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1株式交換の登記

堀川 寿和2022/01/31 11:47

株式交換の態様

 株式交換は、株式会社が完全子会社となり、株式会社又は合同会社が完全親会社となる場合に認められる。(会社法767条)

株式交換ー1

(1) 手続きの流れ

 

(2) 株式交換契約

① 株式交換契約の締結

 会社が株式交換を行う場合、株式交換完全親会社との間で株式交換契約を締結しなければならない。(会社法767条)

② 株式交換契約事項

a) 株式会社に発行済株式を取得させる株式交換契約の内容

 株式交換完全親会社が株式会社であるときは、株式交換契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。(会社法768条1項)

1. 株式交換完全子会社及び株式交換完全親株式会社の商号及び住所(1号)

2. 株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わり株式交換完全親株式会社の株式を交付するときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式交換完全親株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項(2号イ)

3. 株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わり株式交換完全親株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法(2号ロ)

4. 株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わり株式交換完全親株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法(2号ハ)

5. 株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わり株式交換完全親株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についての3.の事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についての4.の事項(2号ニ)

6. 株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わり株式交換完全親株式会社の株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数もしくは額又はこれらの算定方法(2号ホ)

7. 2.6.の場合には、株式交換完全子会社の株主(株式交換完全親株式会社を除く。)に対する2.6.の金銭等の割当てに関する事項(3号)

8. 株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる当該株式交換完全親株式会社の新株予約権を交付するときは、株式交換契約新株予約権の内容(4号イ)

9. 株式交換契約新株予約権の新株予約権者に対して交付する株式交換完全親株式会社の新株予約権の内容及び数又はその算定方法(4号ロ)

10. 株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、株式交換完全親株式会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法(4号ハ)

11. 8.10.の場合には、株式交換契約新株予約権の新株予約権者に対する株式交換完全親株式会社の新株予約権の割当てに関する事項(5号)

12. 株式交換がその効力を生ずる日(6号)

 なお、株式交換完全子会社が種類株式発行会社であるときは、株式交換完全子会社及び株式交換完全親株式会社は、株式交換完全子会社の発行する種類の株式の内容に応じ、上記7.の事項として、次に掲げる事項を定めることができる。(会社法768条2項)

(イ)ある種類の株式の株主に対して金銭等の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類(1号)

(ロ)上記(イ)の事項のほか、金銭等の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容(2号)

 

b) 合同会社に発行済株式を取得させる株式交換契約

 株式会社が株式交換を行う場合、株式交換完全親会社との間で、株式交換契約を締結しなければならない。(会社法767条)

 株式交換完全親会社が合同会社であるときは、株式交換契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。(会社法770条1項)

1. 株式交換完全子会社及び株式交換完全親合同会社の商号及び住所(1号)

2. 株式交換完全子会社の株主が株式交換に際して株式交換完全親合同会社の社員となるときは、当該社員の氏名又は名称及び住所並びに出資の価額(2号)

3. 株式交換完全親合同会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わる金銭等(株式交換完全親合同会社の持分を除く。)を交付する場合において、当該金銭等が当該株式交換完全親合同会社の社債であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法(3号イ)

4. 株式交換完全親合同会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わる金銭等(株式交換完全親合同会社の持分を除く。)を交付する場合において、当該金銭等が当該株式交換完全親合同会社の社債以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数もしくは額又はこれらの算定方法(3号ロ)

5. 3.及び4.の場合には、株式交換完全子会社の株主(株式交換完全親合同会社を除く。)に対する3.及び4.の金銭等の割当てに関する事項(4号)

6. 株式交換がその効力を生ずる日(5号)

 なお、株式交換完全子会社が種類株式発行会社であるときは、株式交換完全子会社及び株式交換完全親合同会社は、株式交換完全子会社の発行する種類の株式の内容に応じ、上記5.の事項として次に掲げる事項を定めることができる。(770条2項)

(イ)ある種類の株式の株主に対して金銭等の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類(1号)

(ロ)(イ)の事項のほか、金銭等の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容(2号)

 上記5.の定めは、株式交換完全子会社の株主(株式交換完全親合同会社及び(イ)の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数((ロ)の事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて金銭等を交付することを内容とするものでなければならない。(会社法770条3項)

 

(3) 株式交換契約の備置き及び閲覧等(事前通知)

① 株式交換完全子会社

 株式交換完全子会社は、吸収合併契約等備置開始日から株式交換の効力発生日後6か月を経過する日までの間、株式交換契約の内容その他法務省令(会施規184条)で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。(会社法782条1項)

 なお、吸収合併契約等備置開始日とは、次に掲げる日のいずれか早い日のことである。(会社法782条2項)

1. 吸収合併契約等について株主総会(種類株主総会を含む。)の決議によってその承認を受けなければならないときは、当該株主総会の日の2週間前の日(会社法319条1項の場合にあっては、同項の提案があった日)

2. 株式買取請求権を有する株主があるときは、会社法785条3項の規定による通知の日又は同条4項の公告の日のいずれか早い日

3. 新株予約権買取請求権を有する新株予約権があるときは、会社法787条3項の規定による通知の日又は同条4項の公告の日のいずれか早い日

4. 債権者保護手続をしなければならないときは、会社法789条2項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日

5. 1.から4.以外の場合には、株式交換契約の締結の日から2週間を経過した日

 株式交換完全子会社の株主及び新株予約権者は、株式交換完全子会社に対して、その営業時間内は、いつでも、上記書面又は電磁的記録の閲覧等を請求することができる。(会社法782条3項)

株式交換完全親会社

 株式交換完全親株式会社は、吸収合併契約等備置開始日から効力発生日後6か月を経過する日までの間、株式交換契約の内容その他法務省令(会施規193条)で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。(会社法794条1項)

 株式交換完全親株式会社の株主及び債権者(株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令(会施規194条)で定めるもののみである場合(株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときを除く。)にあっては,株主)は、株式交換完全親株式会社に対して、その営業時間内はいつでも上記の書面又は電磁的記録の閲覧等を請求をすることができる。(会社法794条3項)

 ここでいう吸収合併契約等備置開始日とは、次に掲げる日のいずれか早い日をいう。(会社法794条2項)

1. 吸収合併契約等について株主総会(種類株主総会を含む。)の決議によってその承認を受けなければならないときは、当該株主総会の日の2週間前の日(会社法319条1項の場合にあっては、同項の提案があった日)

2. 株式買取請求の機会を与えるための、株主に対する通知の日又は公告の日のいずれか早い日

3. 債権者保護手続をしなければならないときは、その公告の日又は催告の日のいずれか早い日

 

(4) 株式交換契約の承認等

① 株式交換完全子会社

単一株式発行会社

(イ)原則(株主総会の特別決議)

 株式交換完全子会社は、株式交換の効力発生日の前日までに、原則として、株主総会の特別決議によって、株式交換契約の承認を受けなければならない。(会社法783条1項、会社法309条2項12号)

(ロ)例外

a) 株主総会特殊決議

 株式交換する会社(株式交換完全子会社)が公開会社であり(種類株式発行会社を除く。)、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合は、株主総会特殊決議が必要である。(会社法309条3項2号)ここでいう「譲渡制限株式等」とは、譲渡制限株式のほか、株式交換完全親株式会社の取得条項株式であって、取得対価である他の株式が譲渡制限株式であるもの、又は株式交換完全親株式会社の取得条項付新株予約権であって、取得対価である当該会社の株式が譲渡制限株式であるもののことをいう。つまり、株式交換前は譲渡制限の付かない株の株主であったのに、交換対価として交付されるのが、譲渡制限の付いた又は将来付く可能性のある株式である場合である。

b) 総株主の同意

 株式交換完全子会社が種類株式発行会社でない場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等(交換対価等)の全部又は一部が持分等(持分会社の持分その他法務省令(会施規185条 持分会社の持分及び譲渡制限株式を除く権利の移転又は行使に債務者その他の第三者の承諾を要するもの。)で定めるものをいう。)であるときは、株式交換完全子会社の総株主の同意を得なければならない。(会社法783条2項)株主の地位から持分会社の持分権者(社員)となること等は、株主にとって重大な問題だからである。

種類株式発行会社

(イ)全体株主総会特別決議+譲渡制限株式等の割当てを受ける譲渡制限株式でない種類株主の種類株主総会特殊決議

 株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(譲渡制限株式その他これに準ずるものとして法務省令(会施規185条)で定めるものをいう。)であるときは、株式交換は、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が2以上ある場合にあっては、当該2以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議(特殊決議 会社法324条3項2号)がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この限りでない。(会社法783条3項)

(ロ)全体株主総会特別決議+ある種類株主全員の同意

 株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が持分等である場合は、当該持分等の割当てを受ける種類の株主の全員の同意がなければ、その効力を生じない。(会社法783条4項)

(ハ)株式交換契約の承認を要しない場合(略式手続による株式交換)

a) 要件

 株式交換完全親会社株式交換完全子会社の特別支配会社である場合には、株式交換完全子会社は株式交換契約等について、株主総会の承認を受ける必要はない。(会社法784条1項)つまり、株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の議決権の90%以上握っている場合である。この場合、全体株主総会決議が不要になるのであって、種類株主総会の決議まで不要になるわけではない点に注意!

b) 例外(略式手続によることができない場合)

 株式交換に株式交換完全子会社の株主に交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合であって、株式交換完全子会社が公開会社であり、かつ、種類株式発行会社でないときは、この限りでない(会社法784条1項ただし書)ため、原則どおり株式交換完全子会社における株主総会決議を要する。この場合、株式交換完全子会社の株主の株式に譲渡制限が付着する結果となり、影響が大きいから原則どおり株主総会の決議を要求するのである。

(ニ)登録株式質権者等への通知

 株式交換完全子会社は、株式交換の効力発生日の20日前までに、一定の登録株式質権者及び新株予約権の登録新株予約権質権者に対し、株式交換をする旨を通知又は公告しなければならない。(会社法783条5項6項)

株式交換完全親会社

株式会社の場合

(イ)単一株式発行会社

 株式交換完全親会社は、株式交換の効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって、株式交換契約の承認を受けなければならない(会社法795条1項)

(ロ)種類株式発行会社

 株式交換完全親会社が種類株式発行会社であって、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親会社の株式(譲渡制限株式であって、当該種類の株式に関する募集事項の決定につき、種類株主総会決議を要しない定款の定めがないものに限る。)である場合は、通常の特別決議のほか、当該種類株主を構成員とする種類株主総会の特別決議がなければ、株式交換の効力が生じない。(会社法795条4項3号)

株式交換完全親会社が合同会社の場合

 合同会社が株式交換により株式会社の発行済株式の全部の取得をし、株式交換完全子会社の株主が株式交換に際して株式交換完全親合同会社の社員となるときは、定款に別段の定めがある場合を除き、株式交換の効力発生日の前日までに、株式交換契約について総社員の同意を得なければならない。 (会社法802条1項3号)つまり、対価として交付するのが株式交換完全親合同会社の持分の場合に、総社員の同意が必要になるということである。なお、対価が持分でない場合には、社員の過半数で足りる。

株式交換ー2

略式手続による株式交換

(イ)要件

 株式交換完全子会社が株式交換完全親会社の特別支配会社である場合には、株式交換完全親会社における株主総会決議は不要である。(会社法796条1項)

(ロ)例外(略式手続によることができない場合)

 略式手続の要件に該当する場合であっても、株式交換完全子会社の株主、社員に対して交付する金銭等の全部又は一部が株式交換完全親会社の譲渡制限株式である場合であって、存続株式会社が公開会社でないときは、株式交換完全親会社における株主総会決議を省略することはできない。(会社法796条1項ただし書)

簡易手続による株式交換

(イ)要件

 株式会社が株式交換を行う場合、次の一定の要件を満たすときは、株式交換完全親会社の株主に与える影響が軽微であるため、株式交換完全親会社において、株主総会における承認決議を省略することができる。(会社法796条2項)

1. 株式交換完全子会社の株主に対して交付する株式交換完全親株式会社の株式の数に1株当たりの純資産額を乗じて得た額

2. 株式交換完全子会社の株主に対して交付する株式交換完全親株式会社の社債、新株予約権又は新株予約権付社債の帳簿価額の合計額

3. 株式交換完全子会社の株主に対して交付する株式交換完全親株式会社の株式等以外の財産の帳簿価額の合計額

 上記1.3.の合計額の株式交換完全親株式会社の純資産額として法務省令(会施規196条)で定める方法により算定される額に対する割合が、5分の1(これを下回る割合を株式交換完全親株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)超えない場合である。(会社法796条2項)

(ロ)例外

 ただし、以下に掲げる場合は、簡易手続の要件を満たしても株式交換完全親株式会社における株主総会の決議を省略することはできない。(会社法796条2項ただし書)

1. 株式交換完全親株式会社が株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等(株式交換完全親株式会社の株式等を除く。)の帳簿価額が株式交換完全親株式会社が承継する株式交換完全子会社の株式の額(会施規195条)を超える場合(会社法795条2項3号)

2. 株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が株式交換完全親株式会社の譲渡制限株式である場合であって、株式交換完全親株式会社が公開会社でないとき(会社法796条1項ただし書)

 

(5) 株式の買取請求等

① 株式交換完全子会社

 基本的には、吸収合併消滅株式会社及び吸収分割株式会社における手続きと同じである。

 原則として効力発生日の20日前までに、株主に対し、株式交換をする旨並びに株式交換完全親会社の商号及び住所を通知又は公告し、買取請求してきた株主の株式を買い取らなければならない。

株式交換完全親会社

 吸収合併存続株式会社、吸収分割承継株式会社と同様の手続きが必要となる。

 

(6) 新株予約権の買取請求等

① 株式交換完全子会社

 株式交換完全親会社が株式会社である株式交換を行う場合において、次に掲げる新株予約権のうち、株式交換契約に定められた内容が新株予約権の内容に合致する新株予約権以外の新株予約権を有する新株予約権者は、株式交換完全子会社に対し、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる。(会社法787条1項3号)

1. 株式交換契約新株予約権

2. 株式交換契約新株予約権以外の新株予約権であって、株式交換をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に株式交換完全親株式会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもの

 新株予約権付社債を有する者が新株予約権の買取請求をする場合は、その新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがあるときを除き、当該新株予約権と併せて、新株予約権付社債についての社債を買い取ることを請求しなければならない。(会社法787条2項)

株式交換完全親会社

 株式交換完全親会社においては、新株予約権の買取請求をできる旨の規定は存在しない。

 

(7) 債権者保護手続き

① 株式交換完全子会社

(イ)株式交換に異議を述べることができる債権者(新株予約権付社債権者)

 株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合、当該新株予約権付社債についての社債権者は、株式交換完全子会社に対し、株式交換について異議を述べることができる。(会社法789条1項3号)株式交換に際して債務の承継がないため、債権者保護手続は原則として不要であるが、株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合、当該社債に係る債務は株式交換完全親株式会社に承継されるため、当該新株予約権付社債の社債権者に対しては債権者保護手続をする必要がある。

(ロ)公告及び催告

 株式交換について異議を述べることができる債権者がいる場合には、株式交換完全子会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(異議を述べることができるものに限り、社債管理者がある場合にあっては当該社債管理者を含む。)には、各別にこれを催告しなければならない。(会社法789条2項、740条3項)

1. 株式交換をする旨

2. 株式交換完全親会社の商号及び住所

3. 株式交換完全子会社及び株式交換完全親株式会社の計算書類に関する事項として法務省令(会施規188条)で定めるもの

4. 債権者が一定の期間内(1か月を下ることができない。)に異議を述べることができる旨

 なお、株式交換完全子会社が官報のほか定款に定めた時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙により、又は電子公告の方法により公告をするときは、知れている債権者への各別の催告をすることは要しない。(会社法789条3項)

(ハ)異議を述べた債権者に対する対応

 債権者が期間内に異議を述べない場合は株式交換を承認したものとみなされるが、異議を述べた場合は、株式交換完全子会社は、弁済をするか、相当の担保を提供するか、弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。しかし、株式交換をしてもその債権者を害するおそれがないときは、この限りでないため、会社は弁済等の手続きをとる必要はない。(会社法789条4項5項)

株式交換完全親会社

(イ)異議を述べることができる債権者

 株式交換をする場合において、以下に掲げる場合は、株式交換完全親株式会社の債権者は、株式交換完全親株式会社に対し、株式交換について異議を述べることができる。(会社法799条1項3号)

1. 株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令(会施規198条)で定めるもののみである場合以外の場合

2. 株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であって、株式交換完全親株式会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する場合(会社法768条1項4号ハ)

(ロ)公告及び催告

 株式交換完全親株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、株式交換完全親株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。(会社法799条2項)

1. 株式交換をする旨

2. 株式交換完全子会社の商号及び住所

3. 株式交換完全親株式会社及び株式交換完全子会社の計算書類に関する事項として法務省令(会施規199条)で定めるもの

4. 債権者が一定の期間内(1か月を下ることができない。)に異議を述べることができる旨

 なお、上記の事項を官報のほか、定款に定めた日刊新聞紙に掲載するか、又は電子公告により公告をした場合は、知れている債権者への各別の催告は省略することができる。(会社法799条3項)

(ハ)異議を述べた債権者に対する対応

 債権者が期間内に異議を述べない場合には、株式交換を承認したものとみなされる(会社法799条4項)が、異議を述べた場合は、株式交換完全親株式会社は、弁済をするか、相当の担保を提供するか、弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。

 しかし、株式交換してもその債権者を害するおそれがないときは、この限りでないため、会社は弁済等の手続きをとる必要はない。(会社法799条5項)

 

(8) 株主による差止請求

① 株式交換完全子会社

 株式交換が行われる場合であって、次の1.又は2.に該当し、株式交換完全子会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株式交換完全子会社の株主は、株式交換完全子会社に対し、株式交換をやめることを請求することができる。(会社法784条の2)

1. 当該株式交換が法令又は定款に違反する場合

2. 略式手続により株式交換が行われる場合において、株式交換契約に定められた対価が株式交換完全子会社又は株式交換完全親会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合

株式交換完全親会社

 株式交換が行われる場合であって、次の1.又は2.に該当し、株式交換完全親会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株式交換完全親会社の株主は、株式交換完全親会社に対し、株式交換をやめることを請求することができる。(会社法796条の2)

1. 当該株式交換が法令又は定款に違反する場合

2. 略式手続により株式交換が行われる場合において、株式交換契約に定められた対価が株式交換完全親会社又は株式交換完全子会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合

 ただし、株式交換完全親会社が簡易手続により株式交換を行う場合(会社法795条2項各号に掲げる場合及び796条1ただし書又は3項に規定する場合を除く。)、株式交換完全親会社の株主は、株式交換の差止請求をすることができない。(会社法796条の2ただし書)

 

(9) 株式交換に関する書面等の備置き及び閲覧等(事後開示)

① 株式交換完全子会社

 株式交換完全子会社は、株式交換の効力発生日後遅滞なく、株式交換完全親会社と共同して、株式交換により株式交換完全親会社が取得した株式交換完全子会社の株式の数その他の株式交換に関する事項として法務省令(会施規190条)で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成しなければならない。(会社法791条1項2号)

 株式交換完全子会社は、株式交換の効力発生日から6か月間、上記の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。(同条791条2項)

 株式交換の効力発生日に株式交換完全子会社の株主又は新株予約権者であった者は、株式交換完全子会社に対して、その営業時間内はいつでも、上記の書面又は電磁的記録の閲覧等を請求することができる。(同条3項4項)ここには、会社債権者を含まれていない。株式交換完全子会社は新株予約権付社債権者以外には債権者保護手続を要する債権者は存在しないためである。

株式交換完全親会社

 株式交換完全親株式会社は、株式交換完全子会社と共同して作成した会社法791条1項2号の書面又は電磁的記録を、株式交換の効力発生日から6か月間、その本店に備え置かなければならない。(会社法801条3項3号)

 株式交換完全親株式会社の株主及び債権者(株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令(会施規202条)で定めるもののみである場合(株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債である場合を除く。)にあっては、株式交換完全親株式会社の株主)は、株式交換完全親株式会社に対して、その営業時間内はいつでも、上記の書面又は電磁的記録の閲覧等を請求することができる。(会社法801条6項 4項)

 完全子会社となる会社の株主に、完全親会社となる会社の株式を交付する場合(「その他これに準ずるものとして法務省令で定める場合」として対価に金銭が含まれる場合であってもその金銭の合計が対価の合計額の20分の1を超えない場合(少額な金銭等)を含む)には、債権者を害するおそれがなく(単に株式を交付するだけだから会社財産は減少しないため)、債権者保護手続も必要ないため、完全親会社となる会社の債権者には閲覧等の請求は認められない。ただし、完全子会社となる会社の新株予約権付社債を完全親会社となる会社が承継する場合を除く。

 

(10) 登記申請手続

① 登記の要否

(イ)株式交換完全子会社

 株式交換完全子会社については、当該株式交換完全子会社の株式がすべて株式交換完全親会社に移転するだけであるため、登記事項に変更がなく、原則として変更登記の必要はない。

 しかし、株式交換に際して株式交換完全子会社の新株予約権に代えて株式交換完全親会社がその新株予約権を交付する場合には、株式交換完全子会社についても新株予約権(株式交換契約新株予約権)の変更登記をする必要がある。

cf 合併による解散登記、分割会社の分割による変更登記は常に必要である。

(ロ)株式交換完全親会社

 株式交換完全親会社については、資本金の額を増加すればその旨、新たに株式を発行すれば発行済株式の総数などの変更登記が必要となる。つまり株式交換完全親会社が株式交換の対価として新株を発行せず資本金の額も増加しない場合には、登記事項に変更はなく何らの登記も要しないことになる。

cf 吸収合併・吸収分割による変更登記、新設合併・新設分割による設立登記は常に必要である。

② 申請人

 完全子会社の変更登記の申請は、完全子会社の代表者が申請する。また、完全親会社の変更登記の申請は、完全親会社の代表者が申請する。

③ 申請形態(経由同時申請)

(イ)経由申請

 完全親会社及び完全子会社のどちらにおいても変更登記が必要な場合において、本店所在地における完全子会社の変更登記の申請は、当該登記所の管轄区域内に株式交換完全親会社の本店がないときは、その本店を管轄する登記所を経由してしなければならない。(商登法91条1項)

(ロ)同時申請

 完全親会社及び完全子会社のどちらにおいても変更登記が必要な場合においては、完全親会社における変更登記と完全子会社における変更登記は同時にしなければならない。(商登法91条2項)

④ 登記の事由

(イ)株式交換完全子会社

 「株式交換」と記載する。「株式交換による変更」という記載例もある。

(ロ)株式交換完全親会社

(ハ)「株式交換」と記載する。「株式交換による変更」という記載例もある。