- 商業登記法ー8.機関に関する登記
- 10.役員等の責任の免除又は責任の制限に関する登記
- 役員等の責任の免除又は責任の制限に関する登記
- Sec.1
1役員等の責任の免除又は責任の制限に関する登記
■意義
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(役員等)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(会社法423条1項)この責任を任務懈怠責任という。任務懈怠責任は、原則として総株主の同意がなければ、免除することができない(会社法424条)が、次の場合には、一定の範囲で責任を免除することができる。
■株主総会による責任の一部免除
役員等が職務を行うにつき善意かつ無重過失のときは、賠償の責任を負う額から最低責任限度額を控除して得た額を限度として、株主総会の特別決議によって免除することができる。(会社法425条1項)また、株式会社に最終完全親会社等(会社法847条の3第1項に規定する最終完全親会社等をいう。)がある場合において、当該責任が特定責任(会社法847条の3第4項に規定する特定責任をいう。)であるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の株主総会の特別決議によって免除することができる。(会社法425条1項)ただ、この株主総会による責任の一部免除は、登記事項とされていないため、商業登記法上では論点にはならない。
■取締役等による免除に関する定款の定め
(1) 意義
会社法424条の規定にかかわらず、一定の機関設計の株式会社では、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、前条第1項の規定により免除することができる額を限度として取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって免除することができる旨を定款で定めることができる。(会社法426条)この場合、当該定款の定めは登記事項となる。(会社法911条3項24号)
(2) 要件
この定款の定めを設けることができるのは、取締役が2人以上ある監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社だけである。(会社法426条1項)
したがって、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社以外で監査役が置かれていない株式会社や会計監査権限のみを有する監査役が置かれている株式会社では、この定めを設けることができない。
(3) 定款変更手続
新たに上記規定を定款に設ける場合には、定款変更についての株主総会特別決議が必要となる。
取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任の一部免除の定めを新設する定款変更議案を株主総会に提出する場合には、取締役は、監査役設置会社では監査役(2人以上ある場合には各監査役)、監査等委員会設置会社では各監査等委員、指名委員会等設置会社では各監査委員の同意を得なければならない。(会社法426条2項・425条3項)
しかし、商業登記法上、これを証する書面は添付書面とされていない。
(4) 登記申請手続
① 登記の事由
「取締役の会社に対する責任の免除に関する規定の設定」と記載する。
② 登記すべき事項
取締役の会社に対する責任の免除に関する規定の内容及び設定年月日である。
③ 添付書面
(イ) 定款変更についての株主総会議事録
(ロ) 株主リスト
株主総会議事録や種類株主総会議事録の添付を要する際にあわせて添付する。
(ハ)代理人によって申請する場合の「委任状」
④ 登録免許税
通常の変更登記分として3万円(ツ)
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の設定登記 申請書 記載例
登記の事由
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の設定
登記すべき事項
平成何年何月何日設定
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の設定
当会社は、会社法第426条の規定により、取締役会の決議をもって、同法第423条の行為に
関する取締役(取締役であった者を含む。)の責任を法令の限度において免除することができる。
当会社は、会社法第426条の規定により、取締役会の決議をもって、同法第423条の行為に
関する監査役(監査役であった者を含む。)の責任を法令の限度において免除することができる。
登録免許税
金3万円(ツ)
添付書類
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
委任状 1通
完了後の登記記録
取締役等の会社に対する責任の 免除に関する規定 |
当会社は、会社法第426条の規定により、取締役会の決議をもって、同法第423条の行為に関する取締役(取締役であった者を含む。)の責任を法令の限度において免除することができる。 当会社は、会社法第426条の規定により、取締役会の決議をもって、同法第423条の行為に関する監査役(監査役であった者を含む。)の責任を法令の限度において免除することができる。 平成年月日設定 平成年月日登記 |
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の廃止の登記 申請書 記載例
登記の事由
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の廃止
登記すべき事項
平成何年何月何日
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の廃止
登録免許税
金3万円(ツ)
添付書類
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
委任状 1通