- 会社法ー3.持分会社
- 6.計算等
- 計算等
- Sec.1
1計算等
■会計帳簿、計算書類
(1) 会計帳簿の作成および保存
① 会計帳簿の作成
持分会社は、法務省令(会社計算規則4条、以下、会計規という。)で定めるところにより、適時に正確な会計帳簿を作成しなければならない(会社法615条1項)。
② 会計帳簿の保存
持分会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を保存しなければならない(同条2項)。
(2) 計算書類の作成および保存
① 成立時
持分会社は、法務省令(会計規70条)で定めるところによりその成立の日における貸借対照表を作成しなければならない(会社法617条1項)。
② 各事業年度
持分会社は、法務省令(会計規57条)で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表その他持分会社の財産の状況を示すために必要かつ適切なものとして法務省令(会計規71条)で定めるものをいう。)を作成しなければならない(会社法617条2項)。この計算書類は、電磁的記録をもって作成することができる(会社法617条3項)。
③ 計算書類の保存
計算書類は、電磁的記録をもって作成することができる。また、計算書類を作成した時から10年間、これを保存しなければならない(会社法617条4項)。
④ 決算公告
持分会社においては、株式会社のような決算公告の義務は課せられていない。
(3) 計算書類の閲覧、謄写請求
① 社員の閲覧、謄写請求
持分会社の社員は、当該持分会社の営業時間内は、いつでも、計算書類(電磁的記録の場合は法務省令(会施規226条23号)で定める方法により表示したもの)の閲覧または謄写の請求をすることができる(会社法618条1項)。定款で別段の定めをすることができるが、事業年度の終了時に請求することを制限する旨の定めは許されない(同条2項)。
② 債権者の閲覧、謄写請求(合同会社の特則)
合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内は、いつでも、その計算書類(作成日から5年以内のもの限る。)について、閲覧、謄写等を請求することができる(会社法625条)。
cf. 合名会社・合資会社の計算書類の閲覧・謄写請求権者には債権者は含まれていない。無限責任社員がいるからである。
■資本金の額の減少
(1) 持分会社全般
持分会社は、損失を填補するため、法務省令(会計規102条)で定める方法により算定される損失の額を限度として、その資本金の額を減少することができる(会社法620条)。
(2) 合同会社のみの特則
合同会社の場合には、損失を填補する場合のほか、出資の払戻しまたは持分の払戻しのために、資本金の額を減少することが認められる(会社法626条)。
(3) 債権者保護手続の要否
合同会社の資本金の額の減少については、会社債権者保護の見地から、債権者保護手続が要求され、この手続が終了した日に資本金の額の減少の効力が生ずるものとされている(会社法627条)。
cf. 合名会社または合資会社が資本金の額を減少する場合には、債権者保護手続をとることを要しない。
■利益の配当
(1) 社員の利益配当請求権
① 原則
持分会社の社員は、会社に対して利益の配当を請求することができる(会社法621条1項)。利益の配当を請求する方法その他利益の配当に関する事項については、定款で自由に定めることができる(同条2項)が、特に定款規定が設けられていない場合は、各社員の出資の価額に応じて配当されることになる(会社法622条1項)。
② 合同会社の特則
合同会社は、利益の配当により社員に対して交付する金銭等の帳簿価額(配当額)が当該利益の配当をする日における利益額を超える場合には、当該利益の配当をすることができず、会社は配当の請求を拒むことができる(会社法628条)。
(2) (合資会社の)有限責任社員の特則
持分会社が利益額を超える配当額を有限責任社員に交付した場合には、当該利益の配当を受けた有限責任社員は、会社に対し、連帯して当該配当額に相当する金銭を支払う義務を負う(会社法623条1項)。この責任の額についての未払分は社員としての責任の範囲に含まれることとなる(同条2項)。この会社法623条2項の規定は、合同会社の社員について適用しない(会社法630条2項)ため、実際には、合資会社の有限責任社員についての規定である。
つまり、合資会社の有限責任社員に対しては、配当金の財源規制があるということである。これに対し、無限責任社員に対しては利益がなくても配当を出しても差し支えない。なぜなら、無限責任社員は最終的に全責任を負うことになるためである。
(3) 合同会社における特則
① 利益の配当に関する責任
合同会社が会社法628条の利益の配当の制限に違反して利益の配当をした場合には、利益配当に関する業務を執行した社員は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明しない限り、合同会社に対して当該利益の配当を受けた社員と連带して、当該配当額に相当する金銭を支払う義務を負う(会社法629条1項)。この義務は、原則として免除することができないが、利益の配当をした日における利益の額を限度として当該義務を免除することに総社員の同意があればその範囲では免除することができる(同条2項)。
② 債権者による支払請求
会社法628条の規定に違反して利益額を超過する配当がされた場合においては、会社債権者は、利益の配当を受けた社員に対して配当額(当該配当額が当該債権者の合同会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができる(会社法630条2項)。
③ 欠損が生じた場合の責任
合同会社が利益の配当をした場合において、当該利益の配当をした日の属する事業年度の末日に欠損額(合同会社の欠損の額として法務省令(会計規165条)で定める方法により算定される額をいう。)が生じたときは、当該利益の配当に関する業務を執行した社員は、当該合同会社に対し、当該利益の配当を受けた社員と連帯して、その欠損額(当該欠損額が配当額を超えるときは、当該配当額)を支払う義務を負う。ただし、当該業務を執行した社員がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない(会社法631条1項)。この義務は、総社員の同意がなければ、免除することができない(同条2項)。