• 商業登記法ー9.設立に関する登記
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1発起設立の手続き

堀川 寿和2022/01/28 11:55

発起設立の流れ

 

① 定款の作成(会社法26条)

    ↓

② 定款の認証(会社法30条1項)

    ↓

③ 発起人の株式引受(会社法25条2項)

    ↓

④ 発起人による出資の履行(会社法34条)

    ↓

⑤ 設立時役員等の選任など

    ↓

⑥ 設立時取締役及び設立時監査役による調査

    ↓

⑦ 設立登記

発起人

(1) 発起人の意義

 発起人とは、定款に発起人として署名等をした者をいう。発起人が1人で会社を設立することもできる。

 

(2) 発起人の資格

 発起人の資格については会社法上別段制限がないため、日本人に限らず外国人でも、未成年者その他の制限行為能力者でもよいし、また会社等の法人でもよい。

 

先例

S54.4.15民四3087号)

 

法人は定款又は寄付行為に定められた目的の範囲内において権利能力を有することから、法人が発起人になる場合、その発起行為が所定の目的の範囲内でなければならない。

 

先例

(S52.8.15民四407号)

 

宗教法人が発起人の1人となっている魚介類及び生鮮食料品の販売及び貿易、損害保険代理業を目的とする株式会社の設立登記申請は受理して差し支えない。

 

 

(3) 発起人の権限

 設立中の会社における業務執行の決定は、原則として発起人が行う。したがって、会社の成立前は、定款記載の最小行政区画内における本店の所在場所の決定、支店の所在場所の決定、支配人の選任、株主名簿管理人の決定等は、定款に別段の定めがない限り、発起人の過半数によることになる。

 

定款の作成

(1) 原始定款の作成

 発起人は定款を作成し、それが書面で作られたときは、その全員がこれに署名又は記名押印しなければならない。(会社法26条1項)定款は電磁的記録をもって作ることができ、この場合は作成者は法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置(いわゆる電子署名)をとることを要する。(同条2項)会社設立の際に作成する定款を、成立後変更された定款と区別して特に原始定款と呼ぶ。

 

(2) 定款の絶対的記載事項

定款が効力を有するためには必ず記載しなければならない事項であり、この記載が欠けていたり、記載が違法であるときには、定款が全体として無効になる。会社法27条に列挙されている事項がこれにあたる。

1. 目的

2. 商号

3. 本店の所在地

4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

5. 発起人の氏名又は名称及び住所

(*1)「発行可能株式総数」は、株式会社の成立の時(設立登記の時)までに、定款に定めなければならない。(会社法37条1項、98条)

(*2)公告方法は、定款の絶対的記載事項でないが、公告方法を定款で定めなければ、公告方法は自動的に「官報に掲載する方法」とされる。つまり、会社の公告方法を「官報に掲載する方法」以外の「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」又は「電子公告」によることとする場合には、あらかじめ定款で定めておく必要がある。

目的

 目的とは、会社の事業目的であって、次の要件を満たすことを要する。

(イ)適法性

(ロ)営利性

(ハ)明確性

商号

 商号とは、会社の名称をいう。文字は漢字でもひらがなでも、カタカナでもよいが、会社の種類を表す文字(株式会社、合同会社等)という文字が含まれていなければならない。(会社法6条2項)

 会社の種類を表す文字の使用箇所は商号の初めか末尾がほとんどだが、中間でも差し支えない。

 ex道後温泉お土産センター株式会社かすりや)なお、会社の商号中の会社の種類を表す文字を、片仮名や平仮名で表示することはできない。(登研124)

本店所在地

 本店の所在地は独立の最小行政区画(市町村、東京都は区)までを定款に記載すれば足りる。(M34. 8.15民刑863) 定款で具体的に所在場所まで定めていない場合には、発起人の過半数の同意で定めれば足りる。

設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

 設立段階で出資される財産の具体的額又は最低額を定める。この額に達しなければ、設立は無効となる。

発起人の氏名又は名称及び住所

 発起人全員の氏名又は名称及び住所を記載する。

 

(3) 定款の相対的記載事項

 定款に記載しなくても定款自体の効力に影響はないが、会社法の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項である。相対的記載事項のうち会社法28条に規定されている変態設立事項が相対的記載事項の典型である。

 ex ・変態設立事項(会社法28条)

   (イ)現物出資(1号)

   (ロ)財産引受(2号)

   (ハ)発起人が受ける報酬、発起人が受ける特別利益(3号)

   (ニ)設立費用(4号)

   ・単元株式数に関する規定(会社法188条1項)

   ・株券発行会社である旨の定め(会社法214条)

   ・取締役の任期伸長規定(会社法332条2項)

   ・監査役の任期伸長規定(会社法336条2項)

   ・累積投票制度の廃除規定(会社法342条1項)

 

(4) 定款の任意的記載事項

 定款には以上のほか、公序良俗や会社の本質に反しない限りいかなる事項でも定めることができる。しかし、いったん定款で定めた事項を変更するには定款変更手続によらなければならない。

ex  株式の名義書換の手続

定時株主総会の招集時期

事業年度

取締役、監査役の員数など