- 商業登記法ー18.清算人に関する登記
- 5.清算人に関する登記
- 清算人に関する登記
- Sec.1
1清算人に関する登記
■最初の清算人に関する登記ー1
(1) 登記期間
① 法定清算人の場合
法定清算人が清算株式会社の清算人となったときは、解散の日から2週間以内に、その本店所在地において、清算人の登記をしなければならない。(会社法928条1項)なお、取締役の変更があったにもかかわらず、その登記がなされていない場合、法定清算人の就任登記の前提として取締役の変更登記をする必要がある。例えば、解散時の取締役A・B・Cが法定清算人として就任する場合(定款や株主総会で別途清算人が選任されていない場合)、従前の取締役Dの退任登記が未了であれば、まずDの退任登記をした上で法定清算人の就任登記を申請することになる。そうでなければ退任したDも当然に法定清算人として登記されてしまうためである。
② 法定清算人以外の場合
清算人が選任されたときは、選任された日から2週間以内に、その本店の所在地において、清算人の登記しなければならない。(同条2項)
(2) 登記の事由
法定清算人の場合には、「年月日清算人の就任」と記載する。
法定清算人以外の場合には、「年月日清算人の選任」と記載する。年月日は、上記の登記期間の帰算日を記載する。したがって、法定清算人の就任の場合には会社の解散の日を、それ以外の場合には選任の日を記載する。清算人にあわせて代表清算人も就任する場合には、「年月日清算人及び代表清算人の就任(選任)」と記載する。
(3) 登記すべき事項
次の事項である。(会社法928条1項)
① 清算人の氏名(1号)
② 代表清算人の氏名及び住所(2号)
③ 清算株式会社が清算人設置会社であるときは、その旨(3号)
④ その他必要な事項(4号)
(4) 添付書面
① 清算人会を設置しない会社の場合
(イ)定款
株式会社の最初の清算人の登記の際には、常に添付を要する。
(ロ)清算人の選定を証する書面
a) 定款によって定めたときは、定款
b) 株主総会の決議によって選任したときは、株主総会議事録及び株主リスト
c) 裁判所が選任したときは裁判所の選任決定書等
通常、裁判所によって選任された者の就任登記は、裁判所書記官の嘱託によるが、裁判所によって解散を命じられた場合で清算人も裁判所が選任したときは、清算人の登記は(代表)清算人の申請によらなければならない。
cf 裁判所が選任した一時清算人の職務を行う者(仮清算人)の就任登記は、原則どおり裁判所書記官の嘱託による。
(ハ)清算人の中から代表清算人を定めたときは、代表清算人の選定を証する書面
a) 定款によって定めたときは、定款
b) 定款の定めに基づく清算人の互選によって定めたときは、定款及びその互選を証する書面
c) 株主総会の決議によって選任したときは、株主総会議事録及び株主リスト
d) 裁判所が選任したときは裁判所の選任決定書等
(ニ)清算人及び代表清算人が就任の承諾をしたことを証する書面
a) 清算人の就任承諾書
定款又は株主総会の決議によって清算人を選任したときに、添付を要する。
cf 法定清算人及び裁判所が選任した清算人の場合は不要である。
b) 代表清算人の就任承諾書
定款の定めに基づく清算人の互選によって代表清算人を定めたときに、添付を要する。
cf 定款、株主総会の決議、裁判所が選定した代表清算人の場合は不要である。
(ホ)代理人によって申請する場合、「委任状」
② 清算人会を設置する会社の場合
(イ)定款
株式会社の最初の清算人の登記の際には、常に添付を要する。
(ロ)清算人の選定を証する書面
a) 定款によって定めたときは、定款
b) 株主総会の決議によって選任したときは、株主総会議事録及び株主リスト
c) 裁判所が選任したときは裁判所の選任決定書等
(ハ)代表清算人の選定を証する書面
a) 清算人会の決議によって選任したときは、清算人会議事録
b) 裁判所が選任したときは、裁判所の選任決定書等
(ニ)清算人及び代表清算人が就任の承諾をしたことを証する書面
a) 清算人の就任承諾書
定款又は株主総会の決議によって清算人を選任したときに、添付を要する。
cf 法定清算人及び裁判所が選任した清算人の場合は不要である。
b) 代表清算人の就任承諾書
清算人会の決議によって選任したときは、添付を要する。
cf 裁判所が選定した代表清算人の場合は不要である。
(ホ)代理人によって申請する場合、「委任状」
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定款 |
清算人の就任承諾書 |
法定清算人 |
○ |
× |
定款で定めた清算人 |
○ |
○ |
株主総会によって選任された清算人 |
○ |
○ |
裁判所によって選任された清算人 |
○ |
× |
法定清算人は、解散当時の取締役が清算人になり、登記記録上明らかであるため、選任を証する書面も、就任承諾書も不要である。裁判所選任の清算人の場合も裁判所があらかじめ就任承諾を得てから選任するため、就任承諾書の添付は必要がないことになる。
先例 |
(S43.2.16民甲303号) |
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代表清算人については、代表取締役についての商登規則61条6項の規定が準用されないため、代表清算人の就任による変更登記の申請書には、その選定に係る清算人会議事録の印鑑につき市区町村長の作成した証明書の添付は要しない。 |
⇒ また、商登規則61条4項5項の準用もないため、代表清算人の就任による変更登記の申請書には、代表清算人の就任を承諾したことを証する書面の印鑑につき市区町村長の作成した証明書の添付を要しない。
(5) 登録免許税
最初の清算人に関する登記は、申請1件につき金9000円である。(別表一、ニ四(四)イ)
先例 |
(H18.3.31民商782号) |
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清算人会設置会社である場合の清算人会設置会社の定めの設定の登録免許税は、最初の清算人の登記に含まれるものと解される。 |
(6) 印鑑の提出
本店の所在地において清算人の登記を申請する場合には、会社を代表すべき清算人の印鑑を提出しなければならない。(商登法20条)代表取締役であった者が代表清算人に就任する場合、同一の印鑑を使用する場合でも改めて印鑑届出が必要である。
最初の清算人の登記 申請書 記載例 (清算人会設置会社でない場合)(法定清算人の場合)
登記の事由(*1)
平成何年何月何日清算人及び代表清算人の就任
登記すべき事項
清算人 A
何県何市何町何丁目何番何号
代表清算人 A
登録免許税
金9000円(イ)
添付書類
定款 1通
委任状 1通
(*1)年月日は解散の日を記載する。
最初の清算人の登記 申請書 記載例 (清算人会設置会社でない場合)(株主総会で選任した場合)
登記の事由(*1)
平成何年何月何日清算人及び代表清算人の選任
登記すべき事項
清算人 A
何県何市何町何丁目何番何号
代表清算人 A
登録免許税
金9000円(レ)
添付書類
定款 1通
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
就任承諾書 1通
委任状 1通
(*1)年月日は解散の日を記載する。株主総会で選任された清算人の場合、解散の日と異なった日に就任したのであれば、それは清算人の変更であり解散の日から選定清算人就任まで法定清算人が就任しなければならないことになる。
■最初の清算人に関する登記ー2
最初の清算人の登記 申請書 記載例(株主総会で清算人を選任し、清算人会も設置した場合)
登記の事由
平成何年何月何日清算人及び代表清算人の選任
清算人会設置会社の定めの設定(*1)
登記すべき事項(*2)
清算人 A
清算人 B
清算人 C
何県何市何町何丁目何番何号
代表清算人 A
清算人会設置会社
登録免許税(*3)
金9000円
添付書類
定款 1通
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
清算人会議事録 1通
清算人の就任承諾を証する書面
株主総会議事録の記載を援用する
代表清算人の就任承諾を証する書面
清算人会議事録の記載を援用する
委任状 1通
(*1)清算株式会社が清算人会設置会社であるときは、清算人会設置会社である旨の登記も必要となるが、登記の事由の記載については「清算人会設置会社の定めの設定」と記載する見解と、当該登記は最初の清算人の登記の登記事項に含まれることから、別途記載する必要はないとするに分かれている。本テキストでは「清算人会設置会社の定めの設定」を記載している。
(*2)清算人設置会社においては、3名以上の清算人と1名以上の代表清算人を置く必要がある。
(*3)清算人会設置会社である旨の登記の登録免許税は最初の清算人の登記((イ)9000円)の登録免許税に含まれる。(H18.3.31民商782号)
解散登記と清算人の登記の一括申請の場合(株式の譲渡制限に関する規定も同時に変更する場合)
登記の事由
解散
平成何年何月何日清算人及び代表清算人の選任
株式の譲渡制限に関する規定の変更
登記すべき事項
平成何年何月何日株主総会の決議により解散
同日変更(*1)
株式の譲渡制限に関する規定
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。
清算人 A
何県何市何町何丁目何番何号
代表清算人 A
登録免許税(*2)
金6万9000円
添付書類
定款 1通
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
清算人の就任承諾を証する書面
株主総会議事録の記載を援用する
委任状 1通
(*1)解散時に「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。」と定めている会社は、解散に際して譲渡制限に関する規定の譲渡承認機関を取締役会以外の機関に変更しなければならない。
(*2)解散分として金3万円、清算人の登記分として9000円、その他変更分として3万円(譲渡制限に関する規定の変更分)の合計6万9000円となる。
完了後の登記記録
株式の譲渡制限に 関する規定 |
当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。 平成年月日変更 平成年月日登記 |
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役員に関する事項 |
取締役 A |
平成年月日重任 |
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平成年月日登記 |
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取締役 B
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平成年月日重任 |
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平成年月日登記 |
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取締役 C
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平成年月日重任 |
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平成年月日登記 |
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何県何市何町何丁目何番何号 代表取締役 |
平成年月日重任 |
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平成年月日登記 |
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清算人 A |
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平成年月日登記 |
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何県何市何町何丁目何番何号 代表清算人 A |
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平成年月日登記 |
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取締役会設置会社に 関する事項 |
取締役会設置会社 |
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解散 |
平成年月日株主総会の決議により解散
平成年月日登記 |
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■清算人等の変更登記
(1) 意義
最初の清算人等の登記をした後に、その登記事項に変更が生じた場合には、通常の役員変更と同様にその旨の変更登記をしなければならない。
(2) 登記申請手続
① 登記期間
変更が生じた日から2週間以内に本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
② 登記の事由
「清算人の変更」「代表清算人の変更」「清算人会設置会社の定めの設定」「清算人会設置会社の定めの廃止」等、それぞれの場合に応じて記載する。
③ 登記すべき事項
清算人の氏名、代表清算人の氏名・住所、清算人会設置会社設定又は廃止の旨及び就任・退任・設置・廃止の年月日などである。
④ 添付書面
(イ)清算人(代表清算人)の退任の場合には、「退任を証する書面」
a) 辞任の場合には、「辞任届」等
b) 解任の場合には、解任を証する「株主総会議事録及び株主リスト」「清算人会議事録」等。
c) 死亡の場合には、「死亡届」や「死亡診断書」「戸籍謄本等」
d) 欠格事由に該当した場合
欠格事由に該当したことを証する「後見開始の審判書謄本」や刑に処せられたことを証する「判決書正本、確定証明書」、破産したことを証する「破産手続開始決定書」等
e) 清算人会設置会社の定めの設定及び廃止による変更登記には、当該定めの設定又は廃止を決議した「株主総会議事録及び株主リスト」を添付する。
(ロ)清算人(代表清算人)の就任の場合、最初の清算人の登記の場合と同様の選任を証する「株主総会議事録」等。なお、最初の清算人の登記の際と異なり、「定款」の添付は不要である。
⑤ 登録免許税
清算会社についてする登記事項の変更、消滅もしくは廃止の登記(清算人もしくは代表清算人の職務執行停止(取消し、変更)及び職務代行者に関する変更等の登記を除く。)、登記の更正の登記又は登記の抹消登記は申請1件につき金6000円である。(別表一、ニ四(四)ニ)
清算人の変更登記 申請書 記載例
(解散後に、追加で清算人を置いた場合)(株主総会の決議による)
登記の事由(*1)
清算人の変更
登記すべき事項(*2)
平成何年何月何日清算人B就任
登録免許税
金6000円(ニ)
添付書類(*3)
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
就任承諾書 1通
委任状 1通
(*1)最初の清算人の登記と異なり、登記の事由には年月日を記載しない。
(*2)登記の事由の欄に年月日を記載しない代わりに、登記すべき事項の欄で変更年月日を記載する。
(*3)最初の清算人の登記の場合と異なり、「定款」の添付は不要である。
清算人の変更登記 申請書 記載例 (最初の清算人が死亡した場合)
登記の事由
清算人の変更
登記すべき事項
平成何年何月何日清算人A死亡
登録免許税
金6000円(ニ)
添付書類
死亡を証する書面 1通
委任状 1通