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  • Sec.1

1組織変更

堀川 寿和2022/01/25 14:09

組織変更の意義

 組織変更とは、株式会社がその組織を変更することにより合名会社、合資会社または合同会社になることおよび合名会社、合資会社または合同会社がその組織を変更することにより株式会社になることをいう(会社法226号)。なお、商業登記法で記述するが、定款の変更による持分会社の種類の変更(会社法638条)は、組織変更にはあたらない。

株式会社から持分会社への組織変更ー1

(1) 手続の流れ

 

(2) 組織変更の手続

① 組織変更計画の作成

 株式会社が持分会社となる組織変更をするためには、組織変更計画を作成しなければならない(会社法743条、7441項)。

 当該組織変更計画に定めなければならない事項は、次のとおりである(会社法7441項)。

1. 組織変更後持分会社が合名会社、合資会社または合同会社のいずれであるかの別

2. 組織変更後持分会社の目的、商号および本店の所在地

3. 組織変更後持分会社の社員についての次に掲げる事項

(イ)当該社員の氏名または名称および住所

(ロ)当該社員が無限責任社員または有限責任社員のいずれであるかの別

(ハ)当該社員の出資の価額

4. 2. 3.以外で、組織変更後持分会社の定款で定める事項

5. 組織変更後持分会社が組織変更に際して組織変更をする株式会社の株主に対してその株式に代わる金銭等(*1)を交付するときは、その金銭等についての次に掲げる事項

(イ)当該金銭等が組織変更後持分会社の社債であるときは、当該社債の種類および種類ごとの各社債の金額の合計額またはその算定方法

(ロ)当該金銭等が組織変更後持分会社の社債以外の財産であるときは、当該財産の内容および数もしくは額またはこれらの算定方法

6. 5.の場合には、組織変更をする株式会社の株主(組織変更をする株式会社を除く。)に対する5.の金銭等の割当てに関する事項

7. 組織変更をする株式会社が新株予約権を発行しているときは、組織変更後持分会社が組織変更に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる金銭の額またはその算定方法

8. 7.の場合には、組織変更をする株式会社の新株予約権の新株予約権者に対する7.の金銭の割当てに関する事項

9. 組織変更がその効力を生ずる日

(*1)ここでいう、金銭等とは、金銭その他財産のことであり、持分会社の持分は含まれない。

 

② 組織変更計画に関する書面等の備置きおよび閲覧等

 組織変更をする株式会社は、組織変更計画備置開始日から組織変更の効力発生日までの間、組織変更計画の内容その他法務省令(会施規180条)で定める事項を記載しまたは記録した書面または電磁的記録をその本店に備え置かなければならない(会社法7751項)。

 そして、組織変更をする株式会社の株主および債権者は、その営業時間内はいつでも、その閲覧または謄抄本の交付請求等をすることができる(同条3項)。

 ここでいう法務省令で定める事項とは、組織変更をする株式会社が新株予約権を発行している場合における会社法744178号に掲げる事項(新株予約権者に対して交付する金銭の額またはその算定方法および割り当てに関する事項)の相当性や、組織変更後持分会社の債務の履行の見込みに関する事項などがある。

組織変更計画備置開始日とは、次に掲げる日のいずれか早い日のことをいう(会社法7752項)。

1. 組織変更計画について、組織変更をする株式会社の総株主の同意を得た日

2. 組織変更をする株式会社が新株予約権を発行しているときにおける会社法7773項の規定による新株予約権者への通知の日または同条4項の公告の日のいずれか早い日

3. 会社法7792項の規定による債権者保護手続の公告の日または催告の日のいずれか早い日

 

③ 総株主の同意

 組織変更をする株式会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について総株主の同意を得なければならない(会社法7761項)。そして、効力発生日の20日前までに、その登録株式質権者および登録新株予約権質権者に対し、組織変更をする旨を通知または公告しなければならない(会社法77623項)。

 

④ 新株予約権者の新株予約権買取請求

 組織変更をしようとする株式会社は、効力発生日の20日前までに、その新株予約権の新株予約権者に対し、組織変更をする旨を通知または公告しなければならない(会社法77734項)。

新株予約権者は会社に対して、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる(会社法77715項)。

 新株予約権証券が発行されている新株予約権について新株予約権買取請求をしようとするときは、当該新株予約権の新株予約権者は、組織変更をする株式会社に対し、その新株予約権証券を提出しなければならない(同条6項)。

 なお、新株予約権買取請求をした新株予約権者は、組織変更をする株式会社の承諾を得た場合に限り、その新株予約権買取請求を撤回することができる(同条8項)。ただし、新株予約権の価格の決定について、効力発生日から30日以内に協調が調わず、効力発生日から60日以内に裁判所に対する新株予約権者または組織変更後持分会社から裁判所に対する価格の決定の申立てがないときは、その期間の満了後は、新株予約権者は、いつでも新株予約権買取請求を撤回することができる(会社法7783項)。また、組織変更を中止したときは、新株予約権買取請求の効力は失われる(会社法7779項)。

株式会社から持分会社への組織変更ー2

⑤ 債権者保護手続

 組織変更をする株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ知れている債権者には各別に催告をしなければならない。債権者が異議を述べることができる期間は、1か月を下ることができない(会社法7792項)。

1. 組織変更をする旨

2. 組織変更をする株式会社の計算書類に関する事項として法務省令(会施規181条)で定めるもの

3. 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

 ただし、組織変更をする株式会社が、公告方法を時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙または電子公告と定款に定めている場合において、上記の事項を官報のほか定款に定める方法により公告をするときは、知れている債権者に各別の催告をすることを要しない(同条3項)。

 一定期間内に異議を述べない債権者は、当該組織変更を承認したものとみなされる(同条4項)。

一方、期間内に異議を述べた債権者に対しては、組織変更をしても債権者を害するおそれがない場合を除き、その債権者に対し、弁済し、もしくは相当の担保を提供し、または当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない(同条5項)。

 

⑥ 株券の提出に関する公告・通知

 組織変更をする株式会社が株券発行会社である場合、全部の株式について株券を発行していない場合を除き、組織変更の効力発生日(以下、株券提出日という。)までに会社に対し株券を提出しなければならない旨を、株券提出日の1か月前までに公告し、かつその株式の株主およびその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない(会社法21915号)。

 株券発行会社に対して株券提出日までに株券を提出しない者があるときは、組織変更後持分会社は、当該株券の提出があるまでの間、組織変更によって当該株券に係る株式の株主が受けることのできる金銭等の交付を拒むことができる(同条23号)。なお、株券発行会社が発行していた株券は、株券提出日に無効となる(同条3項)。

 

⑦ 新株予約権証券の提出に関する公告・通知

 新株予約権証券または新株予約権付社債券を発行している株式会社は、組織変更の効力発生日(以下、新株予約権証券提出日という。)までに当該新株予約権証券または新株予約権付社債券を提出しなければならない旨を新株予約権証券提出日)の1か月前までに公告し、かつその新株予約権の新株予約権者およびその登録新株予約権質権者には、各別にこれを通知しなければならない(会社法29312号)。新株予約権証券提出日までに新株予約権証券を提出しない者があるときは、組織変更後持分会社は、当該新株予約権証券の提出があるまでの間、組織変更によって当該新株予約権証券に係る新株予約権の新株予約権者が交付を受けることができる金銭等の交付を拒むことができる(同条23号)。

 

 

(3) 組織変更の効果

 組織変更をする株式会社は、効力発生日に持分会社となり、組織変更計画の定めに従い、定款の変更をしたものとみなされる(会社法74512項)。

 組織変更をする株式会社の株主は、効力発生日に、組織変更計画の定めに従い、組織変更後持分会社の社員となる(会社法7453項)。組織変更をする株式会社の株主に対して、組織変更後持分会社社債を交付する旨を組織変更計画に定めた場合は、割り当てを受けた株主は効力発生日に社債権者となる(同条4項)。

 なお、組織変更をする株式会社の新株予約権は、効力発生日に消滅する(同条5項)。

 また、組織変更をする株式会社は、効力発生日を変更することができる(会社法7801項)。

この場合、組織変更をする株式会社は、変更前の効力発生日(変更後の効力発生日が変更前の効力発生日前の日である場合にあっては、その変更後の効力発生日)の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(同条2項)。

 

(4) 組織変更の登記

 組織変更をした会社は、組織変更の効力発生日から2週間以内に、その本店の所在地において、組織変更前の会社については解散の登記をし、組織変更後の会社については設立の登記をしなければならない(会社法920条)。