- 商業登記法ー4.審査請求
- 3.審査請求の手続き
- 審査請求の手続き
- Sec.1
1審査請求の手続き
■審査請求の手続き
(1) 審査請求書の提出
審査請求は、口頭でできる旨の定めはないため、原則として審査請求書(正副2通)を提供する方法による。審査請求の宛先は審査請求の相手方たる法務局長又は地方法務局長であるが、直接監督法務局又は地方法務局長に対してすることはできず、審査請求は、登記官を経由してしなければならない。(商登法143条) なお、審査請求は代理人によってすることもできるが、登記についての委任状とは別に審査請求についての委任状が必要となる。
(2) 請求期間
通常の行政処分に対する審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内(当該処分について異議申立てをしたときは、当該異議申立てについての決定があったことを知った日の翌日から起算して30日以内)にしなければならないが、商登法は147条でこれを廃除しているため、審査請求をするについての利益の存する限り、いつでもこれをすることができる。
■登記官の対応
(1) 調査
審査請求書を受け取った登記官は、審査請求の内容を調査する。
(2) 審査請求に理由があると認めるとき
次の区分に応じて、相当の処分をしなければならない。(商登法144条)
(イ)登記申請を却下した場合
登記申請を受理(登記官は自らの却下処分を取り消して登記をする。)
(ロ)登記申請を受理し、登記をした場合
商登法135条からの規定により職権抹消 をする。
(ハ)登記事項証明書の交付申請、閲覧申請の却下処分
その処分を取り消し、請求に応じる。
この処分をしようとする場合には、事案の簡単なものを除き、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に内議しなければならず、この場合は審査請求書の写しの他、審査請求に係る登記申請却下の決定書の写し、登記事項証明書、申請書の写しその他相当の処分の可否を審査するのに必要な関係書類を併せて送付する。
(3) 審査請求に理由がないと認めるとき
請求の日から3日内に意見を付して事件を監督法務局又は地方法務局の長へ送付する。(商登法145条)審査請求が不適法と考えられる場合も同様である。審査請求事件の送付をするには、送付書に意見を付し、審杳請求書のほか、審査請求に係る登記申請却下の決定書の写し、登記事項証明書、申請書の写しその他審査請求の理由の有無を審査するのに必要な関係書類を送付する。
■審査庁による審査
(1) 審査の手続き
審査請求事件の送付を受けた監督法務局又は地方法務局の長は、その事件につき審理し裁決する。審理・裁決はすべて書面審査である。(登研509号)
(2) 裁決
① 審査請求が不適法であるとき
審査請求を却下する。例えば、法律上の利益のない者が審査請求人である場合や、審査請求書の記載事項に不備があり、補正に応じない場合がこれにあたる。
② 審査請求は適法だが理由がないとき
審査請求を棄却する。登記官の処分を支持する判断である。
③ 審査請求に理由があるとき
登記官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人のほか登記上の利害関係人(登記名義人など)に通知しなければならない。(商登法146条)
登記官に命ずる処分とは、具体的には、次のとおりである。
(イ)登記官が登記申請を却下した場合
登記宮に対し登記すべき旨を命ずる。
(ロ)登記官が登記をした場合
登記官に対し、その登記の抹消を命ずる。