- 商業登記法ー6.株式に関する登記
- 9.株式の譲渡制限に関する規定
- 株式の譲渡制限に関する規定
- Sec.1
1株式の譲渡制限に関する規定
■株式の譲渡制限に関する規定の意義
株式の譲渡は原則として自由である(会社法127条)しかし、株式会社は定款を変更することにより株式の譲渡による取得をするには会社の承認が必要である旨を定款に定め、会社経営上好ましくない者が株主となることを防ぐことができる。(会社法107条1項1号、108条1項4号)
株式の譲渡制限規定は、前述のとおり発行する全部の株式の内容として定めることができるほか(会社法107条1項1号)、ある種類の株式の内容として定めることもできる。(会社法108条1項4号)当該定めは定款の相対的記載事項であるため、その設定には定款の変更手続が必要となる。
また、当該定めは登記事項でもある(会社法911条3項7号)ため、適法に譲渡制限規定が設定された場合、その旨の変更登記が必要となる。(会社法915条1項)
なお、株式の譲渡制限規定は、発行する株式の内容(種類株式発行会社では発行する各種類の株式の内容)として定められるものであり、登記事項としても株式の内容(会社法911条3項7号)として登記されるものであるが、登記記録上は「株式の譲渡制限に関する規定」の欄を設け、株式の内容とは別に記録される。(H18. 3. 31民商782号第2部第2. 2(3)ア)
完了後の登記記録 (単一株式発行会社の株式の譲渡制限規定)
株式の譲渡制限 に関する規定
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当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。
平成年月日設定 平成年月日登記 |
完了後の登記記録 (種類株式発行会社の株式の譲渡制限規定)
株式の譲渡制限 に関する規定
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当会社の普通株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。
平成年月日設定 平成年月日登記 |
■譲渡の承認機関
譲渡による取得の承認機関は、原則として、取締役会設置会社では取締役会、取締役会を置かない株式会社では株主総会となるが、取締役会設置会社が承認機関を株主総会にするなど、定款に別段の定めを設けることもできる。(会社法139条1項)
定款の定めとしては、承認機関を明示せず「当会社の承認を要する」と定めたり、「代表取締役の承認を要する」としたりするほか、種類株式の内容として株式譲渡制限を定款で定めた場合には、当該種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会を譲渡承認機関とする内容の登記を申請することができる。しかし、全くの第三者が定めるものとするなど、会社の決定とはいえないような定め方をすることはできない。
■譲受人の範囲の制限
承認を要する譲受人の範囲の制限は可能である。(S41.12.20民甲3636号)
(ex)「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の決議を要する。ただし、譲受人が株主である場合においては、会社が承認をしたものとみなす」 ○
cf 一方、「当会社に関係ある者にして取締役会の承認を得たる者以外にこれを譲渡することができない。」など、譲受人の範囲そのものを制限する規定は原則として無効である。(S41.12.20民甲3636号)
ただ、日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社において株式の譲受人を当該会社の事業に関係のある者に限る旨の規定は有効である。(日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律1条)言論の自由が抑圧されないために特別に認められているものである。