- 商業登記法ー14.新株予約権の発行に関する登記
- 2.株主割当てによる募集新株予約権の発行
- 株主割当てによる募集新株予約権の発行
- Sec.1
■募集事項
(1) 募集事項
募集事項は次のとおりである。(会社法238条1項)募集事項は、その募集ごとに、均等に定めなければならない。(会社法238条5項)
① 募集新株予約権の内容及び数 ② 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨 ③ ②以外の場合には、募集新株予約権の払込金額又はその算定方法 ④ 募集新株予約権を割り当てる日(割当日) ⑤ 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日 ⑥ 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、会社法676条各号に掲げられた事項 ⑦ ⑥の場合に、新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての新株予約権買取請求等の方法につき別段の定めをするときは、その定め |
(2) 株主割当特有の募集事項
株式会社が、株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与える場合は、上記募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。(会社法241条1項)
① 株主に対し、申込みをすることにより当該株式会社の募集新株予約権(種類株式発行会社にあっては、その目的である株式の種類が当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨 ② 募集新株予約権の引受けの申込みの期日(申込期日) |
株式会社は、上記①②に掲げる事項を定めた場合には、②の申込期日の2週間前までに、①の株主(当該株式会社を除く。)に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
a) 募集事項
b) 株主が割当てを受ける募集新株予約権の内容及び数
c) 募集新株予約権の引受けの申込みの期日(申込期日)
株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集新株予約権の割当てを受ける権利を有するが、当該株主が割当てを受ける募集新株予約権の数に1に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。(同条2項)
(3) 募集事項の決定機関
株式会社は、その発行する新株予約権の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権について募集事項を定めなければならない。(会社法238条1項)募集事項を決定する機関は、以下の通りである。なお、種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、募集事項の決定は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の特別決議がなければ、その効力を生じない。(会社法238条4項、324条2項3号)
募集事項の決定機関(株主割当以外の場合)
公開会社 |
原則 |
取締役会(会社法238条2項、240条1項) |
|
有利発行の場合 |
原 則 |
株主総会特別決議 (会社法238条2項、240条1項、309条2項6号) (*3)(*4) |
|
例 外 |
株主総会特別決議により、取締役会に委任できる。 (会社法239条1項、309条2項6号) (*1)(*2)(*3)(*4) |
||
公開会社 以外 |
原則 |
株主総会特別決議(会社法238条2項、309条2項6号) |
|
例外 |
株主総会特別決議により、取締役(取締役会設置会社においては、取締役会)に委任できる。(会社法239条1項、309条2項6号) (*3)(*4) |
(*1)この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。(会社法239条1項各号)
① その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集新株予約権の内容及び数の上限
② ①の募集新株予約権につき金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
③ ①の募集新株予約権につき金銭の払込みを要することとする場合は、払込金額の下限
(*2)この委任決議は、割当日が決議の日から1年以内の日である募集についてのみ、その効力を有する。(会社法239条3項)
(*3)有利発行に該当するのは、次に掲げる場合である。(会社法238条3項各号、239条2項各号)
① 募集新株予約権を無償で発行する場合において、金銭の払込みを要しないとすることが募集新株予約権の割当てを受ける者に特に有利な条件であるとき
② 募集新株予約権を有償で発行する場合において、当該払込金額(又はその下限)が募集新株予約権の割当てを受ける者に特に有利な金額であるとき
(*4)有利発行に該当する場合には、取締役は、株主総会において、有利な条件又は有利な金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。(会社法238条3項、239条2項)
募集事項の決定機関(株主割当の場合)
公開会社 |
原 則 |
取締役会(会社法241条3項3号) |
公開会社 以外 |
原 則 |
株主総会特別決議(会社法241条3項4号、309条2項6号) |
例 外 |
定款により、取締役(取締役会設置会社においては、取締役会)に委任できる。(会社法241条3項1号2号) |
(*)株主割当の方法により募集新株予約権の発行をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、定款に別段の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の特別決議がなければ、募集新株予約権の発行の効力は生じない。(会社法322条1項5項、324条2項4号)
■引受けの申込みをしようとする者に対する通知
株式会社は、募集に応じて募集新株予約権の引受けの申込みをしようする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。(会社法242条1項各号)
① 株式会社の商号 ② 募集事項 ③ 新株予約権の行使に際して金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所 ④ ①~③に掲げるもののほか、法務省令(会施規54条)で定める事項 |
なお、この通知は、金融商品取引法2条10項に規定する目論見書を引受けの申込みをしようとしている者に交付している場合その他募集新株予約権の引受けの申込みをしようとする者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令(会施規55条)で定める場合には不要である。(会社法242条4項)