- 商業登記法ー21.組織再編に関する登記
- 1.組織変更の登記
- 組織変更の登記
- Sec.1
1組織変更の登記
■組織変更の意義
株式会社は、株主全員の同意によって持分会社(合同会社、合名会社、合資会社)への組
織を変更することができる。(会社法743条、776条1項)
持分会社も、原則として社員全員の同意によって株式会社に組織を変更することができる。(会社法743条、781条1項)
■株式会社の組織変更(株式会社→持分会社)ー1
(1) 手続きの流れ
(2) 組織変更の手続き
① 組織変更計画の作成
株式会社が持分会社となる組織変更をするためには、組織変更計画を作成しなければならない。(会社法743条、744条1項)組織変更計画に定めなければならない事項は、次のとおりである。(会社法744条1項)
1. 組織変更後持分会社が合名会社、合資会社又は合同会社のいずれであるかの別 2. 組織変更後持分会社の目的、商号及び本店の所在地 3. 組織変更後持分会社の社員についての次に掲げる事項 (イ)当該社員の氏名又は名称及び住所 (ロ)当該社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別 (ハ)当該社員の出資の価額 4. 上記2. 3.以外で、組織変更後持分会社の定款で定める事項 5. 組織変更後持分会社が組織変更に際して組織変更をする株式会社の株主に対してその株式に代わる金銭等(*1)を交付するときは、その金銭等についての次に掲げる事項 (イ)当該金銭等が組織変更後持分会社の社債であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法 (ロ)当該金銭等が組織変更後持分会社の社債以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数もしくは額又はこれらの算定方法 6.上記5.の場合には、組織変更をする株式会社の株主(組織変更をする株式会社を除く。)に対する5.の金銭等の割当てに関する事項 7. 組織変更をする株式会社が新株予約権を発行しているときは、組織変更後持分会社が組織変更に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる金銭の額又はその算定方法 8.上記7.の場合には、組織変更をする株式会社の新株予約権の新株予約権者に対する7.の金銭の割当てに関する事項 9. 組織変更がその効力を生ずる日 |
(*1)ここでいう、金銭等とは、金銭その他財産のことであり、持分会社の持分は含まれない。
② 組織変更計画に関する書面等の備置き及び閲覧等
組織変更をする株式会社は、組織変更計画備置開始日から組織変更の効力発生日までの間、組織変更計画の内容その他法務省令(会施規180条)で定める事項を記載し又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。(会社法775条1項)
そして、組織変更をする株式会社の株主及び債権者は、その営業時間内はいつでも、その閲覧又は謄抄本の交付請求等をすることができる。(同条3項)
組織変更計画備置開始日とは、次に掲げる日のいずれか早い日のことをいう。(会社法775条2項)
1. 組織変更計画について、組織変更をする株式会社の総株主の同意を得た日 2. 組織変更をする株式会社が新株予約権を発行しているときにおける会社法777条3項の規定による新株予約権者への通知の日又は同条4項の公告の日のいずれか早い日 3. 会社法779条2項の規定による債権者保護手続の公告の日又は催告の日のいずれか早い日 |
③ 総株主の同意
組織変更をする株式会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について総株主の同意を得なければならない。(会社法776条1項)そして、効力発生日の20日前までに、その登録株式質権者及び登録新株予約権質権者に対し、組織変更をする旨を通知又は公告しなければならない。(会社法776条2項3項)
④ 新株予約権者の新株予約権買取請求
組織変更をしようとする株式会社は、効力発生日の20日前までに、その新株予約権の新株予約権者に対し、組織変更をする旨を通知又は公告しなければならない。(会社法777条3項4項)
新株予約権者は会社に対して、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる。(会社法777条1項5項)
新株予約権証券が発行されている新株予約権について新株予約権買取請求をしようとするときは、当該新株予約権の新株予約権者は、組織変更をする株式会社に対し、その新株予約権証券を提出しなければならない。(同条6項)
なお、新株予約権買取請求をした新株予約権者は、組織変更をする株式会社の承諾を得た場合に限り、その新株予約権買取請求を撤回することができる。(同条8項)ただし、新株予約権の価格の決定について、効力発生日から30日以内に協調が調わず、効力発生日から60日以内に裁判所に対する新株予約権者又は組織変更後持分会社から裁判所に対する価格の決定の申立てがないときは、その期間の満了後は、新株予約権者は、いつでも新株予約権買取請求を撤回することができる。(会社法778条3項)また、組織変更を中止したときは、新株予約権買取請求の効力は失われる。(会社法777条9項)
⑤ 債権者保護手続き
組織変更をする株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ知れている債権者には各別に催告をしなければならない。債権者が異議を述べることができる期間は、1か月を下ることができない。(会社法779条2項)
1. 組織変更をする旨 2. 組織変更をする株式会社の計算書類に関する事項として法務省令(会施規181条)で定めるもの 3. 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨 |
ただし、組織変更をする株式会社が、公告方法を時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告と定款に定めている場合において、上記の事項を官報のほか定款に定める方法により公告をするときは、知れている債権者に各別の催告をすることを要しない。(同条3項)
一定期間内に異議を述べない債権者は、当該組織変更を承認したものとみなされる。(同条4項)
一方、期間内に異議を述べた債権者に対しては、組織変更をしても債権者を害するおそれがない場合を除き、その債権者に対し、弁済し、もしくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。(同条5項)
⑥ 株券の提出に関する公告・通知
組織変更をする株式会社が株券発行会社である場合、全部の株式について株券を発行していない場合を除き、組織変更の効力発生日(以下、株券提出日という。)までに会社に対し株券を提出しなければならない旨を、株券提出日の1か月前までに公告し、かつその株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。(会社法219条1項5号)
株券発行会社に対して株券提出日までに株券を提出しない者があるときは、組織変更後持分会社は、当該株券の提出があるまでの間、組織変更によって当該株券に係る株式の株主が受けることのできる金銭等の交付を拒むことができる。(同条2項3号)なお、株券発行会社が発行していた株券は、株券提出日に無効となる。(同条3項)
⑦ 新株予約権証券の提出に関する公告・通知
新株予約権証券又は新株予約権付社債券を発行している株式会社は、組織変更の効力発生日(以下、新株予約権証券提出日という。)までに当該新株予約権証券又は新株予約権付社債券を提出しなければならない旨を新株予約権証券提出日)の1か月前までに公告し、かつその新株予約権の新株予約権者及びその登録新株予約権質権者には、各別にこれを通知しなければならない。(会社法293条1項2号)新株予約権証券提出日までに新株予約権証券を提出しない者があるときは、組織変更後持分会社は、当該新株予約権証券の提出があるまでの間、組織変更によって当該新株予約権証券に係る新株予約権の新株予約権者が交付を受けることができる金銭等の交付を拒むことができる。(同条2項3号)
⑧ 組織変更の効果
組織変更をする株式会社は、効力発生日に持分会社となり、組織変更計画の定めに従い、定款の変更をしたものとみなされる。(会社法745条1項2項)
組織変更をする株式会社の株主は、効力発生日に、組織変更計画の定めに従い、組織変更後持分会社の社員となる。(会社法745条3項)組織変更をする株式会社の株主に対して、組織変更後持分会社社債を交付する旨を組織変更計画に定めた場合は、割り当てを受けた株主は効力発生日に社債権者となる。(同条4項)
なお、組織変更をする株式会社の新株予約権は、効力発生日に消滅する。(同条5項)
また、組織変更をする株式会社は、効力発生日を変更することができる。(会社法780条1項)
この場合、組織変更をする株式会社は、変更前の効力発生日(変更後の効力発生日が変更前の効力発生日前の日である場合にあっては、その変更後の効力発生日)の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない。(同条2項)
⑨ 組織変更の登記
組織変更をした会社は、組織変更の効力発生日から2週間以内に、その本店の所在地において、組織変更前の会社については解散の登記をし、組織変更後の会社については設立の登記をしなければならない。(会社法920条)
(3) 登記申請手続
① 登記期間
会社が組織を変更したときは、その効力が生じた日から2週問以内に、その本店の所在地において、組織変更前の会社については「解散の登記」をし、組織変更後の会社については「設立の登記」をしなければならない。(会社法920条)支店所在地でも3週間以内にする必要がある。(会社法932条)
② 同時申請
株式会社が組織を変更した場合の株式会社についての登記の申請と組織変更後の持分会社についての登記の申請とは、同時にしなければならない。(商登法78条1項)登記官は、登記の申請のいずれかにつき商登法24条各号のいずれかに掲げる却下事由があるときは、これらの申請を共に却下しなければならない。(同条3項)
③ 登記の事由
(イ)持分会社の設立登記
「組織変更による設立」と記載する。
(ロ)株式会社の解散登記
「組織変更による解散」と記載する。
④ 登記すべき事項
(イ)持分会社の設立登記(商登法76条)
a) 一般の設立登記の登記事項
b) 会社成立の年月日
c) 株式会社の商号並びに組織を変更した旨及びその年月日をも登記しなければならない。
(ロ)株式会社の解散登記
解散の旨、その事由及びその年月日
⑤ 添付書面
(イ)持分会社の設立登記
1. 組織変更計画書
2. 定款
組織変更後の持分会社の定款の添付を要する。この定款については、公証人の認証は不要である。
3. 総株主の同意があったことを証する書面(商登法46条1項)
4. 債権者保護手続に関する書面
a) 公告及び催告をしたことを証する書面
b) 異議を述べた債権者がいる場合には、「異議を述べた債権者に弁済したことを証する書面」「異議を述べた債権者に相当の担保を提供したことを証する書面」「異議を述べた債権者に弁 済を受けさせることを目的として相当の財産を信託したことを証する書面」「異議を述べた債権者を害するおそれがないことを証する書面」を添付する。異議を述べた債権者がいない場合には、「異議を述べた債権者はいない。」と記載すれば足りる。
5. 株券提供公告をしたことを証する書面
株券発行会社であっても、現実に株券を発行していない会社においては、「株式の全部について株券を発行していないことを証する書面」
6. 組織変更をする株式会社が新株予約権を発行しているときは、「新株予約権証券の提供公告をしたことを証する書面」又は「新株予約権証券を発行していないことを証する書面」である。
7. 代表社員の選定を証する書面
代表社員を選定する場合には、次の書面が選定に関する書面となる。原則どおり各自代表とする場合には不要である。
a) 定款又は組織変更計画において定められる組織変更後の持分会社の定款の内容として最初の代表社員の氏名が記載してある場合は、当該定款
b) 定款の定めに基づく社員による互選により組織変更の効力発生日以降に代表社員を定めた場合は、定款及び社員の互選書
8. 代表社員の就任承諾書
定款の定めに基づく社員の互選により選定された者の場合、添付を要する。
9. 法人である社員の加入にあっては、法人社員関係書面
a) 当該法人の登記事項証明書
ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合及び申請書に当該法人の会社法人番号を記載した場合は、添付を省略することができる。
b) 当該社員の職務を行うべき者の選任に関する書面
c) 当該社員の職務を行うべき者が就任を承諾したことを証する書面
この場合は、法人である代表社員の職務を行うべき者の氏名及び住所が登記事項となるため、当該法人が当該職務を行うべき者を適法に選任し、その者が就任したことを確認するため、上記a) b) c) の書面が必要となる。
10. 有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面
株式会社が組織を変更して合資会社となる場合に添付する。合資会社の社員が既に履行した出資の価額が登記事項とされているためである。
11. 合同会社の設立の場合には、「登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書」
組織変更による解散登記の登録免許税額算定の基準となる。
12. 代理人によって申請する場合、「委任状」
* 組織変更後の合同会社の資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面については、登記簿から組織変更の直前の株式会社の資本金の額を確認することができるため、添付を要しない。
(ロ)株式会社の解散登記
株式会社が持分会社に組織変更をしたことによる株式会社の本店所在地における解散登記については、委任状を含めて添付書面が一切必要ない。(商登法78条2項)
⑥ 登録免許税
(イ)組織変更後の持分会社
a) 合名会社又は合資会社の場合
金6万円(別表一、二十四(一)ロ)
b) 合同会社
資本金の額の1000分の1.5
ただし、組織変更の直前における資本金の額として財務省令で定めるものを超える資本金の額に対応する部分については、1000分の7。なお、これによって計算した税額が金3万円に満たないときは、金3万円である(別表一、二十四(一)ホ)この財務省令で定めるものを証するために、前述の「登録免許税法施行規則第12条第6項の規定に関する証明書」を添付する。
c) 支店の所在地における設立の登記
申請1件につき金9000円である。(別表一、二十四(ニ)イ)
(ロ)株式会社の解散登記
a) 本店の所在地における解散登記
申請1件につき、金3万円である。(別表一、二十四(一)レ)
b) 支店の所在地における解散登記
金9000円である。(別表一、二十四(ニ)イ)
■株式会社の組織変更(株式会社→持分会社)ー2
組織変更による設立の登記 申請書 記載例(本店所在地)
(株式会社⇒合名会社)法人社員が加入する場合
商号 ABC合名会社(*1)
本店 何県何市何町何丁目何番何号
登記の事由
組織変更による設立
登記すべき事項
商号 ABC合名会社
本店 何県何市何町何丁目何番何号
公告する方法 官報に掲載してする。
会社成立年月日 平成何年何月何日
目的 1.○○○
2.△△△
3.×××
社員 (住所)A
(住所)B
(住所)C株式会社
代表社員 A
登記記録に関する事項
平成何年何月何日ABC株式会社を組織変更し設立
登録免許税
金6万円
添付書類
定款 1通
組織変更計画書 1通
総株主の同意があったことを証する書面 1通
公告及び催告をしたことを証する書面 2通
異議を述べた債権者はいない
株券提供公告したことを証する書面 1通
代表社員の選定に関する書面 1通
代表社員の就任承諾書 1通
登記事項証明書 1通
当該社員の職務を行うべき者の選任に関する書面 1通
職務を行うべき者が就任を承諾したことを証する書面 1通
委任状 1通
(*1)組織変更後の合名会社の商号を記載する。
完了後の登記記録
商号 |
ABC合名会社 |
本店 |
何県何市何町何丁目何番何号 |
公告する方法 |
官報に掲載してする。 |
会社成立年月日 |
平成何年何月何日 |
目的 |
1.○○○ 2.△△△ 3.××× |
社員に関する事項 |
何県何市何町何丁目何番何号 社員 A |
何県何市何町何丁目何番何号 社員 B |
|
何県何市何町何丁目何番何号 社員 C株式会社 |
|
代表社員 A |
|
登記記録に関する事項 |
平成何年何月何日ABC株式会社を組織変更し設立 |
組織変更による解散 申請書 記載例 (本店所在地)
商号 ABC株式会社(*1)
本店 何県何市何町何丁目何番何号
登記の事由
組織変更による解散
登記すべき事項
平成何年何月何日何県何市何町何丁目何番何号ABC合名会社に組織変更し解散
登録免許税
金3万円(レ)
添付書類
なし
(*1)組織変更によって解散する株式会社の商号を記載する。
完了後の登記記録
登記記録に関する事項 |
平成何年何月何日何県何市何町何丁目何番何号ABC合名会社に組織変更し解散 平成年月日登記 平成年月日閉鎖 |