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1権利に関する登記

堀川 寿和2021/11/18 15:43

権利に関する登記

 権利に関する登記とは、不動産についての所有権・地上権・抵当権・賃借権等の権利に関する登記をいう。権利に関する登記には、対抗力が認められている。つまり、その役割は、不動産物権変動を公示することにより、不動産取引の安全と円滑を図ることである。

権利に関する登記の申請

(1) 申請主義

 登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請(または官庁もしくは公署の嘱託)がなければ、することができない。つまり、登記官の職権による登記は、原則として、認められないということである。この原則を申請主義という。それに対して、表示に関する登記は、登記官の職権による登記が認められており、申請主義の例外である。

 この申請主義は、権利に関する登記には、申請義務がないということも意味している。


Point1 所有権の保存の登記や所有権の移転の登記など、権利に関する登記には申請義務がない


Point2 所有権の登記名義人は、その氏名や住所について変更があったときでも、変更の登記を申請する必要はない


(2) 共同申請主義

① 原則

 権利に関する登記(所有権の移転の登記など)の申請は、原則として、登記権利者および登記義務者が共同してしなければならない。この原則を、共同申請主義という。

 登記権利者は、権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に利益を得る者をいい、登記義務者は、権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人をいう。たとえば、売買を原因とする所有権移転登記であれば、登記権利者は、所有権移転登記により登記名義を得る「買主」であり、登記義務者は、所有権移転登記により登記名義を失う「売主」である。

 共同申請主義が採用されているのは、虚偽の登記申請を防ぐためである。


② 例外

 次の場合は、例外的に、単独で登記を申請することができる。

① 所有権保存の登記
② 相続による登記
③ 登記手続きを命じる確定判決による登記
④ 登記名義人の氏名等の変更・更正の登記


Point 不動産の収用による所有権の移転の登記は、起業者が単独で申請することができる。


(3) 登記申請の方法

 登記の申請は、次の方法のいずれかにより、申請情報を登記所に提供してしなければならない。


①電子情報処理組織を使用する方法(オンライン申請)
②申請情報を記載した書面を提出する方法(書面申請)


■登記申請の方法

登記の申請は、以下の方法によりすることができる。



Point 登記の申請は代理人によってすることもできる。登記を申請する者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない


(4) 登記申請に必要となる情報

① 申請情報

 申請情報とは、不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名または名称、登記の目的などである。


② 添付情報

 一定の場合には、申請者は、申請情報と併せて、添付情報を提供しなければならない。添付情報の主なものは以下のとおり。


イ) 登記識別情報

 登記権利者および登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合には、申請人は、原則として、その申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供しなければならない。

 かつて「登記済証」(一般には権利証)と呼ばれていたものに相当する。

 登記識別情報は12桁の英数字のパスワードである。登記名義人しか知り得ない情報であり、これによって登記官は、申請者が登記義務者(登記名義人)本人であることを確認する。


Point1 申請人が登記識別情報を提供しなくても、登記を申請することができる場合がある。


Point2 登記識別情報を提供できない場合には、以下の代替措置がある。



事前通知制度 登記識別情報を提供することができないときは、登記官は、登記義務者に対し、(1)登記申請があった旨、(2)その申請の内容が真実であると思料するときは一定の期間内にその旨の申出をすべき旨、を通知しなければならない(事前通知)。登記官は、申出期間内に申出がない場合には、その申請による登記をすることができない。
 所有権に関する登記の申請が登記識別情報の提供なしに行われた場合で、登記義務者の住所について変更の登記がされているときは、登記官は、事前通知制度に加えて、その登記義務者の登記記録上の前住所に宛てて、登記申請があった旨を通知しなければならない(前住所地への通知)。

資格者代理人(司法書士)による本人確認制度 登記申講を代理した資格者代理人(司法書士、土地家屋調査士、弁護士)が登記義務者の本人確認情報を提供し、登記官がその内容を相当と認めたときは、事前通知の手続を省略することができる。


ロ) 登記原因証明情報

 権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、原則として、その申請情報と併せて登記原因を証する情報(登記原因証明情報)を提供しなければならない。

 登記原因証明情報は、登記原因となった事実とそれによる物権変動の存在を、登記義務者(登記名義人)から証明するものである。たとえば、売買による所有権移転登記の申請であれば、売買契約書や売買契約書の写しに売主が記名押印したものなどが登記原因証明情報になる。


Point 以前は、売買契約書などの登記原因証書(現在の登記原因証明情報)を提出できない場合には、申請書の副本をもってこれに代えることができる制度があったが、この制度は廃止されている。


ハ) 住所証明情報

表題登記、所有権保存登記、所有権移転登記などを申請する場合には、申請者は、原則として、申請情報と併せて住所を証する情報(住所証明情報)を提供しなければならない。これは、新たに登記名義人となる者の住所を証明する情報である。住民票の写しなどでかまわない。


ニ) 代理権限証明情報

 代理人によって登記を申請する(司法書士に依頼する)場合、その代理人の権限を証する情報(委任状など)を、申請情報と併せて提供しなければならない。


(5) 登記識別情報の通知

 登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、その登記を完了したときは、原則として、速やかに、その申請人に対し、その登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。


権利の順位

 同一の不動産について登記した権利の順位は、原則として、登記の前後による。つまり、先に登記をしたほうが優先するということである。

 登記の前後は、登記記録の順位番号または受付番号で判断される。登記記録の同一の区にした登記相互間については順位番号、別の区にした登記相互間については受付番号による。受付番号は、甲区・乙区を問わず、受付順に付けていく通し番号である。