• 商業登記法ー13.募集株式の発行に関する登記
  • 2.株主割当てによる募集株式の発行
  • 株主割当てによる募集株式の発行
  • Sec.1

1株主割当てによる募集株式の発行

堀川 寿和2022/01/28 15:50

手続きの流れ

募集事項

(1) 募集事項の内容

 公開会社か否かを問わず、募集株式の発行等を行う際には、その都度、募集株式について次に掲げる事項を定めなければならない。(会社法199条1項各号)なお、募集事項は、募集ごとに、均等に定めることを要する。(会社法199条5項)

① 株主割当と株主割当て以外の共通の募集事項

a) 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数)

 新たに株式を発行する場合、その募集株式の数は発行可能株式総数の範囲内であることを要する。

b) 募集株式の払込金額又はその算定方法

 なお、公開会社が取締役会決議によって募集事項を決定する場合において、市場価格ある株式を引き受ける者の募集をするときは、公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法を定めれば、具体的な払込金額を取締役会決議で定める必要はない。(会社法201条2項)

c) 金銭以外の財産を出資の目的とする場合は、その旨並びに当該財産の内容及び価額

 現物出資により払込みをする場合、その旨並びに現物出資財産の内容及び価額を定めなければならない。設立の際に現物出資を行う場合は、定款にその旨を記載する必要があったが、募集株式の発行の場合においては、定款に定める必要はなく、現物出資者の資格についても制限はない。

d) 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は現物出資の財産の給付の期日又はその期間

 払込期日又は給付期日を定めると払込み又は給付をした募集株式の引受人は、その日に株主となり、払込期間又は給付期間を定めるとその期間中に払込み又は給付をした募集株式の引受人は、その払込み又は給付を行った日にそれぞれ募集株式の株主となる。(会社法209条1項各号)

e) 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項

 払込み又は給付された財産の額の全額を資本金として計上するのが原則であるが、払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる。(会社法445条2項)資本金として計上しないとした額は、資本準備金として計上しなければならない(会社法445条3項)ため、それぞれの額を募集事項で決定する。

② 株主割当における決定事項

 株主割当の方法により募集株式の発行等を行う場合には、上記のa) からe) の募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。(会社法202条1項各号)

a) 株主に対し、募集株式の引受けの申込みをすることにより、当該株式会社の募集株式(種類株式発行会社にあっては、当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨

b) a) の引受けの申込みの期日

 

(2) 募集事項の決定機関

 

公開会社の場合

株主割当

以外

(注4)

原則

取締役会の決議(会社法201条1項、199条2項)

有利発行

(注1)

原則

株主総会の特別決議(会社法201条1項、199条2項)

例外

株主総会の特別決議により募集事項の決定を取締役会に委任可能

(会社法200条1項)(注2・3)

株主割当

(注5)

取締役会の決議(会社法202条3項3号)

 

公開会社でない株式会社の場合

株主割当以外

(注4)

原則

株主総会の特別決議(会社法199条2項)

例外

株主総会の特別決議により募集事項の決定を取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任可能(会社法200条1項)   (注2・3)

株主割当

(注5)

原則

株主総会の特別決議(会社法202条3項4号)

例外

定款に定めることにより、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)により定めることも可能(会社法202条3項1号2号)

(注1)取締役は募集事項の決定をする株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。(会社法199条3項、200条2項)

(注2)委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めなければならない。なお、払込金額の下限が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は募集事項の決定の委任決議をする株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

(注3)この委任決議は払込期日(払込期間を定めた場合にあっては、払込期間の末日)が当該決議の日から1年以内の日である募集についてのみその効力を有する。

(注4)種類株式発行会社において、募集株式が譲渡制限株式である場合、定款に種類株主総会決議を不要とする規定がある場合を除き、当該種類株主総会の特別決議がなければ、募集事項を決定する決議の効力を生じない。

(注5)募集株式の発行がある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、定款に別段の定めがある場合を除き、当該種類株主総会特別決議がなければ、募集株式の発行の効力は生じない。

 

募集事項等の通知

 株式会社は、株主割当の方法による場合には、申込期日の2週間前までに、株主(当該株式会社を除く。)に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。 (会社法202条4項)

① 募集事項

② 当該株主が割当てを受ける募集株式の数

③ 申込期日

 この通知は、株主割当ての際の特有の通知である。株主に新たな株式の引受けの権利を与えた旨を知らせて、権利行使のチャンスを見逃さないようにさせる趣旨である。株主割当てであれば、公開会社であると否とを問わず、この通知は必要となる。また、通知を公告をもって代えられる旨の規定は存在しない。

 なお、株主割当の方法により募集株式の発行等をする場合において、株式の割当てを受ける権利を有する者が、引受けの申込みの期日までに申込みをしないときは、募集株式の割当てを受ける権利を当然に失う。(会社法204条4項)