式移転の効力が生ずる日(以下、株券提出日という。)までに株券を会社に対し提出しなければならない旨を株券提出日の1か月前までに公告し、かつ、当該株式の株主及び登録株式質権各には、各別にこれを通知しなければならない。(会社法219条1項8号)ただし、全部の株式について株券を発行していない場合は不要である。

 

(9) 新株予約権証券に関する公告等

 株式会社が株式移転をする場合において、株式移転計画新株予約権に係る新株予約権証券(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債に係る新株予約権付社債券)が発行されているときは、当該株式会社は、株式移転の効力発生日(以下、新株予約権証券提出日という。)までに当該株式会社に対し、新株予約権証券を提出しなければならない旨を新株予約権証券提出日の1か月前までに公告し、かつ、当該新株予約権の新株予約権者及びその登録新株予約権質権者には、各別にこれを通知しなければならない。(会社法293条1項7号)

 

(10) 株主による差止請求

 株式移転が法令又は定款に違反する場合において、株式移転完全子会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株式移転完全子会社の株主は、株式移転完全子会社に対し、当該株式移転をやめることを請求することができる。(会社法805条の2)

 

(11) 株式移転に関する書面等の備置き及び閲覧等(事後開示)

 株式移転完全子会社は、株式移転設立完全親会社の成立の日後遅滞なく、株式移転設立完全親会社と共同して、株式移転により株式移転設立完全親会社が取得した株式移転完全子会社の株式の数その他の株式移転に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成し、株式移転設立完全親会社の成立の日から6か月間、上記の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。(会社法811条2項)

 株式移転設立完全親会社の成立の日に株式移転完全子会社の株主又は新株予約権者であった者は、株式移転完全子会社に対して、その営業時間内は、いつでも、上記の書面又は電磁的記録の閲覧等を請求することができる。(同条3項4項)

 

(12) 登記申請手続

① 登記の要否

(イ)株式移転完全子会社

 株式移転完全子会社においては、完全子会社の新株予約権者に対して完全親会社の新株予約権を交付すると定めた場合には、完全子会社の新株予約権が消滅するため、株式移転計画新株予約権が消滅した旨を登記する必要がある。

(ロ)株式移転完全親会社

 完全親会社の設立登記の際は、通常の設立の登記事項と同一の事項を登記しなければならない。また、完全子会社の新株予約権者に設立する会社の新株予約権を交付した場合には、新株予約権に関する登記事項も登記しなければならない。株式交換と同様、株式移転をした旨は登記事項とはならない

② 申請人

 完全子会社の変更登記の申請は、完全子会社の代表者が申請する。また、完全親会社の設立登記の申請は、完全親会社の代表者が申請する。

 

株式移転ー2

③ 申請形態(経由同時申請)

(イ)経由申請

 完全親会社及び完全子会社のどちらにおいても登記が必要な場合において、本店所在地における完全子会社の変更登記の申請は、当該登記所の管轄区域内に株式移転完全親会社の本店がないときは、その本店を管轄する登記所を経由してしなければならない。(商登法91条1項)

(ロ)同時申請

 完全親会社及び完全子会社のどちらにおいても登記が必要な場合においては、完全親会社における設立登記と完全子会社における変更登記は同時にしなければならない。(商登法91条2項)

④ 登記の事由

(イ)株式移転完全子会社

 「株式移転」と記載する。「株式移転による変更」という記載例もある。

(ロ)株式移転完全親会社

(ハ)「平成何年何月何日株式移転の手続終了」と記載する。

⑤ 登記すべき事項

(イ)株式移転完全子会社

 株式移転を機に新株予約権の承継がある場合には、株式移転計画新株予約権が消滅した旨及びその変更年月日を記載する。

(ロ)株式移転完全親会社

a) 通常の設立の登記事項と同一の事項

b) 完全子会社の新株予約権者に新株予約権を発行した場合には、新株予約権に関する登記事項及び変更年月日

 通常の新株予約権の発行に必要な事項を記載すればよい。

* なお、株式移転をした旨ならびに完全子会社の商号及び本店は登記すべき事項とはならない。

⑥ 添付書面(株式移転による登記)

 株式移転完全子会社がする株式移転による新株予約権の変更の登記の申請において、経由申請によるときは、申請書には登記所において作成した株式移転完全子会社の代表取締役の印鑑証明書を添付しなければならない。この場合、委任状を除き、他の添付を要しない。(商登法91条3項)

(イ)株式移転完全子会社

1. 経由申請によるときは、完全子会社の代表者の「印鑑証明書」

2. 代理人によって申請する場合、「委任状」

(ロ)株式移転完全親会社

完全親会社に関する必要書類

1. 株式移転計画書

2. 定款

3. 株主名簿管理人を置いたときは、「株主名簿管理人との契約を証する書面

4. 設立時取締役が設立時代表取締役を選定したときは、これに関する書面

5. 完全親会社が指名委員会等設置会社であるときは、設立時執行役の選任並びに設立時委員及び設立時代表執行役の選定に関する書面

6. 設立時取締役、設立時監査役及び設立時代表取締役(監査等委員会設置会社である場合にあっては設立時監査等委員である設立時取締役及びそれ以外の設立時取締役並びに設立代表取締役、指名委員会等設置会社にあっては、設立時取締役、設立時委員、設立時執行役及び設立時代表執行役)が就任を承諾したことを証する書面

7. 設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役の本人確認証明書(*1)

 なお、登記の申請書に印鑑証明書を添付した場合には、印鑑証明書を添付した者の本人確認証明書の添付は不要である。(*1)

8. 設立時会計参与又は設立時会計監査人を選任したときは、次に掲げる書面

ⅰ)就任を承諾したことを証する書面

ⅱ)これらの者が法人であるときは、当該法人の登記事項証明書

 設立会社の本店を管轄する登記所の管轄区域内に完全子会社の本店がある場合又は、申請書に当該法人の会社法人等番号を記載した場合には添付は不要である。(商登法81条5号ただし書、19条の3)

ⅲ)これらの者が法人でないときは、会社法333条1項又は337条1項に規定する資格者であることを証する書面 「税理士であることを証する書面」「公認会計士であることを証する書面

9. 特別取締役による議決の定めがあるときは、「特別取締役の選定を証する書面」及びその選定された者が「就任を承諾したことを証する書面」

10. 資本金の額が会社法第445条第5項の規定に従って計上されたことを証する書面

11. 代表者の就任承諾を証する書面についての印鑑証明書(商登規61条4項5項)

12. 代理人によって申請する場合、「委任状

完全子会社の手続に関する必要書類

1. 完全子会社の登記事項証明書

 申請する登記所の管轄区域内に設立会社の本店がある場合又は申請書に当該法人の会社法人等番号を記載した場合には、添付を要しない。(商登法80条5ただし書、19条の3)

2. 完全子会社の承認機関に応じた株式移転計画の承認その他の手続があったことを証する書面(株主総会議事録又は種類株主総会議事録)+株主リスト

3. 債権者保護手続関係書面

4. 完全子会社が株券発行会社であるときは、「株券提供公告をしたことを証する書面」又は「株式の全部につき株券を発行していないことを証する書面

5. 完全子会社が新株予約権を発行している場合において、その新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる完全親株式会社の新株予約権を交付するときは、「新株予約権証券提供公告をしたことを証する書面」又は「新株予約権証券を発行していないことを証する書面

 

先例

(H27.2.20民商18号)(*1)

 

合併又は組織変更による設立の登記の場合には、商登規61条4項又は5項の規定の適用が除外されているため、当該登記の申請書には、全ての設立時取締役、設立時監査役又は設立時執行役の本人確認証明書を添付しなければならない。

* 株式移転に際して、株式移転に反対の株主には、会社に対し自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求する権利が認められており、株式移転完全子会社は株主に対して株主買取請求権の行使の機会を与えるため、通知又は公告をしなければならない。(会社法806条3項4項)

しかし、株式買取請求に関する通知又は公告をしたことを証する書面を添付書面とする規定はない。 

⑦ 登録免許税

(イ)株式移転完全親会社

 資本金の額を課税標準金額として、それに1000分の7を乗じた金額となる。ただし、これによって計算した税額が金15万円に満たないときは、金15万円である。(登録免許税別表1.24.(1)イ)

(ロ)株式移転完全親会社

 登記事項の変更分として金3万円(登録免許税別表1.24.(1)ツ)である。

 

株式移転による設立登記 申請書 記載例 (株式移転完全親会社)

株式会社乙が株式移転し、株式会社甲を設立した場合の記載例である。

登記の事由

  平成何年何月何日株式移転の手続終了

登記すべき事項

  商号 株式会社

  本店 何県何何町何丁目何番何号

  公告する方法 官報に掲載してする。

  目的 1.○○○

     2.△△△

     3.×××

  発行可能株式総数 何株

  発行済株式の総数 何株

  資本金の額 金何万円

  株式の譲渡制限に関する規定

  当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。

  取締役 A

  取締役 B

  取締役 C

  何県何市何町何丁目何番何号

  代表取締役 A

  監査役 D

  取締役会設置会社に関する事項 取締役会設置会社

  監査役設置会社に関する事項 監査役設置会社

  登記記録に関する事項

   設立

課税標準金額

   金1000万円

登録免許税

   金15万円

添付書類

  株式移転計画書                        1通

  定款                             1通

  設立時代表取締役の選定を証する書面              1通

  就任承諾書                          5通

  本人確認証明書                        2通

  資本金の額が会社法の規定に従って計上されたことを証する書面  1通

  完全子会社の登記事項証明書                  1通

  株主総会議事録                        2通

  株主リスト                          2通

  公告及び催告をしたことを証する書面              何通

  異議を述べた債権者を害するおそれがないことを証する書面    何通

  株券提供公告をしたことを証する書面              1通

  印鑑証明書                          1通

  委任状                            1通

 

  完了後の登記記録

商号

株式会社甲

本店

何県何何町何丁目何番何号

公告する方法

官報に掲載してする。

目的

1.○○○

2.△△△

3.×××

発行可能株式総数

何株

発行済株式の総数 

何株

資本金の額

金何万円

株式の譲渡制限に

関する規定

当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。

役員に関する事項

取締役 A

取締役 B

取締役 C

何県何何町何丁目何番何号

代表取締役 A

監査役 D

取締役会設置会社

に関する事項

取締役会設置会社

監査役設置会社

に関する事項

監査役設置会社

登記記録に関する事項

設立(*1)

(*1)合併や会社分割の場合と違って株式移転をした旨並びに株式移転完全子会社の商号及び本店を登記することを要しない。