- 商業登記法ー5.定款変更に伴う変更登記
- 8.株主名簿管理人に関する登記
- 株主名簿管理人に関する登記
- Sec.1
1株主名簿管理人に関する登記
株主名簿管理人とは、株式会社に代わって株主名簿(及び新株予約権原簿)の作成及び備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者をいう。株主名簿は会社の本店に備え置かれるのが原則であるが、株式会社は、株主名簿管理人を置く旨を定款で定め、株主名簿の作成及び備置きその他の株主名簿に関する事務を行うことを委託することができる。(会社法123条)株主名簿管理人を置いたときは、会社は株主名簿を株主名簿管理人の営業所に備え置くことになる。株主名簿管理人の氏名又は名称及び住所並びに営業所は登記事項とされているため、(会社法911条3項11号)、株主名簿管理人が設置されたときは、その変更登記が必要となる。(会社法915条1項)
■実体手続
(1) 定款の定め
株主名簿管理人を設置するためには、定款に株主名簿管理人を設置する旨の定めがあることが必要となるため、定款にその旨の定めがない場合は、定款変更により設置する旨を定めなければならない。定款の定めとしては、株主名簿管理人を置く旨の定めがあればよく、具体的な株主名簿管理人まで特定する必要はない。具体的に誰を株主名簿管理人とするかについては、取締役会又は取締役の過半数の一致により決定することになる。
(2) 取締役の決定(取締役会設置会社においては、取締役会の決議)
定款で具体的に株主名簿管理人を定めている場合は必要ないが、定款で定めていない場合には、取締役の決定(取締役会設置会社においては、取締役会の決議)によって株主名簿管理人を具体的に誰にするかを決定する必要がある。設立時においては発起人の過半数で定める。
なお、通常定款では具体的な株主名簿管理人まで定めないのが一般的である。
(株主名簿管理人) 第○条 当会社は、株主名簿管理人を置く。 |
(3) 代表者による委託契約の締結
代表取締役等会社を代表する者は、取締役会等で決議した株主名簿管理人と株主名簿に関する事務につき委託契約を締結する必要がある。
■登記申請手続
(1) 登記の事由
「株主名簿管理人の設置」と記載する。
(2) 登記すべき事項
① 株主名簿管理人の氏名又は名称及び住所並びに営業所
② 株主名簿管理人を設置した旨及びその年月日
(3) 添付書面
① 株主名簿管理人を置く旨の定めがある「定款」
② 株主名簿管理人を具体的に選定した「取締役会議事録」又は「取締役の過半数の一致を証する書面」ただし、定款で具体的にに株主名簿管理人を定めているときは添付の必要はない。
③ 契約を証する書面
株主名簿管理人との間の「委託契約書」を添付する(商登法64条)
④ 代理人によって申請する場合の「委任状」
(4) 登録免許税
金3万円(登録免許税別表1、24、(1)ツ)
(5) 登記期間
株主名簿管理人を置いた日(委託契約締結日)から本店所在地において2週間以内である。
株主名簿管理人の設置の登記 申請書 記載例
登記の事由 株主名簿管理人の設置
登記すべき事項 平成何年何月何日 設置
株主名簿管理人の氏名又は名称及び住所並びに営業所
何市何丁何丁目何番何号
○○信託株式会社 本店 (*1)
登録免許税 金3万円(ツ)
添付書類 定款 1通
取締役会議事録(又は取締役の過半数の一致を証する書面) 1通
株主名簿管理人との契約を証する書面 1通
委任状 1通
(*1)株主名簿管理会社の支店に株主名簿を備え置く場合
「株主名簿管理人の氏名又は名称及び住所並びに営業所
何市何丁何丁目何番何号
○○信託株式会社 ××支店
本店 何市何丁何丁目何番何号 」
完了後の登記記録
株主名簿管理人の氏名 又は名称及び住所並びに営業所 |
何市何丁何丁目何番何号 ○○信託株式会社 本店
平成年月日設置 平成年月日登記 |
■株主名簿管理人の変更
(1) 実体手続
① 定款変更の要否
定款に具体的な株主名簿管理人の氏名又は名称が記載されているときは、株主総会で定款変更についての決議が必要がある。
② 旧株主名簿管理人との契約の解除及び新株主名簿管理人との契約
株主名簿管理人を変更するには、従前の株主名簿管理人との契約を解除し、新たな株主名簿管理人との契約をする必要がある。
③ 新契約の締結手続
設置の場合と同じく、取締役の決定又は取締役会の決議と、新たな株主名簿管理人との委託契約が必要となる。
(2) 登記申請手続
① 登記の事由
「株主名簿管理人の変更」と記載する。
② 登記すべき事項
(イ)変更後の株主名簿管理人の氏名又は名称及び住所並びに営業所
(ロ)変更を生じた旨及びその年月日
③ 添付書面
(イ)株主名簿管理人を置く旨の定めがある「定款」
新設の場合と異なり、変更の場合には不要ではないかという考えも成り立つが、株主名簿管理人の交替による変更は、旧株主名簿管理人の廃止と、株主名簿管理人の設置による変更となるため、原則どおり商登法64条の規定が適用され、定款の添付が必要となる。
(ロ)取締役会議事録又は取締役の過半数の一致を証する書面
新たな株主名簿管理人を具体的に選定した「取締役会議事録」又は「取締役の過半数の一致を証する書面」。また、会社側から旧株主名簿管理人との契約を解除した場合には、その契約の解除の決定を証する書面としても添付を要すると解される。
(ハ)契約を証する書面
新たな株主名簿管理人との間の「委託契約書」を添付する(商登法64条)
(ニ)代理人によって申請する場合の「委任状」
④ 登録免許税
金3万円(登録免許税別表1、24、(1)ツ)
⑤ 登記期間
変更の日(新株主名簿管理人との契約の日)から本店所在地において2週間以内である。
株主名簿管理人の変更の登記 申請書 記載例
登記の事由 株主名簿管理人の変更
登記すべき事項 平成何年何月何日 株主名簿管理人○○を変更(*1)
株主名簿管理人の氏名又は名称及び住所並びに営業所
何市何丁何丁目何番何号
△△信託株式会社 本店
登録免許税 金3万円(ツ)
添付書類 定款 1通
取締役会議事録(又は取締役の過半数の一致を証する書面) 1通
株主名簿管理人との契約を証する書面 1通
委任状 1通
(*1)原則として、新株主名簿管理人との契約の日を記載する。
完了後の登記記録
株主名簿管理人の氏名 又は名称及び住所並びに営業所 |
何市何丁何丁目何番何号 ○○信託株式会社 本店
平成年月日設置 平成年月日登記 |
何市何丁何丁目何番何号 △△信託株式会社 本店
平成年月日変更 平成年月日登記 |