• 商業登記法ー15.資本金の額の減少に関する登記
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1資本金の額の減少に関する登記

堀川 寿和2022/01/31 09:58

資本金の額の減少の意義

 資本金の額の減少とは、文字どおり会社の資本金の額を減少することをいう。資本金は、会社の一般債権者に対する担保として会社に保留すべき財産の基準となる額であるから、自由に減少することはできず、債権者等の保護のための厳重な手続を経なければならない。

 

資本金の額の減少の目的

 会社が資本金の額を減少する場合の目的として、大きく分けて次の2つに区別することができる。

実質上の資本減少

 実質的に会社の財産が減少する場合である。会社が当初予定した資金が不要になった場合や事業を縮小したため過剰となった財産を株主に返却する場合である。

計算上の資本減少(名義上の資本減少)

 資本に欠損を生じた会社がその実体に資本金の額を合わせ、利益配当を可能にするために行われる場合である。

資本金の額の減少の手続

(1) 決議機関

① 原則

 株主総会の特別決議による。

② 例外

(イ)次に掲げる場合には、資本金の額の減少決議は、株主総会の普通決議で足りる。

a) 定時株主株生総会で会社法447条1項各号(資本金の額の減少についての決議事項)を定めること

b) 会社法447条1項1号の額が上記a)の定時株主総会の日(会社法439条前段に規定する場合(会計監査人設置会社において、計算書類について定時株主総会での承認を受けない場合)にあっては、会社法436条3項の承認があった日)における欠損の額として法務省令(会施規68条)で定める方法により算定される額を超えないこと。

 つまり、a) b)について噛み砕いて言うと、定時株主総会決議において欠損填補目的のみで行う資本金の額の減少決議は株主総会普通決議で足りる。

 

(ロ)次に掲げる場合には、資本金の額の減少決議は、取締役会決議(取締役会を置かない会社においては、取締役の決定)で行うことができる。

a) 株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合であること

b) 資本金の額の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないとき

 つまり、新株発行と同時にする資本金の額の減少であって、結果的に従前の資本金の額を下回らない場合である。

 

(2) 決議事項

 次に掲げる事項を定めなければならない。(会社法447条1項)

① 減少する資本金の額(1号)

② 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額(2号)

③ 資本金の額の減少がその効力を生ずる日(3号)

①の額は、③の日における資本金の額を超えてはならない。

 

(3) 債権者保護手続

① 意義

 株式会社が資本金の額を減少する場合には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができる。(会社法449条1項)

② 公告及び催告

 株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、当該株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。この期間は、1か月を下ることができない。(同条2項)

(イ)当該資本金の額の減少の内容(1号)

(ロ)当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令(会計規152条)で定めるもの(2号)

(ハ)債権者が(1か月を下らない)一定の期間内に異議を述べることができる旨(3号)

③ 各別の催告の省略

 株式会社が当該公告を、官報のほか、会社法939条1項の規定による定款の定めに従い、同項2号又は3号に掲げる公告方法(時事に関する日刊新聞紙又は電子公告)によりするときは、各別の催告は、することを要しない。(同条3項)

④ 債権者の異議

 債権者が期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該資本金の額の減少について承認したものとみなされる。(同条4項)

 債権者が期間内に異議を述べたときは、株式会社は、当該債権者に対し、弁済し、もしくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等(信託会社及び信託業務を営む金融機関)に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該資本金の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。(同条5項)

 

(4) 資本金の額の減少の効力発生日

 資本金の額の減少の効力は、会社法447条1項3号の日(資本金の額の減少の効力発生日)に効力が生ずる。ただし、債権者保護手続が終了していないときは、この限りでない。(会社法449条6項)なお、株式会社は、効力発生日前は、いつでも当該日を変更することができる。(同条7項)