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1借地借家法

堀川 寿和2021/11/18 11:17


 他人の土地や建物を賃貸借等で利用する場合においては、一般的に、不動産の所有者である貸主の立場が強くなるため、対等な当事者を前提とする民法のルールをそのまま適用すれば、借りる側に不利な内容の契約になりやすい。しかし、土地や建物の貸し借りは、借主の生活に直結することもあるので、民法のルールのままでは借主にとって特に不利となる部分について、この「借地借家法」で修正が加えられている。したがって、同じ問題に関する規定が民法と借地借家法の両方に定められている場合は、借地借家法の規定が優先して適用されることになる。
 借地借家法の内容は、借地関係と借家関係に分かれる。


学習のポイント

1. 借地借家法の適用対象を把握する。

2. 借地契約期間と更新の方法をおぼえる。

3. 建物の滅失についての規定を理解する。

4. 建物を売却する際の処理方法を理解する。


借地借家法の適用対象(借地権)

 借地借家法の借地関係の規定は、借地権に適用される。

 借地権とは、建物所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。

 また、借地権を設定した場合の貸主(地主)を借地権設定者(借地権者に対して借地権を設定している者)といい、借主(借地人)を借地権者(借地権を有する者)という。



Point 「借地借家法」は以下の場合は適用されない。

① 建物所有以外(竹木・工作物・駐車場・資材置場)を目的とする地上権または土地賃借権

② 使用貸借


借地権の存続期間

 借地権の存続期間は、30年でなければならない。30年未満の存続期間を定めた場合や、存続期間を定めなかった場合は、存続期間は自動的に30年とされる。

 ただし、契約で30年より長い期間を定めたときは、その定めた期間となる。


1存続期間を定めなかった場合存続期間は30年となる。
2存続期間を20年と定めた場合存続期間は30年となる。
3存続期間を40年と定めた場合存続期間は40年となる


Point1 当初の存続期間についての規定は、建物の種類・構造によって異なることはない。


Point2 民法では、地上権の場合も土地の賃借権の場合も、存続期間は必ずしも定める必要はなく、最短期間に関する制限はなかったが、借地借家法では、借地権の存続期間をなるべく長くさせようという趣旨から、最短でも30年の存続期間を必ず定めることになっている。


賃貸借(民法)の存続期間

契約期間最長期間50年
最短期間制限なし
更新・解約
の申し入れ
期間の定めが
ある場合

原則として、期間満了によって終了する。
ただし、合意により更新することができる。
期間満了後に賃借人が賃借物の使用・収益を継続し、賃貸人がこれを知りながら異議を述べない場合、契約を更新したものと推定される(黙示の更新)。更新後は期間の定めがない賃貸借となる。
期間の定めが
ない場合

当事者は、いつでも解約の申入れできる。
解約の申入れの日から
① 土地の賃貸借の場合=1年
② 建物の賃貸借の場合=3か月
を経過することによって賃貸借は終了する。


借地権の更新

 当初の存続期間が満了すると、借地契約が終了するので、その更新が問題となる。


(1) 合意による更新

 当事者は借地契約を合意により更新することができる。

 借地契約を更新する場合においては、その期間は、次の期間でなければならない。

借地権の設定後の最初の更新20年
借地権の設定後の2回目以降の更新10年

 上記の期間よりも短い存続期間を定めた場合や、存続期間を定めなかった場合は、存続期間は自動的に上記の期間とされる。

 ただし、契約で上記の期間より長い期間を定めたときは、その定めた期間となる。



Point 合意による更新の場合、借地上に建物が存在しているか否かにかかわらず、更新することができる。


(2) 法定更新

 借地上に建物が存在していれば、更新の合意がなくても、借地契約が自動的に更新される場合がある。これを法定更新という。

 次の①②いずれかに該当する場合は、建物がある場合に限り、存続期間のほかは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる。

 なお、存続期間については同一の条件で更新されず、次の期間となる。

借地権の設定後の最初の更新20年
借地権の設定後の2回目以降の更新10年


① 請求による更新

 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したとき。



② 継続使用による更新

 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するとき。



Point1 請求による更新の場合も、継続使用による更新の場合も、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、契約は自動的に更新されない。ただし、この異議は、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。


Point2 借地権設定者が異議を述べる場合の正当の事由の有無は、以下の事情等を総合的に考慮して判断される。したがって、単に立退料を支払えば、これをもって、当然には正当事由があると認められるわけではない

1借地権設定者および借地権者が土地の使用を必要とする事情
2借地に関する従前の経過
3土地の利用状況および建物の現況
4借地権設定者が借地権者に対して提供する財産上の給付の申出