• 不動産登記法ー13.総論
  • 11.登記名義人の氏名・名称・住所の変更・更正登記
  • 登記名義人の氏名・名称・住所の変更・更正登記
  • Sec.1

1登記名義人の氏名・名称・住所の変更・更正登記

堀川 寿和2022/01/19 10:44

意義

 登記名義人の氏名(名称)又は住所の変更の登記とは、権利の主体に変更はないが、登記名義人の氏名(名称)又は住所に変更が生じた場合に、登記記録上の氏名(名称)・住所を変更後の氏名(名称)・住所変更する登記である。また、最初の登記の時点で誤った氏名(名称)又は住所で登記をしてしまった場合には、その更正登記をすることになる。ここでいう登記名義人とは、現在の名義人であって、過去の登記名義人は含まないため、すでに登記名義人でなくなった者の氏名(名称)や住所に変更等が生じても、もはや登記名義人の氏名(名称)又は住所の変更又は更正登記をすることはできない。


  甲土地の登記記録


 甲土地の現在の所有者Aが大阪市から東京都に引っ越した場合、所有権登記名義人の住所変更登記をすることができる。一方、過去の登記名義人甲の住所等に変更があっても、もはやその変更登記はできない。


登記名義人の氏名、名称又は住所の変更の登記の必要性

(1) 原則

 上記の事例で、現在の登記名義人であるAが甲土地の所有権をBに売却した場合、登記義務者となるAの印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)を提供する必要があるが、Aの印鑑証明書には、現在住民登録をしている東京の住所が記載されている。もし、仮にAが登記記録上の住所の変更をしていなければ、申請情報の内容と登記記録の記載(住所)が一致せず、不動産登記法25条1項7号の却下事由に該当し、AからBへの所有権移転登記は却下されてしまう。したがって、前提としてAの住所変更登記が必要となる。

① 所有権移転登記

 AからBへの売買等による所有権移転登記をする場合、Aの住所等に変更があるときは、所有権移転登記の前提として、Aの住所等の変更登記を必要とする。

② 所有権抹消登記

 所有権の登記を抹消する場合、所有権登記名義人の住所等に変更があるときは、抹消登記の前提として住所等の変更登記を必要とする。

③ 仮登記の本登記

 仮登記の本登記に際して、仮登記名義人の住所等に変更があるきは、本登記の前提として仮登記名義人の住所等の変更登記を必要とする。

④ 持分移転登記

 例えば、A・B共有不動産につき、「共有物分割」「持分放棄」を登記原因としてA持分をBに移転する場合、Aの住所等に変更がある場合には、持分移転登記の前提としてAの住所等の変更登記をする必要がある。


(2) 例外

 次の場合は、氏名等の変更登記を省略して、直ちに新たな登記を申請することができる。

相続登記

 登記名義人の氏名等の変更登記をしないうちに登記名義人が死亡した場合には、変更を証する情報を提供すれば登記名義人表示変更登記を省略して相続登記をすることができる。登記名義人表示更正登記をすべき場合も同様である。(M32.11.21民刑2009号)

所有権以外の権利の登記(買戻権の登記も含む)

 所有権以外の権利の登記(買戻権の登記も含む)を抹消する場合において、抹消される登記の名義人(登記義務者)の現在の氏名等と登記記録上の氏名等が符合しないときは、登記の抹消の申請情報と併せて氏名等の変更を証する情報を提供すれば、登記の抹消の前提として登記名義人の氏名等の変更の登記をすることを要しない。(S31.9.20民甲2202号)登記の抹消の前提として氏名等の変更の登記をしても、すぐに抹消されてしまうからである。


  甲土地の登記記録

 上記の事例で、乙区1番の抵当権を抹消する際、抵当権者Xの住所又は氏名が変更されている場合であっても、変更登記を省略して、いきなり1番抵当権の抹消登記をすることができる。

cf 一方、設定者Aの氏名又は住所に変更が生じている場合には、1番抵当権の抹消登記の前提として、「2番所有権登記名義人住所(又は氏名)変更をしなければならない。


所有権の仮登記・買戻権の抹消

 仮登記名義人(所有権を含む)の氏名・名称・住所に変更が生じた場合でも、変更を証する情報を提供することによって仮登記名義人の住所等の変更登記を省略して仮登記の抹消を申請することができる。(S32.6.28民甲1249号)買戻権の登記の抹消の場合も同じである。(登研460号)


同一住所への移転の場合

 数回の住所移転を経た結果、登記記録に記録された住所と同一の住所になったときは、登記名義人表示変更登記の申請は必要がない。(登研379号)


登記申請手続

(1) 申請人

 登記名義人の氏名もしくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、登記名義人が単独で申請することができる。(不登法64条1項)


(2) 登記の目的

・何番所有権登記名義人住所変更(更正)

・何番所有権登記名義人氏名変更(更正)

・何番所有権登記名義人名称変更(更正)


(3) 原因

・自然人が住所を移転した場合  「年月日住所移転」

・会社が本店を移転した場合   「年月日本店移転」

・住居表示の実施がされた場合  「年月日住居表示実施」

・自然人の氏名が変わった場合  「年月日氏名変更」

・会社の商号が変わった場合   「年月日商号変更」


(4) 添付情報

 登記名義人の氏名等の変更の登記を申請するときは、登記原因証明情報として、氏名等の変更を証する市区町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報を提供することを要する。

 登記名義人の氏名等の変更の登記は、登記名義人による単独申請によるため、登記の正確性を確保する必要があり、公務員が職務上作成した情報の提供が要求される。

 住民票コ一ドや会社法人等番号を記載した場合は、住所証明書(住民票の写しや会社の登記事項証明書)の提出を省略することができる。

•自然人の住所移転の場合    住民票の写し

•会社の本店移転の場合     会社の登記事項証明書

•住居表示の実施の場合     住居表示実施証明書や住居表示実施の記載のある住民票

•氏名の変更の場合       戸籍全部事項証明書及び住民票の写し

•商号の変更の場合       会社の登記事項証明書


(5) 登録免許税

 登記名義人の氏名・名称・住所変更・更正登記の登録免許税は、不動産1個につき1000円である。(別表一、一、(十四))

 住居表示の実施による登記名義人の住所の変更の登記の場合は、申請情報と併せて住居表示の実施を証する市区町村長の書面を提供したときは、非課税となる。(登録免許税法5条4号)

 したがって、住所移転及び氏名変更による所有権登記名義人氏名住所変更登記を同一申請情報でする場合の登録免許税は、同じ変更登記の区分に該当するので、不動産1個につき1000円で足りる。


先例(S42.7.26民三794号)
氏名の更正と住所の変更のように、変更と更正の登記を1つの申請情報で申請するときは、更正の登記と変更の登記では登記の区分が異なると解されるので、不動産1個につき金2000円となる。