- 宅建業法ー1.宅地建物取引業法総論
- 1.宅地建物取引業法総論
- 宅地建物取引業
- Sec.1
1宅地建物取引業
不動産は非常に高額かつ重要な財産であり、これを取引する行為も一般私人にとって極めて重要な行為となる。そのような行為に代理や媒介などの形で関わることができ、しかもそれを生業とできるのが宅地建物取引業者(以下、『宅建業者』)である。すると、この宅建業者が悪質な業者ではお客が困ることになる。さらに、そのことによって宅建業者の信用が下がれば、円滑な宅地建物の流通を阻害し、社会経済に悪影響を与えることにもなりかねない。
そこで、宅建業者や、その中にあって『重要事項説明』という重大な業務を一手に担うことができる『宅地建物取引士』について、必要な規制を設けることで、不動産の購入者等の利益の保護を図るための法律が『宅地建物取引業法(以下、『宅建業法』)である。 |
宅建業法において、入口の段階で最も重要な用語は、『宅地建物取引業』である。この用語の定義を考えることは、以下の重要な2点のルールに深く関連する。
Point1 「宅建業」に該当する行為を行う場合には免許が必要である。
Point2 「宅建業」に該当する行為には宅建業法の適用があるが、該当しない行為には、たとえ宅建業者が行うものであっても、宅建業法の適用はない。
■宅地建物取引業とは
宅地建物取引業とは、「宅地・建物」を「取引」することを「業」とすることをいい、それに該当する行為をする場合は免許が必要である。よって、「宅地・建物」、「取引」、「業」という言葉の、それぞれの定義を学習しなければならない。
(1) 宅地・建物
宅建業法上の宅地とは、以下の3つのものをいう。
1. 現在建物が建っている土地
2. 建物を建てる目的で取引する土地 3. 用途地域内の土地 |
これに対し、建物については、宅地のような厳格な定義はない。「柱・壁・屋根」の3点が揃っていれば建物と判断してよい。
Point1 「用途地域」とは、法令上の制限の分野として登場する、「都市計画法」の中の用語である。土地をどのような目的で利用するかの計画が決まっている土地のことである。用途地域は、建物を建てる目的で設定するものなので、たまたま用途地域内の土地が田畑や山林であったとしても宅地扱いになるのである。
Point2 用途地域内の土地であっても、さすがに現在「道路・公園・河川・広場・水路」となっている土地は宅地とはいえない。よって、これらだけは除外する。
Point3 用途地域内の、例えば、道路「予定地」は宅地である。
Point4 マンションの一室は、一軒の建物と考える。つまり、例えば一棟のマンションの中の一部屋だけを取引するときに、「建物全部ではないから建物を取引することにならない」と解釈することは誤りとなる。
(2) 取引
取引とは、
①自ら当事者となって、「売買・交換」をすること
②他の者の宅地・建物の「売買・交換・貸借」の代理・媒介をすること
をいう。
売買 | 交換 | 貸借 | |
自ら | ○ | ○ | × |
代理 | ○ | ○ | ○ |
媒介 | ○ | ○ | ○ |
Point 自ら当事者となって「貸借」をすることは「取引」には該当しない。(例:学生向けの賃貸アパートを経営する個人の家主)
(3) 業
業とは、不特定多数の相手方に対して、反復継続して行う行為をいう。営利性は関係がない。
Point1 「特定されている」というためには、契約の当事者間に、宅建業法で規制するまでもない特別な関係があるかどうかで判断する。以下の事例で考えよう。
① 会社が、自己の従業員に限定して住居のあっせんをおこなう → 特定されている(免許不要)
② 複数ではあるが、自己の知人・友人に限定して取引 → 特定されていない(免許必要)
③ 複数ではあるが、「公益法人」に限定して取引 → 特定されていない(免許必要)
Point2 ①の事例では、会社と従業員との間に、「雇用契約に基づき、従業員の生活環境について、会社が責任を持って面倒を見よう」という特別な関係があるため、特定されているといえる。他の事例にはそのような関係がない。
■免許不要となる場合
宅建業の定義に該当するにもかかわらず、免許を受ける必要がない場合がある。
① 信託会社・信託銀行
一定の信託会社や信託銀行は、宅建業法のうち免許に関する規定のみが適用されず、国土交通大臣の免許を受けた宅建業者とみなされる。宅建業を営もうとするときは、一定事項を国土交通大臣に届け出ればよい。これは、信託会社や信託銀行の免許のほうが宅建業者のものよりも厳しいからである。
Point 信託会社・信託銀行には、宅建業法の免許に関する規定以外の規定はすべて適用される。「信託会社には、宅建業法の規定は適用されない」という引っかけの記述が出題されるので注意。
② 国・地方公共団体・地方住宅供給公社等
国や地方公共団体、地方住宅供給公社など「公」の機関には、宅建業法の規定は一切適用されない。よって当然免許も不要である。これに対し「農業協同組合」や「宗教法人」は、「公」ではないので免許が必要である。