• 権利関係ー9.区分所有法
  • 5.復旧および建替え
  • 復旧および建替え
  • Sec.1

1復旧および建替え

堀川 寿和2021/11/18 14:44

 地震等により区分所有建物の一部が滅失した場合、「復旧を望む区分所有者」、「費用の負担等で復旧を望まない区分所有者」「復旧ではなく建替えを望む区分所有者」のそれぞれの利害が衝突することになる。そこで、これらの利害を調整するために、区分所有法では一定のルールを設けている。

復旧

(1) 小規模滅失の場合の共用部分の復旧

① 各区分所有者による復旧

 建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失(小規模滅失)したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分を復旧することができる。そして、共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を共用部分の持分の割合に応じて償還すべきことを請求することができる。


Point 共用部分の復旧の工事に着手するまでに「復旧決議」、「建替え決議」または「団地内の建物の一括建替え決議」があったときは、復旧することができない。


② 復旧決議による復旧

 小規模滅失の場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。この決議は普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)でよい。


Point 小規模滅失の場合の復旧手続については、規約で別段の定めをすることができる。


(2) 大規模滅失の場合の共用部分の復旧

① 復旧決議による復旧

 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失(大規模滅失)したときは、集会において、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。


Point 大規模滅失の場合の復旧決議の決議要件は、規約で別段の定めをすることはできない


② 区分所有権等の買取請求

 大規模滅失の場合の復旧決議があった場合において、その決議の日から2週間を経過したときは、その決議に賛成した区分所有者(決議賛成者)以外の区分所有者は、次の者に対し、建物およびその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

① 買取指定者が指定されていないとき決議賛成者の全部または一部
② 買取指定者が指定されているとき買取指定者

 なお、買取指定者とは、建物およびその敷地に関する権利を買い取ることができる者のことであり、復旧決議の日から2週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により指定することができる。


建替え

(1) 建替え決議

 集会においては、区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地もしくはその一部の土地または当該建物の敷地の全部もしくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(建替え決議)をすることができる。


Point 建替え決議の決議要件は、規約で別段の定めをすることはできない


(2) 建替え決議を会議の目的とする集会

 建替え決議を会議の目的とする集会を招集するときは、集会の招集の通知は、当該集会の会日より少なくとも2月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。

 招集の通知をするときは、議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。

① 建替えを必要とする理由
② 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持または回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む)をするのに要する費用の額およびその内訳
③ 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
④ 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額

 集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも1月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。


(3) 区分所有権等の売渡し請求

 建替え決議があったときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかった区分所有者に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。

 建替え決議に賛成しなかった区分所有者は、催告を受けた日から2月以内に回答しなければならない。そして、この回答期間内に回答しなかった区分所有者は、建替えに参加しない旨を回答したものとみなされる。

 上記の回答期間が経過したときは、次の者は、回答期間の満了の日から2月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対し、区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

① 建替え決議に賛成した各区分所有者
② 建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者
③ 買受指定者(上記①②の全員の合意により区分所有権および敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者)


【まとめ】決議要件

条 件決議事項規約による別段の定め
5分の4以上建替えできない
4分の3以上重大変更区分所有者の定数のみ、過半数まで減じることができる
管理組合の法人化できない
規約の設定・変更・廃止
専有部分の使用禁止請求訴訟
区分所有権等の競売請求訴訟
占有者に対する引渡し請求訴訟

大規模滅失の場合の復旧
過半数管理行為できる
軽微変更
行為等の停止請求(訴訟)
小規模滅失の場合の復旧の決議
5分の1以上集会の招集定数を減じることのみできる
単独保存行為できる
行為等の停止請求(訴訟外)できない
小規模滅失における共用部分の復旧できる


チェック問 区分所有法 問題

【チェック問 区分所有法 問題】

1. 構造上区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分であっても、規約で定めることにより、特定の区分所有者の専有部分とすることができる。


2. 区分所有者の共有に属さない敷地であっても、規約で定めることにより、区分所有者の団体の管理の対象とすることができる。


3. 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、規約で別段の定めがあるときを除き、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができる。


4. 集会において、管理者の選任を行う場合、規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。


5. 管理者は、少なくとも毎年2回集会を招集しなければならない。また、区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有するものは、管理者に対し、集会の招集を請求することができる。


6. 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならないが、集会の議事録の保管場所については掲示を要しない。


7. 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。


8. 管理者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではならない。


9. 他の区分所有者から区分所有権を譲り受け、建物の専有部分の全部を所有することとなった者は、公正証書による規約の設定を行うことができる。


10. 集会は、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数の同意があるときは、招集の手続きを経ないで開くことができる。


11. 管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない。また、招集通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示し、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。


12. 専有部分が数人の共有に属するときは、規約で別段の定めをすることにより、共有者は、議決権を行使すべき者を2人まで定めることができる。