- 権利関係ー9.区分所有法
- 4.管理
- 管理
- Sec.1
1管理
■管理組合
区分所有者は、管理組合を構成し、建物の管理はこの管理組合を中心になされていくことになる。
(1) 区分所有者の団体(管理組合)
区分所有者は、全員で、建物ならびにその敷地および附属施設の管理を行うための団体を構成し、区分所有法の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、および管理者を置くことができる。この「管理を行うための団体」は、一般に「管理組合」とよばれている。
一部共用部分がある場合は、これを共用すべき区分所有者で管理組合(一部管理組合)が構成され、全員の管理組合と併存することになる。
Point 区分所有者の団体(管理組合)は、法律上当然に構成されるものである。区分所有者が任意に加入する団体ではない。
(2) 管理者
共用部分等の管理は、区分所有者全員で行う。しかし、それは実際上困難であるため、区分所有者は、その代理人として管理者を選任し、管理に関する一定の行為をさせることができる。
① 管理者の選任および解任
区分所有者は、規約に別段の定めがない限り、集会の決議(区分所有者および議決権の各過半数)によって、管理者を選任し、または解任することができる。
Point1 区分所有法に、管理者の資格に関する規定はない。したがって、管理者は個人(自然人)であるか法人であるかを問わず、また、区分所有者だけでなく区分所有者以外の者を選任することもできる。
Point2 区分所有法に、管理者の任期に関する規定はない。
② 管理者の職務
管理者は、共用部分ならびに当該建物の敷地および附属施設(共用部分等)について、次の行為をする権利を有し、義務を負う。
イ) 保存行為をすること
ロ) 集会の決議を実行すること ハ) 規約で定めた行為をすること |
Point 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。したがって、その行為の効果は、規約に別段の定めがない限り、本人である各区分所有者に共用部分の持分の割合に応じて帰属する。
③ 管理所有
管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
この場合、管理者は区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。これは共用部分を管理する上での便宜上の所有であり、共用部分の変更をすることはできない。
(3) 管理組合法人
区分所有者の団体(管理組合)は法人ではないので、権利能力がなく、管理組合自身が権利義務の主体となることができない。
そこで、管理組合は、次の①および②をすることによって「管理組合法人」になることができる。
① 区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人となる旨ならびにその名称および事務所を定めること
② その主たる事務所の所在地において登記をすること |
管理組合は法人になることによって、管理組合法人名義で不動産の登記をしたり、銀行口座を保有したり、訴訟の当事者になったりすることができるようになる。
Point1 管理組合の法人化について、区分所有者の数の要件はない。したがって、すべての管理組合は、上記の手続さえとれば、法人になることができる。
Point2 管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。したがって、管理組合法人に管理者は不要であり、管理者を選任することはできない。
■規約
区分所有者は規約を定めることができる。
規約とは、区分所有者が定めた建物や敷地などの管理や使用についての決まりごとであり、たとえば、「○○マンション管理規約」という形で書面化されている。
(1) 規約の設定・変更・廃止
規約の設定、変更または廃止は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によって行う。
規約の設定、変更または廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
(2) 規約事項
① 規約事項
規約では、建物またはその敷地もしくは附属施設の管理または使用に関する区分所有者相互間の事項を定めることができる。
② 一部共用部分に関する事項についての規約
一部共用部分に関する事項のうち、区分所有者全員の利害に関係するものについては、区分所有者全員の規約で定めることができる。また、区分所有者全員の利害に関係しないものについては、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
規約事項 | 定めることができる規約 |
区分所有者全員の利害に関係する事項 | 区分所有者全員の規約 |
区分所有者全員の利害に関係しない事項 | 区分所有者全員の規約 |
一部共用部分を共用すべき区分所有者の規約 |
Point 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについても、区分所有者全員の規約で定めることができる。
ただし、このような事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更または廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の4分の1を超える者またはその議決権の4分の1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。
③ 規約の書面化
規約は、書面(または電磁的記録)によって、作成しなければならない。
(3) 公正証書による規約の設定
最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、次の①~④の事項について、規約を設定することができる。
① 規約共用部分に関する定め
② 規約敷地に関する定め ③ 専有部分と敷地利用権の分離処分ができる旨の定め ④ 敷地利用権の持分の割合 |
(4) 規約の保管・閲覧
規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者またはその代理人で規約または集会の決議で定めるものが保管しなければならない。
規約を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではならない。
規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。
Point1 規約の閲覧を請求をすることができる利害関係人とは、区分所有者、専有部分の賃借人、専有部分を取得または賃借しようとする者などである。
Point2 正当な理由があれば、規約の閲覧を拒むことができる。
Point3 規約を保管する者が、規約の保管を怠った場合や、利害関係人からの請求に対して正当な理由がないのに規約の閲覧を拒んだ場合は、20万円以下の過料に処される。
Point4 規約の保管場所を、各区分所有者に通知する必要はない。
■集会
区分所有者は、集会を開くことができる。
集会は、管理組合の最高意思決定機関であり、区分所有法は、管理に関する重要な事項については集会の決議によって決定することにしている。
(1) 集会の招集手続
① 集会の招集
イ) 管理者がいるとき
集会は、管理者が招集する。
管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない。
区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
ロ) 管理者がいないとき
管理者がないときは、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
② 召集の通知
集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかったときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。
Point 専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者1人を定めなければならない。
そして、招集の通知は、その議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の1人)にすれば足りる。
③ 招集手続の省略
集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。
(2) 議事等
① 議事
集会の議事は、この法律または規約に別段の定めがない限り、区分所有者および議決権の各過半数で決する。
Point1 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、共用部分の持分の割合(その有する専有部分の床面積の割合)による。
Point2 区分所有者および議決権の各過半数で決することを、一般に、普通決議という。それに対して、区分所有者および議決権の各4分の3以上や各5分の4以上など、特別の多数を必要とする決議は、一般に、特別決議とよばれる。
② 決議事項の制限
集会においては、招集の通知においてあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
ただし、区分所有法で特別決議が必要とされる事項を除いて、規約で別段の定めをすることができる。
③ 書面または代理人による議決権の行使
議決権は、書面で、または代理人によって行使することができる。
区分所有者は、規約または集会の決議により、書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法によって議決権を行使することができる。
④ 議長
集会においては、規約に別段の定めがある場合および別段の決議をした場合を除いて、管理者または集会を招集した区分所有者の1人が議長となる。
⑤ 議事録
議長は、書面(または電磁的記録)により、議事録を作成しなければならない。
Point 議事録が書面で作成されているときは、議長および集会に出席した区分所有者の2人がこれに署名押印しなければならない。
Point 集会の議事録の保管・閲覧については、規約の保管・閲覧と同じルールが適用される。
⑥ 書面による決議
区分所有法または規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面による決議をすることができる。
区分所有法または規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったものとみなされる。
書面による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。
(3) 事務の報告
管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
(4) 占有者の意見陳述権
区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者(専有部分の賃借人など)は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる。
Point 占有者は意見を述べることができるだけである。議決権を有するのは区分所有者のみであり、占有者が議決権を行使することはできない。