- 会社法ー2.株式会社
- 6.新株予約権
- 新株予約権
- Sec.1
1新株予約権
■総説
(1) 意義
新株予約権とは、株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利である(会社法2条21号)。新株予約権を有する者(新株予約権者)が株式会社に対しこれを行使したときは、会社は新株予約権者に対し株式を発行し、またはこれに代えて会社の有する自己株式を移転する義務を負う。
募集株式の募集と同様に株主に割当てによる場合と株主以外の第三者に割当てる場合とがある。ただ、募集株式の募集と違う点は有償による発行のみならず無償による発行も可能であることである。その後、新株予約権が行使されることによって株式の発行または自己株式の移転が行われ、新株予約権者は株主となる。なお、新株予約権者が新株予約権の行使により取得することとなる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式を除く。)の総数を控除して得た数を超えてはならない(会社法113条4項)。
(2) 新株予約権の趣旨、機能
新株予約権とは、文字通り将来株主になる権利のことである。新株予約権者は、新株予約権の行使と共に事前に決められた価格の払い込みをすることによって株主となる。たとえば、「新株予約権行使に際して出資される財産の価格」を2000円として新株予約権を無償で発行した場合、仮にその会社の株価が後に1株20万円と高騰した場合でも、1株あたり2000円の払い込みをすることによって株主になることが可能である。通常無償による新株予約権の発行はストックオプションとして利用されることが多い。ストックオプションとは、企業の士気を高めるために従業員や役員等に発行される新株予約権である。事前に無償で自社の新株予約権を与えておき、「みんなで頑張って働いて会社を発展させて、株価が上がったら大儲けできますよ~」といういわば「にんじん作戦」である。
■新株予約権の発行ー1
(1) 新株予約権の発行手続
新株予約権の発行手続は潜在的な募集株式の実質を有するので、募集株式の発行手続に準じる。
(2) 募集事項の決定機関
株式会社は、その発行する新株予約権の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権について募集事項を定めなければならない(会社法238条1項)。
募集事項を決定する機関は、以下の通りである。
なお、種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部または一部が譲渡制限株式であるときは、募集事項の決定は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の特別決議がなければ、その効力を生じない(会社法238条4項、324条2項3号)。
募集事項の決定機関(株主割当以外の場合)
公開会社 |
原則 |
取締役会(会社法238条2項、240条1項) |
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有利発行の場合 |
原 則 |
株主総会特別決議 (会社法238条2項、240条1項、309条2項6号)) (*3)(*4) |
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例 外 |
株主総会特別決議により、取締役会に委任できる。 (会社法239条1項、309条2項6号) (*1)(*2)(*3)(*4) |
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公開会社以外 |
原則 |
株主総会特別決議(会社法238条2項、309条2項6号) |
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例外 |
株主総会特別決議により、取締役(取締役会設置会社においては、取締役会)に委任できる(会社法239条1項、309条2項6号)。 (*3)(*4) |
(*1)この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない(会社法239条1項各号)。
① その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集新株予約権の内容および数の上限
② ①の募集新株予約権につき金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
③ ①の募集新株予約権につき金銭の払込みを要することとする場合は、払込金額の下限
(*2)この委任決議は、割当日が決議の日から1年以内の日である募集についてのみ、その効力を有する(会社法239条3項)。
(*3)有利発行に該当するのは、次に掲げる場合である(会社法238条3項各号、239条2項各号)。
① 募集新株予約権を無償で発行する場合において、金銭の払込みを要しないとすることが募集新株予約権の割当てを受ける者に特に有利な条件であるとき
② 募集新株予約権を有償で発行する場合において、当該払込金額(またはその下限)が募集新株予約権の割当てを受ける者に特に有利な金額であるとき
(*4)有利発行に該当する場合には、取締役は、株主総会において、有利な条件または有利な金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない(会社法238条3項、239条2項)。
募集事項の決定機関(株主割当の場合)
公開会社 |
原 則 |
取締役会(会社法241条3項3号) |
公開会社以外 |
原 則 |
株主総会特別決議(会社法241条3項4号、309条2項6号) |
例 外 |
定款により、取締役(取締役会設置会社においては、取締役会)に委任できる(会社法241条3項1号2号)。 |
(*)株主割当の方法により募集新株予約権の発行をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、定款に別段の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の特別決議がなければ、募集新株予約権の発行の効力は生じない(会社法322条1項5項、324条2項4号)。
(3) 募集事項
① 募集事項
募集事項は次のとおりである。募集事項は、その募集ごとに、均等に定めなければならない(会社法238条5項)。
(a) 募集新株予約権の内容および数 (b) 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨 (c) (b)以外の場合には、募集新株予約権の払込金額またはその算定方法 (d) 募集新株予約権を割り当てる日(割当日) * 新株予約権特有の募集事項である (e) 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日 (f) 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、会社法676条各号に掲げられた事項 (g) (f)の場合に、新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての新株予約権買取請求等の方法につき別段の定めをするときは、その定め |
② 株主割当特有の募集事項
株式会社が、株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与える場合は、上記募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない(会社法241条1項)。また、株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集新株予約権の割当てを受ける権利を有するが、当該株主が割当てを受ける募集新株予約権の数に1に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする(同条2項)。
(a) 株主に対し、申込みをすることにより当該株式会社の募集新株予約権(種類株式発行会社にあっては、その目的である株式の種類が当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨 (b) 募集新株予約権の引受けの申込みの期日 |
③ 新株予約権の内容
また、上記①の新株予約権の内容の具体的な中身は次のとおりである(会社法236条1項各号)。
(a) 新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあって、株式の種類および種類ごとの数)またはその数の算定方法 (b) 新株予約権の行使に際して出資される財産の価額またはその算定方法 (c) 金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨ならびに当該財産の内容および価額 (d) 新株予約権を行使することができる期間 (e) 新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金および資本準備金に関する事項 (f) 譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨 (g) 新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、その具体的内容(取得条項付新株予約権) (h) 当該株式会社が、合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転をする場合に、吸収合併存続株式会社、新設合併設立株式会社、吸収分割承継株式会社、新設分割設立株式会社、株式交換完全親株式会社、株式移転設立完全親会社となる会社の新株予約権を新株予約権者に交付することとするときは、その旨およびその条件 (i) 新株予約権を行使した新株予約権者に交付する株式の数に1株に満たない端数がある場合において、これを切り捨てるものとするときは、その旨 (j) 新株予約権に係る新株予約権証券を発行することとするときは、その旨 (k) (j)の場合に、新株予約権が記名式と無記名式の転換の請求の全部または一部をすることができないこととするときは、その旨 |
④ 取締役の報酬等である新株予約権の内容の特則
金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、定款または株主総会の決議(指名委員会等設置会社においては報酬委員会の決定)に従い、取締役(指名委員会等設置会社においては執行役または取締役)の報酬等として新株予約権を発行する場合は、「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額またはその算定方法」〔上記③(b)の事項〕を当該新株予約権の内容とすることを要しない(会社法236条3項前段・4項)。この場合は、当該株式会社は、次の事項を当該新株予約権の内容としなければならない(会社法236条3項後段・4項)。
(l) 取締役(指名委員会等設置会社においては執行役または取締役)の報酬等としてまたは取締役の報酬等をもってする払込みと引換えに当該新株予約権を発行するものであり、当該新株予約権の行使に際してする金銭の払込みまたは上記③(c)の財産の給付を要しない旨 (m) 報酬等として新株予約権を付与された取締役または執行役(取締役または執行役であった者を含む。)以外の者は、当該新株予約権を行使することができない旨 |
(4) 引受けの申込みをしようとする者に対する通知
株式会社は、募集に応じて募集新株予約権の引受けの申込みをしようする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない(会社法242条1項各号)。
1. 株式会社の商号 2. 募集事項 3. 新株予約権の行使に際して金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所 4. 1.から3.に掲げるもののほか、法務省令(会施規54条)で定める事項 |
なお、この通知は、金融商品取引法2条10項に規定する目論見書を引受けの申込みをしようとしている者に交付している場合その他募集新株予約権の引受けの申込みをしようとする者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令(会施規55条)で定める場合には不要である(会社法242条4項)。
(5) 引受けの申込み
募集に応じて募集新株予約権の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付し、または株式会社の承諾を得て、次に掲げる事項を電磁的方法により提供しなければならない(会社法242条2項3項)。
1. 申込みをする者の氏名または名称および住所 2. 引き受けようとする募集新株予約権の数 |
(6) 募集新株予約権の割当て(株主割当て以外の場合)
株式会社は、申込者の中から募集新株予約権の割当を受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集新株予約権の数を定めなければならない。この場合において、株式会社は、当該申込者に割り当てる募集新株予約権の数を、上記(5)2.の数よりも減少することができる(会社法243条1項)。なお、以下に掲げる場合においては、募集新株予約権の割当ての決定は、株主総会の特別決議(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によらなければならない(会社法243条2項各号、309条2項6号)。ただし、定款に別段の規定を設けることも可能である(会社法243条2項ただし書)。
1. 募集新株予約権の目的である株式の全部または一部が譲渡制限株式である場合 2. 募集新株予約権が譲渡制限新株予約権である場合 |
株式会社は、割当日の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集新株予約権の数を通知しなければならない(会社法243条3項)。
■新株予約権の発行ー2
(7) 総数引受契約
募集新株予約権を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、上記(4)の通知、(5)の申込み、(6)の割当ての手続はいずれも不要となる(会社法244条1項)。
総数引受契約を締結する場合において、次に掲げるときは、株式会社は、株主総会の特別決議(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該契約の承認を受けなければならない(会社法244条3項各号、309条2項6号)。
1. 募集新株予約権の目的である株式の全部または一部が譲渡制限株式であるとき 2. 募集新株予約権が譲渡制限新株予約権であるとき |
ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない(会社法244条3項ただし書)。
(8) 公開会社における募集事項の割当て等の特則
公開会社は、募集新株予約権の割当てを受けた申込者または募集新株予約権の総数を引き受けた者(以下、引受人とする。)について、①当該引受人(その子会社等を含む。)がその引き受けた募集新株予約権に係る交付株式の株主となった場合に有することとなる最も多い謙決権の数の、②当該引受人がその引き受けた募集新株予約権に係る交付株式の株主となった場合における最も多い総株主の議決権の数に対する割合が2分の1を超える場合には、割当日の2週間前までに、株主に対し、当該引受人(以下、特定引受人という。)の氏名または名称および住所、当該特定引受人について、その引き受けた募集新株予約権に係る交付株式の株主となった場合に有することとなる最も多い議決権の数その他の法務省令で定める事項を通知しなければならない(会社法244条の2第1項各号)。ただし、当該特定引受人が当該公開会社の親会社等である場合または株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与えた場合は、この限りでない(会社法244条の2第1項ただし書)。交付株式とは、募集新株予約権の目的である株式、募集新株予約権の内容として一定の事由が生じたことを条件として新株予約権を取得するのと引換えに交付する株式、その他募集新株予約権の新株予約権者が交付を受ける株式として法務省令で定める株式をいう(会社法244条の2第2項)。
この通知は、公告をもってこれに代えることができる(会社法244条の2第3項)。しかし、株式会社がこれらの事項について割当日の2週間前までに金融商品取引法第4条第1項から第3項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、当該通知は、することを要しない(会社法244条の2第4項)。そして、総株主(当該株主総会において議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の10分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が当該通知または公告の日から2週間以内に特定引受人(その子会社等を含む。)による募集新株予約権の引受けに反対する旨を公開会社に対し通知したときは、当該公開会社は、割当日の前日までに、株主総会の決議によって、当該特定引受人に対する募集新株予約権の割当てまたは当該特定引受人との間の総数引受契約の承認を受けなければならない(会社法244条の2第5項)。この株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない(会社法244条の2第6項)。
ただし、当該公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、当該公開会社の事業の継続のため緊急の必要があるときは、当該契約の承認を受けることを要しない(会社法244条の2第5項ただし書)。
(9) 募集事項の通知または公告
① 株主割当以外の場合(第三者割当)
公開会社が取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、割当日の2週間前までに、当該募集事項を、株主に通知または公告しなければならない(会社法240条2項、3項)。
株主が有する募集新株予約権の発行の差止請求権を行使する機会を与えるためである。
ただし、次に掲げる場合は、募集事項の通知または公告を要しない。
1. 非株式会社の場合 2. 株主割当による場合 3. 公開会社であっても、有利発行により募集新株予約権の発行を行う場合 4. 一定の期日までに金融商品取引法所定の届出をしている場合、その他法務省令(会施規53条)で定める場合 |
② 株主割当の場合
株主割当の方法により募集新株予約権の発行を行う場合には、株主に引受けの申込みの機会を保障するため、引受けの申込みの期日の2週間前までに、割当てを受ける権利を有する株主(当該株式会社を除く。)に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない(会社法241条4項)。
1. 募集事項 2. 当該株主が割当てを受ける募集新株予約権の内容および数 3. 募集新株予約権の引受けの申込みの期日 |
株主割当の方法により募集新株予約権の発行をする場合において、割当てを受ける権利を有する者が、引受けの申込みの期日までに申込みをしないときは、募集新株予約権の割当てを受ける権利を当然に失う(会社法243条4項)。
(10) 募集新株予約権にかかる払込み
募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要するものとされた場合には、新株予約権者は、次に掲げる日までに株式会社が定めた銀行等の払込取扱場所において、それぞれの募集新株予約権の払込金額の全額を払い込まなければならない(会社法246条1項)。
払込期日が定められている場合: |
払込期日 |
払込期日が定められていない場合: |
新株予約権の権利行使期間の初日の前日 |
ただし、新株予約権者は、株式会社の承諾を得て、払込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付し、または当該株式会社に対する債権をもって相殺することができる(会社法246条2項)。払込期日までに、募集新株予約権の払込金額の全額の払込みをしないときは、新株予約権者は、その募集新株予約権を行使することができない(会社法246条3項)。この場合、新株予約権の行使をすることができなくなるため、当該新株予約権は消滅する(会社法287条)。
なお、募集株式の発行等と異なり、金銭以外の財産の給付がされる場合も特に募集事項の決定の際にその旨を決議しておく必要はなく、検査役の調査も要求されていない。
(11) 効力発生日
募集株式の発行等とは異なり、募集新株予約権を発行する場合には、募集事項として割当日を定めなければならず、新株予約権の申込者は割当日において募集新株予約権者となる(会社法245条1項)。
(12) 新株予約権証券
① 意義
新株予約権証券とは、新株予約権を表章する有価証券である。新株予約権を発行する株式会社は、新株予約権の内容として定めることによって、株券発行会社か否かにかかわらず、新株予約権証券を発行することができる。
② 新株予約権証券の発行
会社は、新株予約権の発行ごとに新株予約権証券を発行するか否かを決定することができる(会社法238条1項1号、236条1項10号)。そして、証券発行新株予約権を発行した日以後遅滞なく、当該証券発行新株予約権に係る新株予約権証券を発行しなければならない(会社法288条1項)。ただし、株式会社は、新株予約権者から請求がある時までは、新株予約権証券を発行しないことができる(会社法288条2項)。新株予約権証券は、記名式と無記名式の2種類が存在し、証券発行新株予約権の新株予約権者は、新株予約権の内容として、転換を請求することができないと定めている場合を除き、いつでも記名式の新株予約権証券を無記名式とし、無記名式の新株予約権証券を記名式とすることを請求することができる(会社法290条)。
(13) 新株予約権原簿
① 意義
株式会社は、新株予約権を発行した日以後遅滞なく、新株予約権原簿を作成しなければならない(会社法249条1項)。
新株予約権原簿の記載(記録)事項は無記名新株予約権、無記名新株予約権付社債、それ以外の新株予約権によって異なっている(会社法249条1項2項3項)。
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記載(記録)事項 |
1. 無記名式新株予約権 (会社法249条1項1号) |
・新株予約権証券の番号 ・無記名式新株予約権の内容および数 |
2. 無記名式新株予約権付社債 (会社法249条1項2号) |
・新株予約権付社債の番号 ・無記名式新株予約権付社債に付された新株予約権の内容および数 |
3. 1. 2.以外の新株予約権 (会社法249条1項3号) |
・新株予約権者の氏名または名称および住所 ・新株予約権の内容および数 ・新株予約権を取得した日 ・証券発行新株予約権(新株予約権証券が発行されているものに限る)に係る新株予約権証券の番号 ・証券発行新株予約権付社債(新株予約権付社債券が発行されているものに限る)に係る新株予約権付社債券の番号 |
② 新株予約権原簿の管理
(a) 管理
株式会社が新株予約権を発行している場合、株主名簿管理人に株主名簿および新株予約権原簿の管理をさせることができる(会社法251条)。
(b) 新株予約権原簿の備置きおよび閲覧等
株式会社は、新株予約権簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければならず、株主および債権者は、株式会社の営業時間内はいつでも、また当該株式会社の親会社社員は権利行使のため必要があるときは、裁判所の許可を得て、その閲覧または謄写の請求ができる。これらの場合には、請求の理由を明らかにしなければならず、株式会社は、会社法252条3項に該当する場合を除き、請求を拒むことはできない。また同項に該当する場合、裁判所は許可することができない(会社法252条1項2項3項4項5項)。
③ 新株予約権原簿記載事項を記載した書面の交付等
新株予約権者(証券発行新株予約権および証券発行新株予約権付社債に付された新株予約権は除く。)は、株式会社に対し、当該新株予約権者についての新株予約権原簿に記載され、もしくは記録された新株予約権原簿記載事項を記載した書面の交付または当該新株予約権原簿記載事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる(会社法250条1項4項)。株主名簿記載事項証明書の新株予約権バージョンである。
(14) 新株予約権の登記
株式会社が新株予約権を発行した場合は、割当日から、2週間以内にその本店の所在地において、新株予約権の登記をしなければならない(会社法911条3項12号、915条1項)。
登記事項は次のとおりである(会社法911条3項12号)。
① 新株予約権の数 ② 会社法236条1項1号から4号まで(③に規定する場合にあっては、2号を除く。)に掲げる事項〔新株予約権の内容〕 (a) 当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類および種類ごとの数)またはその数の算定方法(会社法236条1項1号) (b) 当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額またはその算定方法(同項2号) (c) 金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨ならびに当該財産の内容および価額(同項3号) (d) 当該新株予約権を行使することができる期間(同項4号) ③ 会社法236条3項各号に掲げる事項を定めたときは、その定め〔上場会社の取締役の報酬等として新株予約権を発行する場合の新株予約権の内容〕 (a) 取締役の報酬等としてまたは取締役の報酬等をもってする払込みと引換えに当該新株予約権を発行するものであり、当該新株予約権の行使に際してする金銭の払込みまたは1項3号〔上記②(c)〕の財産の給付を要しない旨(会社法236条3項1号) (b) 定款または株主総会の決議による会社法361条1項4号または5号ロに掲げる事項についての定めに係る取締役(取締役であった者を含む。)以外の者は、当該新株予約権を行使することができない旨(同項2号) ④ ②および③に掲げる事項のほか、新株予約権の行使の条件を定めたときは、その条件 ⑤ 会社法236条1項7号および238条1項2号に掲げる事項 (a) 当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、次に掲げる事項〔詳細は省略〕(会社法236条1項7号) (b) 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨(会社法238条1項2号) ⑥ 会社法238条1項3号に掲げる事項〔募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権1個と引換えに払い込む金銭の額をいう。)またはその算定方法〕を定めたときは、募集新株予約権の払込金額(同号に掲げる事項として募集新株予約権の払込金額の算定方法を定めた場合において、登記の申請の時までに募集新株予約権の払込金額が確定していないときは、当該算定方法) |