- 商業登記法ー6.株式に関する登記
- 8.発行する株式の内容についての登記
- 発行する株式の内容についての登記
- Sec.1
1発行する株式の内容についての登記
■発行する株式の全部の内容の定め(単一株式発行会社の場合)
(1) 意義
株式会社は、その発行する全部の株式の内容として、次に掲げる事項を定めることができる。会社法107条1項)
① 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(譲渡制限株式) ② 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること(取得請求権付株式) ③ 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること(取得条項付株式) |
(2) 内容
これらの事項を定めた場合には、会社法107条2項に定める事項を定款で定める必要がある。
① 譲渡制限株式
(イ)当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨
(ロ)一定の場合においては株式会社が会社法136条又は会社法137条1項の承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合(ex 株主間の譲渡の場合は、承認したものとみなす)
② 取得請求権付株式
(イ)株主が当該株式会社に対して当該株主の有する株式を取得することを請求することができる旨
(ロ)(イ)の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
(ハ) (イ)の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
(ニ) (イ)の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についての(ロ)に規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についての(ハ)に規定する事項
(ホ) (イ)の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の株式等(株式、社債及び新株予約権をいう。)以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数もしくは額又はこれらの算定方法
(へ)株主が当該株式会社に対して当該株式を取得することを請求することができる期間
③ 取得条項付株式
(イ)一定の事由が生じた日に当該株式会社がその株式を取得する旨及びその事由
(ロ)当該株式会社が別に定める日が到来することをもって(イ)の事由とするときは、その旨
(ハ) (イ)の事由が生じた日に(イ)の株式の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する株式の一部の決定の方法
(二) (イ)の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
(ホ) (イ)の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
(ヘ) (イ)の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についての(ロ)に規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についての(ハ)に規定する事項
(ト) (イ)の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数もしくは額又はこれらの算定方法
(3) 決議
① 取得請求権付株式
取得請求権付株式の定めの設定をするには、定款変更についての株主総会の特別決議を得なければならない。(会社法466条)
② 取得条項付株式
取得条項付株式の定めを設定するには、株主全員の同意を得なければならない。(会社法110条)
③ 譲渡制限株式
譲渡制限株式の定めを設定するには、議決権を行使することができる株主の半数以上(定款で加重可能)であって、かつ議決権を行使することができる株主の議決権の3分の2以上(定款で加重可能)の賛成による。(会社法309条3項1号、株主総会特殊決議)譲渡制限規定を設けることによって公開会社が非公開会社となり、取締役会を設置する義務がなくなるなど、その機関設計の大きな変更を伴うため、特別決議よりも厳しい特殊決議を要求するのである。
(4) 登記申請手続
① 登記の事由
(イ)取得請求権付株式
「会社が発行する株式の内容の変更」と記載する。
(ロ)取得条項付株式
「会社が発行する株式の内容の変更」と記載する。
(ハ)譲渡制限株式
「株式の譲渡制限に関する規定の設定」と記載する。
② 登記すべき事項
(イ)取得請求権付株式
発行する株式の内容として取得請求権付株式の内容と変更の年月日である。
(ロ)取得条項付株式
会社法107条2項3号に定める事項及び変更の年月日である。
(ハ)譲渡制限株式
株式の譲渡制限に関する規定及び設定の年月日である。
③ 添付書類
(イ)取得請求権付株式
a) 定款変更についての「株主総会議事録」
b) 株主リスト
c) 代理人によって申請する場合の「委任状」
(ロ)取得条項付株式
a) 総株主の同意書
b) 株主リスト
c) 代理人によって申請する場合の「委任状」
(ハ)譲渡制限株式
a) 株式の譲渡制限に関する規定の設定についての決議の「株主総会議事録」
b) 「株主リスト」
c) 「株券の提供公告をしたことを証する書面」又は「株式の全部について株券を発行していないことを証する書面」
株式の譲渡制限に関する規定は、株券の記載事項であるため、既存の株券を回収して新たな株券を交付する必要がある。なお、株券発行会社でない場合には、別段の書面は不要である。
d) 代理人によって申請する場合の「委任状」
④ 登録免許税
いずれも金3万円(登録免許税別表1、24、(1)ツ)
⑤ 登記期間
変更の効力発生日から本店所在地において2週間以内である。
取得請求権付株式の登記 申請書 記載例
登記の事由 発行する株式の内容の変更
登記すべき事項 平成何年何月何日 変更
発行する株式の内容
株主は、いつでも当会社に対して当会社の株式を時価で取得することを請求する
ことができる。「時価」とは、当該取得請求日に先立つ45取引日に始まる30
取引日の株式会社東京証券取引所における毎日の終値の平均値をいう。
登録免許税 金3万円(ツ)
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
委任状 1通
完了後の登記記録
発行する株式の内容 |
株主は、いつでも当会社に対して当会社の株式を時価で取得することを請求することができる。 「時価」とは、当該取得請求日に先立つ45取引日に始まる30取引日の株式会社東京証券取引所における毎日の終値の平均値をいう。 平成年月日変更 平成年月日登記 |
取得条項付株式の登記 申請書 記載例
登記の事由 発行する株式の内容の変更
登記すべき事項 平成何年何月何日 変更
発行する株式の内容
当会社は、当会社が別に定める日が到来したときに、当会社の株式を時価で取得
することを請求することができる。
「時価」とは、当該取得請求日に先立つ45取引日に始まる30取引日の株式会
社東京証券取引所における毎日の終値の平均値をいう。
登録免許税 金3万円(ツ)
添付書類 総株主の同意書 1通
株主リスト 1通
委任状 1通
完了後の登記記録
発行する株式の内容 |
当会社は、当会社が別に定める日が到来したときに、当会社の株式を時価で取得することを請求することができる。 「時価」とは、当該取得請求日に先立つ45取引日に始まる30取引日の株式会社東京証券取引所における毎日の終値の平均値をいう。
平成年月日変更 平成年月日登記 |
株式の譲渡制限に関する規定の設定登記 申請書 記載例
登記の事由 株式の譲渡制限に関する規定の設定
登記すべき事項 平成何年何月何日 設定
株式の譲渡制限に関する規定
当会社はの株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。
登録免許税 金3万円(ツ)
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
(株券の提供公告をしたことを証する書面 1通)
(又は、株式の全部について株券を発行していないことを証する書面)
委任状 1通
完了後の登記記録
株式の譲渡制限 に関する規定(*1) |
当会社はの株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。
平成年月日設定 平成年月日登記 |
(*1)株式の譲渡制限に関する規定は、「発行する株式の内容」の欄ではなく、「株式の譲渡制限に関する規定」の欄に登記される。
■発行する各種類の内容の定め(種類株式発行会社の場合)ー1
(1) 意義
株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第9号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
① 剰余金の配当(優先株式、劣後株式)
② 残余財産の分配(優先株式、劣後株式)
③ 株主総会において議決権を行使することができる事項(議決権制限株式)
④ 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(譲渡制限株式)
⑤ 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること
(取得請求権付株式)
⑥ 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること(取得条項付株式)
⑦ 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること
(全部取得条項付株式)
⑧ 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第478条第8項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員する種類株主総会の決議があることを必要とするもの(拒否権付株式)
⑨ 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。次号第9号及び第112条第1項において同じ)又は監査役を選任すること(取締役又は監査役の選任権付株式)
(2) 内容
種類株式を発行するためには、その種類株式の内容及び、会社が発行するその種類株式の発行可能種類株式総数を定款で定め、登記しなければならない。(会社法108条2項)
① 剰余金の配当についての種類株式
【定款で定める内容】
剰余金の配当に関する種類株式を発行するためには、発行可能種類株式総数に加え、a) 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、b) 配当をする条件、c) その他剰余金の配当に関する取り扱いの内容、を定款で定めなければならない。(会社法108条2項1号)なお、具体的な配当の額まで定める必要はない。剰余金の配当を受ける権利を有しないとする種類株式も発行することは可能である。
② 残余財産の分配についての種類株式
【定款で定める内容】
残余財産の分配に関する種類株式を発行するためには、発行可能種類株式総数に加え、a) 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、b) 当該残余財産の種類、c) その他残余財産の分配に関する取り扱いの内容、を定款で定めなければならない。(会社法108条2項2号)
③ 議決権制限株式
議決権の行使につき制限のある種類の株式の発行を定めることができる。議決権が全くない完全無議決権株式を発行することも、議決権が一定の事項に制限された決議事項制限株式を発行することができ、一定額以上の剰余金の配当がなされない場合に議決権制限株式に議決権が生ずるなどの定めをすることも可能である。
【定款で定める内容】
議決権制限株式を発行するためには、発行可能種類株式総数に加え、a) 株主総会において議決権を行使することができる事項、b) 当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件、を定款で定める必要がある。(会社法108条2項3号)
【議決権制限株式の発行についての制限】
種類株式発行会社が公開会社である場合において、この議決権制限株式の数が発行済株式の総数の2分の1を超えるに至ったときは、会社は直ちに議決権制限株式の数を発行済株式の総数の2分の1以下にするための必要な措置をとらなければならない。(会社法115条)
④ 譲渡制限株式
単一株式発行会社の譲渡制限付株式と同じ種類の株式だが、発行する株式の一部についてその定めを置く種類株式である点で異なる。
【定款で定める内容】
譲渡制限株式を発行するためには、発行可能種類株式総数に加え、a) 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること、b) 一定の場合においては株式会社が会社法136条又は会社法137条1項の承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合、を定款で定める必要がある。(会社法108条2項4号)
⑤ 取得請求権付株式
単一株式発行会社の取得請求権付株式と同じ種類の株式だが、発行する株式の一部についてその定めを置く種類株式である点で異なる。よって、取得の請求を受けた株式会社が当該種類株式の対価として交付すべきものは、前述の社債、新株予約権、新株予約権付社債、その他株式等以外の財産の他、当該株式会社の他の種類の株式とすることができる。
【定款で定める内容】
取得請求権付株式を発行するためには、発行可能種類株式総数に加え、a) 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること、b) 当該種類の株式についての会社法107条2項2号に定める事項、c) 当該種類の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
⑥ 取得条項付株式
単一株式発行会社における取得条項付株式と同じ種類の株式だが、発行する株式の一部についてその定めを置く種類株式である点で異なる。よって、株式会社が、当該種類株式の取得対価として交付すべき物は、前述の社債、新株予約権、新株予約権付社債、その他株式等以外の財産の他、当該株式会社の他の種類の株式とすることができる。
【定款で定める内容】
取得条項付株式を発行するためには、発行可能種類株式総数に加え、a) 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること、b) 当該種類の株式についての会社法107条2項3号に定める事項、c) 当該種類の株式1株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
⑦ 全部取得条項付株式
2以上の種類の株式を発行する株式会社における、そのうちの1つの種類の株式の全部を株主総会の特別決議によって取得することができる旨の定款の定めがある種類の株式である。
【定款で定める内容】
全部取得条項付株式を発発行するためには、発行可能種類株式総数に加え、a) 当該種類株式について当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができること、b) 会社法171条1項1号に規定する取得対価の価額の決定の方法、c) 当該株主総会の決議をすることができるか否かについての条件を定めるときはその条件、を定款で定めなければならない。(会社法108条2項7号)
⑧ 拒否権付株式
株主総会(取締役会、清算人会)で決めるべき事項のうち、その決議のほかに、当該種類の株式の種類株主総会の決議を必要とする旨の定めを設けることができる。(会社法108条1項8号)
【定款で定める内容】
当該種類の株式を発行するためには、発行可能揷類株式総数に加え、a) 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とすること、b) 当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項、c) 当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは、その条件、を定款で定めなければならない。(会社法108条2項7号)
⑨ 取締役又は監査役の選任権付株式
指名委員会設置会社でも公開会社でもない会社は、特定の種類の株式を持つ株主が取締役又は監査役の選任をすることを認める内容を定めることができる。(会社法108条1項9号)つまり、公開会社や指名委員会設置会社においては、この種類株式を発行することはできない。
【定款で定める内容】
a) 当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数
b) 選任することができる取締役又は監査役の全部又は一部を他の種類株主と共同して選任することとするときは、当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数
c) a) 又はb) に掲げる事項を変更する条件があるときは、その条件及びその条件が成就した場合における変更後の事項
d) その他、法務省令で定める事項(会施規19条)
(3) 定款で各種類の株式の内容の要綱を定めれば足りる場合
株式会社が種類株式を発行する場合、原則として上記(2)の内容を定款に定めなければならない。(会社法108条2項)が、以下の事項についてはその要綱を定款に定めれば足りるとされている。(会社法108条3項、会施規20条1項)
種類株式の内容の要綱を定款に定めればよいとされている事項
|
要綱を定款に定めればよいとされている事項 |
剰余金の配当に関する 種類株式 |
① 配当財産の価額の決定方法 ② 剰余金の配当条件その他配当に関する取扱い |
残余財産の分配に関する 種類株式 |
① 残余財産の価額の決定方法 ② 残余財産の分配に関する取扱い |
議決権制限株式 |
議決権の行使の条件を定めるときは,その条件 |
譲渡制限株式 |
一定の場合には会社が譲渡による取得を承認したものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合 |
取得請求権付株式 |
① 株式の取得と引換えに株主に交付する財産の内容、数又は算定方法 ② 取得請求の可能な期間 |
取得条項付株式 |
① 取得をする一定の事由 ② 株式の取得と引換えに株主に交付する財産の内容、数又は算定方法 |
全部取得条項付種類株式 |
株式の全部取得に係る株主総会の決議についての条件を定めるときは、その条件 |
拒否権付種類株式 |
種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは、その条件 |
取締役又は 監査役の選任 に関する種類株式 |
① 種類株式の内容を変更する条件があるときは、その条件及び条件成就後の内容 ② 会施規19条で定める事項 |
なお、要綱を定めた場合には、その要綱について登記をすることを要する。その後、当該種類の株式を初めて発行する時までにその具体的内容を定めればよく、具体的内容を定めたときは、発行する各種類の株式の内容の変更の登記をしなければならない。(会社法911条3項7号)
具体的内容の決定については、定款の定めに従い、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては、株主総会又は清算人会)の決議によって定める。(会社法108条3項)
(4) 剰余金の配当、残余財産の分配に関する株式の定めの設定(優先株式、劣後株式)
① 実体手続
新たに発行すべき種類株式として剰余金の配当又は残余財産の分配に関する優先株式を追加するには、株主総会の特別決議により定款を変更して、さらにある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該種類の種類株主総会の特別決議をする必要がある。既に定めている場合、その内容を変更又は廃止する場合も同様である。また、登記事項であるため、適法に設定、変更又は廃止されれば、その変更登記が必要となる。
② 登記手続
(イ)登記の事由
「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の設定(変更)」等と記載する。
(ロ)登記すべき事項
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容及び変更年月日である。
(ハ)添付書面
a) 定款変更の決議機関に応じ、株主総会議事録、種類株主総会議事録など
b) 株主リスt
c) 委任状
(ニ)登録免許税
金3万円(登録免許税別表1、24、(1)ツ)
(ホ)登記期間
発行可能種類株式総数又は発行する各種類の株式の内容を変更したときは、2週間以内に本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
(ヘ)登記の処理
a) 単一株式発行会社が種類株式発行会社となった場合には、登記官は、申請に基づき発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の登記をしたときは、職権で、発行する株式の内容(取得請求権付株式、取得条項付株式)の登記を抹消する記号を記録しなければならない。(商施規69条1項)
b) 種類株式発行会社が、単一株式発行会社となった場合には、普通株式のみを発行する場合には、「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の廃止」の登記を申請すればよいが、取得請求権付株式又は取得条項付株式のみを発行する株式会社となるときは、発行する株式の内容の登記をするとともに、職権で、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の登記を抹消する記号を記録しなければならない。(商施規69条2項)
■発行する各種類の内容の定め(種類株式発行会社の場合)ー2
(事例)剰余金の配当に関する優先株式について、残余財産の分配についても普通株式を有する株主に先立って支払いを受ける旨の定めを追加する場合の記載例である。
残余財産の分配に関する株式の内容の新設の登記 申請書 記載例
登記の事由 発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更
登記すべき事項 平成何年何月何日 設定(変更)
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容
普通株式 ○○株
優先株式 ○○株
剰余金については、優先株式を有する株主に対し、普通株式を有する株主に先
立ち、1株につき2万円の剰余金を支払う。
残余財産の分配については、優先株式を有する株主に対し、普通株式を有する
株主に先立ち、1株につき1万円の金銭を支払う。
登録免許税 金3万円(ツ)
添付書類 株主総会議事録 1通
(種類株主総会議事録 1通)
株主リスト ○通
委任状 1通
単一株式発行会社が別の種類の株式の内容を定める旨の定款の変更をしたときは、新たに定めた別の種類の株式の内容の設定の登記のほか、発行可能種類株式の設定の登記もしなければならない。
完了後の登記記録
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容 |
普通株式 ○○株 優先株式 ○○株 剰余金については、優先株式を有する株主に対し、普通株式を有する株主に先立ち、1株につき2万円の剰余金を支払う。
平成年月日変更 平成年月日登記 |
普通株式 ○○株 優先株式 ○○株 剰余金については、優先株式を有する株主に対し、普通株式を有する株主に先立ち、1株につき2万円の剰余金を支払う。 残余財産の分配については、優先株式を有する株主に対し、普通株式を有する株主に先立ち、1株につき1万円の金銭を支払う。
平成年月日変更 平成年月日登記 |
(5) 議決権制限株式の定めの設定
① 実体手続
一部の種類株式の内容として議決権制限の定めを追加するには、株主総会の特別決議により定款を変更し、ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該種類の種類株主総会の特別決議をする必要がある。既発行の種類株式の内容を変更して議決権制限株式とする場合、議決権制限株式の内容の変更・廃止も同様である。また、登記事項であるため、適法に設定、変更又は廃止されれば、その変更登記が必要となる。
② 登記手続
優先株式と同様である。
③ 登記の処理
優先株式と同様である。
(事例)剰余金の配当に関する優先株式である甲種類株式について、株主総会での議決権を有しない
旨の定めを追加する場合の記載例である。
議決権制限株式の登記 申請書 記載例 (甲種類株式を完全無議決権株式とする場合)
登記の事由 発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更
登記すべき事項 平成何年何月何日 変更
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容
普通株式 ○○株
甲種類株式 ○○株
剰余金については、甲種類株式を有する株主に対し、普通株式を有する株主に先
立ち、1株につき2万円の剰余金を支払う。
甲種類株式を有する株主は、株主総会において議決権を有しない。
登録免許税 金3万円(ツ)
添付書類 株主総会議事録 1通
(種類株主総会議事録 1通)
株主リスト ○通
委任状 1通
完了後の登記記録
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容 |
普通株式 ○○株 甲種類株式 ○○株 剰余金については、甲種類株式を有する株主に対し、普通株式を有する株主に先立ち、1株につき2万円の剰余金を支払う。
平成年月日変更 平成年月日登記 |
普通株式 ○○株 甲種類株式 ○○株 剰余金については、甲種類株式を有する株主に対し、普通株式を有する株主に先立ち、1株につき2万円の剰余金を支払う。 甲種類株式を有する株主は、株主総会において議決権を有しない。
平成年月日変更 平成年月日登記 |
(6) 取得請求権付株式の定めの設定
新たに発行すべき種類株式として取得請求権付株式を追加するには、株主総会の特別決議により定款を変更し、ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該種類の種類株主総会の特別決議をする必要がある。既発行の種類株式の内容を変更して取得請求権付株式とする場合、取得請求権付株式の内容の変更又は廃止も同様である。また、登記事項であるため、適法に設定、変更又は廃止されれば、その変更登記が必要となる。
(事例)発行可能株式の総数を1000株から2000株に増加するのと同時に、単一株式発行会社
が定款変更によって種類株式発行会社とし、新たに取得請求権付株式の発行枠1000株を
定める場合の記載例である。
取得請求権付株式の登記 申請書 記載例
登記の事由 発行可能株式総数の変更
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の設定
登記すべき事項 平成何年何月何日変更
発行可能株式総数 2000株
同日設定
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容
普通株式 1000株
取得請求権付株式 1000株
取得請求権付株式を有する株主は、当会社に対していつでもその有する株式の
取得を請求することができる。会社が取得した株式を有していた者に対して、
その有していた株式2株につき普通株式3株が交付される。
登録免許税 金3万円(ツ)
添付書類 株主総会議事録 1通
(種類株主総会議事録 1通)
株主リスト ○通
委任状 1通
完了後の登記記録
発行可能株式総数 |
1000株
2000株 |
平成年月日 変更 |
平成年月日 登記 |
||
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容 |
普通株式 1000株 取得請求権付株式 1000株 取得請求権付株式を有する株主は、当会社に対していつでもその有する株 式の取得を請求することができる。会社が取得した株式を有していた者に 対して、その有していた株式2株につき普通株式3株が交付される。
平成年月日 設定 平成年月日 登記 |