• 権利関係ー8.借地借家法
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  • Sec.1

1借家

堀川 寿和2021/11/18 13:25


「借家」に関する規定は、「借地」に関する規定に比べ、民法の修正部分は必要最小限になっている。宅建試験の出題においては、民法の賃貸借の内容も併せて問われるケースがあるので注意が必要である。


学習のポイント

1. 借地借家法の適用対象を把握する。

2. 借家権の存続に対する保護と終了させる方法を覚える。

3. 借家権の譲渡・転貸・承継について整理しておく。


借地借家法の適用対象(建物の賃貸借)

借地借家法の借家関係の規定は、建物の賃貸借に適用される。



Point1 借地借家法は建物の使用貸借(無償の貸借)には適用されない


Point2 借地借家法の規定は、たとえば、ひと夏だけ別荘を貸すような場合のように、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用されない。したがって、一時使用目的の建物の賃貸借には民法の賃貸借の規定のみが適用される。


建物賃貸借の期間

 建物の賃貸借の場合は、必ず期間を定める必要はなく、期間を定めないこともできる。ただし、期間を定める場合は、期間を1年以上としなければならない。期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる。

 また、民法の賃貸借の存続期間の規定(最長50年)は、建物の賃貸借には適用されない。したがって、建物の賃貸借では、50年を超える存続期間を定めても有効となる。



1存続期間を60年と定めた場合存続期間は60年となる。
2存続期間を6ヵ月と定めた場合期間の定めがない賃貸借となる。
3存続期間を定めなかった場合期間の定めがない賃貸借となる。


更新

 期間の定めがある場合、その期間が満了すると賃貸借が終了するので、その更新が問題となる。


(1) 合意による更新

 当事者は、原則として、合意により賃貸借を更新することができる。


(2) 法定更新

 一定の場合に、更新の合意がなくても自動的に賃貸借が更新される場合がある。


① 更新拒絶の通知がない場合の法定更新

 期間の定めがある建物の賃貸借について、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知(または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知)をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる。ただし、期間だけは同一条件ではなく、その期間は定めがないものとなる。


Point1 法定更新後は、期間は定めがないものとなる。期間だけは従前と同一条件ではないので注意。


Point2 期間の定めがある建物の賃貸借を終了させたい場合、各当事者は、「期間満了の1年前から6月前の間」に上記の通知(更新拒絶の通知)をしなければならない。この期間に更新拒絶の通知をしなければ、原則として、賃貸借は期間の満了により終了しない。


Point3 建物の賃貸人による更新拒絶の通知は、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。



Point4 建物の賃貸人が更新拒絶の通知をする場合の正当の事由の有無は、以下の事情等を総合的に考慮して判断される。したがって、単に立退料を支払えば、これをもって、当然には正当事由があると認められるわけではない


1建物の賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情
2建物の賃貸借に関する従前の経過
3建物の利用状況および建物の現況
4建物の賃貸人が建物の明渡しの条件としてまたは建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出


② 更新拒絶の通知後の法定更新

 更新拒絶の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる。ただし、この場合も、期間だけは同一条件ではなく、その期間は定めがないものとなる。