- 会社法ー2.株式会社
- 10.解散
- 解散
- Sec.1
1解散
■解散の意義
会社の解散とは、会社の法人格の消滅をもたらす法律事実をいう。会社は自然人と異なり、相続手続によって従前の法律関係を処理することができないため、解散によってただちに法人格を消滅させることができず、後始末のための清算手続に入り、その清算手続が結了してはじめて法人格が消滅する。解散は会社が法人格を失う原因に過ぎず、会社は解散後でも清算の目的の範囲内で引き続き権利能力を失わない。この清算目的で存続する会社が清算会社である。会社が解散したときは、合併と破産手続開始の決定の場合を除き、清算手続に入る。合併による解散の場合は、解散会社の権利義務は包括的に存続会社または新設会社に承継されるのであって解散会社は清算手続を要せず、合併の効力発生と同時に消滅する。また破産手続開始決定の場合は破産手続によるのであって、会社法の清算手続によらない。
■解散原因
(1) 解散原因
株式会社の解散原因には、次のものがある。
① 定款で定めた存続期間の満了(会社法471条1号)
② 定款で定めた解散の事由の発生(会社法471条2号)
③ 株主総会の特別決議(会社法471条3号)
④ 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)(会社法471条4号)
⑤ 破産手続開始の決定(会社法471条5号)
⑥ 休眠会社のみなし解散(会社法472条)
⑦ 会社法824条1項または833条1項の規定による解散を命ずる裁判
解散を命ずる裁判には、会社の解散命令と、会社の解散の訴えがある。
(イ)解散命令
会社の解散命令とは、次に掲げる場合において裁判所が公益を確保するため会社の存立を許すことができないと認めるときに、法務大臣または株主、社員、債権者その他の利害関係人の申立てにより、会社の解散を命ずることをいう(会社法824条1項)。
・ 会社の設立が不法な目的に基づいてされたとき
・ 会社が正当な理由なく成立後1年以内にその事業を開始せず、または引き続き1年以上その事業を休止したとき
・ 業務執行取締役、執行役または業務を執行する社員が、法令もしくは定款で定める会社の権限を逸脱しもしくは濫用する行為または刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的にまたは反復して当該行為をしたとき
(ロ)解散の訴え
会社の解散の訴えとは、次に掲げる場合において、やむを得ない事由があるときは、一定の要件を満たす株主に会社の解散の訴えを提起する権利を認めたものである(会社法833条1項)。
・ 株式会社の業務執行において著しく困難な状況に至り、当該株式会社に回復することができない損害が生じ、または生ずるおそれがあるとき
・ 株式会社の財産の管理または処分が著しく失当で、当該株式会社の存立を危うくするとき、なお、持分会社の社員は、やむを得ない事由がある場合は訴えをもって持分会社の解散を請求することができる(会社法833条2項)。
株式会社の解散の訴えを提起することができるのは、総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除<。)の議決権の10分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主または発行済株式(自己株式を除<。)の10分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主である(会社法833条1項)。
(2) 休眠会社のみなし解散
① 休眠会社の定義
設立されたが、事業活動が停止している会社を休眠会社という。
② 休眠会社のみなし解散の制度
営業を廃止した、実体のない株式会社を商業登記記録上、解散したものとみなす制度が休眠会社のみなし解散である。
③ 休眠会社のみなし解散手続
最後の登記後12年を経過した会社(休眠会社)は、法務大臣が休眠会社に対し2か月以内に法務省令(会施規139条)で定めるところによりその本店の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その2か月の期間の満了の時に、解散したものとみなされる。ただし、当該期間内に当該休眠会社に関する登記がされたときは、この限りではないため、解散したものとはみなされない(会社法472条1項)。
④ 登記所による通知
法務大臣による公告があったときは、登記所は休眠会社に対して通知を発しなければならない(会社法472条2項)。
■解散の効果
合併および破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除き、解散した株式会社は、清算手続に入る(会社法475条1号)。
会社の権利能力の範囲は清算の目的の範囲内に縮小され、清算結了に至るまで存続することとなる(会社法476条)。取締役は解散によってその権限を失い、代わりに清算人が清算株式会社の業務を執行することとなる(会社法482条1項)。
なお、存続期間の満了、定款で定めた解散事由の発生、株主総会の特別決議または合併により解散した場合は、一定期間内に解散の登記を申請することを要するが、破産手続開始の決定により解散した場合は破産手続開始の登記が裁判所書記官の嘱託によってされ(破産法257条1項)、解散命令または解散判決により解散した場合は裁判所書記官によって解散登記が嘱託され、休眠会社のみなし解散の場合は解散登記が登記官の職権でされる。