• 不動産登記法ー13.総論
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1添付情報

堀川 寿和2022/01/18 14:51

 登記を申請するときは、申請人は申請情報(申請書)と併せて法定の添付情報(添付書面)を登記所に提供することを要する。(不登令7条)

登記原因証明情報

 権利の登記を申請するときは、申請人は申請情報と併せて、登記原因を証する情報(登記原因証明情報)を提供することを要する。

(1) 登記原因証明情報の意義

 登記原因証明情報とは、登記すべき物権変動の原因となった法律行為又はその他の法律事実の存在並びにこれにより権利が変動したことを確認することができる情報である。


(2) 登記原因証明情報を提供する趣旨

 申請された登記について、申請どおりの権利変動が生じているのかを登記官に形式的に審査させて、不実の登記の出現を防止するために提供を要求するものである。


(3) 登記原因証明情報に記載すべき内容

 登記原因証明情報には最低限次の事項が記録されていることを要する。

① 対象の不動産

② 当事者

③ 契約等の物権変動の原因

④ 物権変動が生じたこと及びその時期

 上記の要件を満たしていれば、例えば売買契約書等を登記原因証明情報として提供することができるが、実務上は契約書とは別に報告的な登記原因証明情報を作成して提供することが多い。


(4) 単独申請による登記の際に添付する登記原因証明情報

 単独申請による登記を申請する場合は、原則として、登記原因証明情報として、市区町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報を提供することを要する。登記権利者等が単独で申請することができる登記については、登記義務者が登記の申請に関与しないため、登記の正確性は確保されない。そのため、登記原因証明情報として公務員が職務上作成した情報を提供させることによって登記の真正を担保しようとするものである。

① 相続による所有権移転登記

 相続を証する市区町村長その他の公務員が職務上作成した情報及びその他の登記原因を証する情報

② 合併による権利の移転の登記

 合併を証する登記官その他の公務員が職務上作成した情報

③ 登記手続を命ずる確定判決に基づいて単独で申請する場合

 執行力のある確定判決の判決書の正本

④ 登記名義人の氏名、名称又は住所の変更の登記

 氏名もしくは名称又は住所について変更があったことを証する市区町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報


(5) 登記原因証明情報の提供を要しない場合

① 所有権の保存の登記(敷地権付区分建物について転得者の名義で申請する場合を除く)

② 仮処分の登記に後れる第三者の登記の単独抹消

 その他、混同による登記の抹消を申請する場合で、混同が生じたことが登記記録から明らかであるときは.登記原因証明情報の提供を省略することができる(質疑登研690号)


登記識別情報


(1) 登記識別情報の通知

① 登記識別情報が通知される場合

 登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。(不登法21条)一般的には、所有権保存登記や所有権移転登記、所有権以外の権利の設定登記の際には、申請人自らが登記名義人となる場合に該当するため、登記識別情報の通知がされる。また、A単独名義で登記された所有権保存登記又は所有権移転登記をA・B共有名義に更正する場合や、A・B共有名義で登記された所有権保存登記をB単独名義とする所有権更正登記をする場合の申請人Bには登記識別情報が通知される。(登記実務Q&A)


先例(H18.2.28民二523号)
被相続人が登記名義人となる所有権の移転登記を相続人が申請した場合の登記識別情報は、被相続人のための登記識別情報が相続人に通知される。


② 登記識別情報が通知されない場合

(イ)申請人自らが登記名義人とならない場合

 その登記をすることによって申請人自らが登記名義人とならない場合等には、登記識別情報の通知はなされない。例えば、「抵当権の債権額の変更登記」や「抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更登記」のように、単に登記された事項を変更する場合や、所有権抹消登記や抵当権抹消登記のように既に登記された事項を抹消するような場合には、新たな登記名義人は登場しないため、登記識別情報は通知されない。

(ロ)申請人となっていない場合

 共有物の保存行為として共有者の1人が登記の申請をした場合、実際に申請人となっていない他の共有者に対しては登記識別情報の通知はされない。例えば、AからBCへの相続による所有権の移転の登記を、Bが保存行為として申請した場合、登記が完了したときはBに対して登記識別情報が通知されるが、申請人となっていないCに対しては通知されない。


③ 登記識別情報の通知を要しない場合(不登規64条1項)

(イ)登記識別情報の通知を受けるべき者があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合

 一括申請をする場合には、各不動産ごとに通知の要否を申出ることができる。

(ロ)オンラインで通知を受ける場合において、申請人が30日以内に登記識別情報をダウンロードしないとき

(ハ)書面で通知を受ける場合において、登記完了の時から3か月以内に登記識別情報を記載した書面を受領しない場合

(ニ)登記識別情報の通知を受けるべき者が官庁又は公署である場合

 もっとも官庁又は公署があらかじめ登記識別情報の通知を希望する旨の申出をした場合を除く。


先例(H17.8.26民二1919号)
抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす変更の登記をした抵当権についてその抵当権の登記の抹消を申請する場合に提供すべき登記識別情報については、抵当権の設定の登記がされた際に通知された登記識別情報のみで足りる。

⇒ 及ぼす変更の登記の際には、登記識別情報の通知はされていないからである。

④ 登記識別情報の通数等

(イ)不動産ごと

 例えば、甲土地と乙土地につき、AからBへの所有権移転登記が一括申請でなされた場合には、登記名義人となったBに登記識別情報が通知されることになるが、甲土地乙土地各別に1通ずつ通知されることになる。

(ロ)申請人ごと

 例えば、AからB・C(持分2分の1ずつ)への所有権移転登記がなされると、B及びCに各別に1通ずつ登記識別情報が通知されることになる。


⑤ 登記識別情報の通知の相手方

 登記識別情報は、原則として登記名義人となった申請人に対して通知されるが、代理人等に対して通知される場合もある。

(イ)法定代理人

 登記権利者の法定代理人が登記を申請した場合には、その法定代理人に対して登記識別情報が通知される。(不登規62条1項1号)例えば、未成年者を登記権利者とする登記を法定代理人が登記義務者と共に申請したような場合である。

(ロ)法人の代表者

 株式会社等の法人が登記名義人となる登記が完了したときは、その法人の代表者に対して登記識別情報が通知される。(不登規62条1項2号)

(ハ)登記権利者の相続人

 登記権利者の相続人が申請したときは、実際に登記を申請した相続人に登記識別情報が通知される。

(ニ)委任を受けた代理人

 登記識別情報の通知を受けるための特別の委任を受けた者がいるときは、その代理人に対して通知することができる。(不登規62条2項)登記申請の代理をした司法書士が登記識別情報の通知についても委任を受けている場合である。


⑥ 登記識別情報の通知の方法

(イ)書面申請の場合

 登記識別情報も書面で交付される。ただ、郵送での交付を求めることも可能である。

(ロ)オンライン申請の場合

 登記官が登記識別情報を送信し、申請人(登記権利者)が登記識別情報をダウンロードする。この際、登記識別情報を第三者に読み取られてはいけないので、暗号化などの措置とられる。ただ、登記識別情報を記載した書面を送付の方法により交付してほしい旨の申出をすることができる。(H20.1.11民二57号)

(2) 登記義務者の登記識別情報

① 意義

 登記権利者と登記義務者の共同申請による登記を申請するときは、申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供することを要する。(不登法22条)


② 提供させる趣旨

 登記識別情報は、登記名義人となった者に対して登記官から直接通知されるため、その者がその後に登記義務者となる登記を申請する際にそれを提供させることによって、登記義務者(登記名義人)本人が登記を申請しているということを確認するためである。つまり、登記義務者の本人確認のために提供させるのである。


③ 登記識別情報を提供すべき場合

(イ)原則

 登記権利者と登記義務者の共同申請による登記を申請するときは、申請情報と併せて、登記義務者の登記識別情報を提供することを要する。(不登法22条)

(ロ)例外

 次の場合は、登記権利者と登記義務者の共同申請ではないが、登記識別情報を提供することが要求される。(不登令8条)

a) 共有物分割禁止の定めによる権利の変更の登記

 共有者全員の登記識別情報を提供する。

b) 所有権の保存の登記の抹消

 保存登記の名義人の登記識別情報を提供する。

c) 抵当権の順位の変更の登記

 申請人全員の登記識別情報を提供する。

d) 共有根抵当権の優先の定めの登記

 共有者全員の登記識別情報を提供する。

e) 信託法3条3号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記

 委託者兼受託者の登記識別情報を提供する。

f) 仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消

 仮登記を受けた際の登記識別情報を提供する。

④ 登記識別情報の提供の方法

(イ)書面申請の場合

 登記識別情報を記載した書面を登記所に提供する。

(ロ)オンライン申請の場合

 登記識別情報もオンラインで提供する。

 *なお、オンライン申請の特例方式で申請する場合も、登記識別情報は必ずオンラインで提供する必要がある。


先例(S37.12.29民甲3422号)
A・B共有(持分各2分の1)とする所有権の移転登記が甲区3番でなされた後、共有物分割を原因としてB持分をAに移転する旨の登記が甲区4番でなされた場合、その後AがCに対して所有権移転登記を申請するときは、Aの甲区3番と甲区4番の登記識別情報を提供することを要する。


先例(S40.10.2民甲2852号)
A単有名義とする所有権移転登記が甲区3番でされた後、錯誤を原因としてA・Bの共有名義(持分各2分の1)とする更正登記が甲区3番付記1号でなされた場合、Bが登記義務者となって登記を申請する際には、甲区3番付記1号の登記識別情報を提供することを要する。


先例(S34.5.12民甲929号)
破産管財人が破産財団に属する不動産を任意売却したことによる所有権移転登記を申請する場合、申請情報と併せて登記義務者たる破産者の登記識別情報を提供することを要しない。


登研(質疑登研606号)
相続財産管理人が裁判所の許可を得て相続財産に属する不動産を売却し、その所有権移転登記を申請する場合、申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供することを要しない。


(3) 登記識別情報に関する証明の請求

 登記名義人又はその相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、登記識別情報が有効であることの証明その他の登記識別情報に関する証明を請求することができる。(不登令22条1項)この証明の請求は、オンライン又は書面の方法でする。(不登規68条3項)

① 登記識別情報が有効であることの証明請求の場合

 登記識別情報の有効証明請求をするときは、証明請求情報と併せて登記識別情報を提供することを要する。(不登規68条2項)

② その他の登記識別情報に関する証明を請求する場合

 不通知の証明、失効の証明等を請求する場合には、登記識別情報の提供は不要である。


(4) 登記識別情報の失効の請求

 登記識別情報の通知を受けた登記名義人又はその相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、登記識別情報について失効の申出をすることができる。(不登規65条)この失効の申出は、オンライン又は書面の方法でする。(不登規65条3項)

 この失効の申出をする際には登記識別情報の提供を要しない


(5) 登記識別情報を提供できない場合

事前通知

 申請人が登記識別情報を提供すべき申請をする場合において、その提供をすることができないときは、登記官は登記義務者に対し、申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思慮するときは一定の期間内にその旨の申出をすべき旨を通知しなければならない。(不登法23条1項前段)


(イ)事前通知の方法

 登記の申請が書面申請でなされた場合でも、オンラインの方法で申請された場合でも、事前通知は郵便によってなされる。オンラインの方法で事前通知をすることはできず、登記義務者の登記記録上の住所に宛てて本人限定郵便等で発送される。なお、登記義務者が申し出た別の住所に発送することはできない。


(ロ)事前通知の相手方

 原則として、登記義務者本人に対して事前通知を発する。

・例外1.未成年者が登記義務者となる登記について、親権者が未成年者を代理して、申請した場合

     ⇒ 親権者に対して事前通知を発する。

・例外2.会社が登記義務者となる登記

     ⇒ 申出があればその会社の代表者の個人の住所に宛てて事前通知を発することもできる。申出がなければ、会社の本店に宛てて発する。

(ハ)真実である旨の申出

a) 申出をする期間

 登記官からの事前通知がされた場合、登記義務者が一定の期間内に申出が真実である旨の申出をすることによって、登記が実行されることになる。

通常の場合 ⇒ 登記官が事前通知を発した日から2週間(不登規70条8項)

登記義務者の住所が外国にある場合 ⇒ 登記官が事前通知を発した日から4週間

(同条ただし書)

b) 申出の方法

 登記がオンラインの方法で申請された場合 ⇒ 申出もオンラインによることを要する。

(不登規70条5項1号)

 登記が書面で申請された場合 ⇒ 登記官から送られてきた通知書に申請の内容が真実である旨を記載、記名し、申請書又は委任状に押したのと同一の印鑑を押して登記所に提出する。(不登規70条5項2号)


c) 申出をする者

・登記義務者が未成年者である場合

 未成年者自らが登記を申請し、未成年者に事前通知がされたとき ⇒ 未成年者

法定代理人が未成年者を代理して登記を申請し、法定代理人に事前通知がされたとき

⇒法定代理人

※ ただし、この場合でも、申出期間内に未成年者が成年に達した場合には、未成年者も可。

・登記義務者が会社等の法人である場合 ⇒ 当該法人の代表者

・申出をする前に登記義務者が死亡した場合 ⇒相続人全員(登記義務者の相続人全員の相続を証する情報等を提供)


d) 事前通知の再発送

 事前通知書が受取人不明を理由に返送された場合において申出期間満了前に申請人から事前通知書の再発送の申出があったときは、その申出に応じて差支えない。

(ニ)前住所に対する通知

a) 意義

(原則)

申請人が登記識別情報を提供すべき申請をする場合において、その提供をすることができないときに、①その登記の申請が所有権に関するものである場合で、かつ、②登記義務者の住所について変更又は更正の登記がされている場合には、登記官は、登記義務者の登記記録上の前の住所に対しても、当該申請があった旨を通知しなければならない。(不登法23条)



上記3番付記1号のような住所変更登記がされた後、登記識別情報を提供せずにAからBへの売買による所有権の移転の登記の申請がされたとき、登記官はAの現在の住所(東京)に宛てて事前通知を発するほか、前の住所(大阪)に宛てても通知を発することを要する。

(例外)

次の場合には、前住所への通知は必要がない。(不登規71条2項)

1. 登記義務者の住所についての変更(更正)の登記原因が、行政区画もしくはその名称又は字もしくはその名称についての変更又は錯誤もしくは遺漏である場合(1号)ex 市町村合併等

2. 登記の申請の日が、登記義務者の住所についてされた最後の変更(更正)の登記の申請に係る受付の日から、3か月を経過している場合(2号)

3. 登記義務者が法人である場合(3号)

4. 資格者代理人による本人確認情報の内容により、申請人が登記義務者であることが確実であると認められる場合(4号)

b) 通知方法

 前住所に対する通知は、転居届が出されていても転送されない郵便物として、「転送不可」と明記した書面を送付してする。

資格者代理人による本人確認情報の提供制度

(イ)意義

 申請人が登記識別情報を提供すべき申請をする場合において、その提供をすることができないときであっても、当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から当該申請人が登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるときは、事前通知を省略することができる。(不登規23条4項1号)

(ロ)要件

a) 登記義務者等に登記識別情報の提供ができない正当な理由があること

b) 登記申請が、登記の申請の代理を業とすることができる代理人(資格者代理人)によってされること

c) 登記官が、資格者代理人から、登記義務者等が本人であることを確認するために必要な情報(本人確認情報)の提供を受けたこと

d) 登記官が、本人確認情報の内容を相当と認めたこと

(ハ)資格者代理人による本人確認情報の内容

 登記官が資格者代理人から提供を受ける本人確認情報の内容は、次に掲げる事項を明らかにするものでなければならない。(不登規72条1項)

a) 資格者代理人が申請人(申請人が法人の場合は代表者又はこれに代わるべき者)と面談した日時、場所及びその状況

b) 資格者代理人が申請人の氏名を知り、かつ、当該申請人と面識があるときは、当該申請人の氏名を知り、かつ、当該申請人と面識がある旨及びその面識が生じた経緯。

 申請人の氏名を知り、かつ、当該申請人と面識があるときとは、次に掲げるときのうちいずれかとする。(不登準則49条1項 )

1. 資格者代理人が、当該登記の申請の3か月以上前に当該申請人について、資格者代理人として本人確認情報を提供して登記の申請をしたとき

2. 資格者代理人が当該登記の申請の依頼を受ける以前から当該申請人の氏名及び氏名を知り、かつ、当該申請人との間に親族関係、1年以上にわたる取引関係その他の安定した継続的な関係の存在があるとき

c) 資格者代理人が申請人の氏名を知らず、又は当該申請人と面識がないときは、申請の権限を有する登記名義人であることを確認するために当該申請人から提示を受けた書類の内容及び当該申請人が申請の権限を有する登記名義人であると認めた理由。

面識のない登記義務者の本人確認をする方法(不登規72条2項)


1号書類
(顔写真付き法的証明書類)

いずれか1以上の提示

・運転免許証
・個人番号カード
・旅券等
・在留カード
・特別永住者証明書
・運転経歴証明書

2号書類
(顔写真のない法的証明書類)

いずれか2以上の提示
・国民健康保険
・健康保険
・船員保険
・後期高齢者医療もしくは介護保険の被保険者証
・健康保険日雇特例被保険者手帳
・国家公務員共済組合もしくは地方公務員共済組合の組合員証
・私立学校教職員共済制度の加入者証
・国民年金手帳
・児童扶養手当証書
・特別児童扶養手当証書
・母子健康手帳
・身体障害者手帳
・精神障害者保健福祉手帳
・療育手帳又は戦傷病者手帳(氏名、住所、生年月日の記載があるもの)
3号書類2号書類のうちいずれか
     +
官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに準ずるもの(ex写真入りの社員証や私立学校の学生証)であって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか1以上

*有効期間(有効期限)のある書類については、資格者代理人が提示を受ける日において、有効なものに限る。

(面識がある場合)


(面識がない場合)


公証人による本人確認認証制度

 申請人が正当な理由により登記識別情報を提供することができない場合において、申請書等について公証人から当該申請人が登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、登記官がその内容を相当と認めるときは、事前通知を省略することができる。(不登法23条4項2号)


印鑑証明書

(1) 独立の添付情報となる印鑑証明書

 書面によって登記を申請する場合、申請人は、法務省令で定める場合を除き、申請書又は司法書士への委任状に記名押印し、その押した印鑑に関する証明書(印鑑証明書)を提供することを要する。

 申請を受け付けた登記官は、申請書又は委任状に押された印鑑の印影と、印鑑証明書により証明された印影を照合し、一致していることを確認することによって、登記義務者本人が登記の申請に直接関与しているということを確かめるのである。もし、一致していなければ申請は却下されることになる。

 この印鑑証明書は、記名押印した者の住所地の市区町村長又は登記官が作成したものであることを要する。

申請人が自然人の場合⇒市区町村長が作成した印鑑証明書

申請人が会社等の法人である場合⇒登記官が作成した印鑑証明書


(2) 印鑑証明書の提供の要否

① 原則

 申請人又はその代表者もしくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請書又は委任状に記名押印しなければならず、この場合、申請書又は委任状には、原則として、その記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。

② 例外(法務省令で定める場合)

 以下の場合には、印鑑証明書の添付を要しない。

(イ)官公署が登記の嘱託をする場合

(ロ)申請を受ける登記所が、添付すべき印鑑に関する証明書を作成すべき登記所と同一であって、法務大臣が指定した登記所以外のものである場合

(ハ)公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合

(ニ)裁判所によって選任された者がその職務上行う申請の申請書に押印した印鑑に関する証明書であって、裁判所書記官が最高裁判所規則で定めるところにより作成したものが添付されている場合

(ホ)法21条本文の規定により登記識別情報の通知を受けることとなる申請人

(ヘ) 申請人が以下のa b c dのいずれにも該当しない場合

a) 所有権の登記名義人(所有権に関する仮登記の登記名義人を含む)であって,次に掲げる登記を申請するもの

ⅰ) 当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記

ⅱ) 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記

ⅲ) 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消

ⅳ) 自己信託の方法によってされた信託による権利の変更の登記

ⅴ) 仮登記の抹消

b) 所有権の登記名義人であって、法第22条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記又は更正の登記を申請するもの

c) 所有権以外の権利の登記名義人であって、法22条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの

d) 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第22条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が信託法第3条第3号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記を申請するもの


(3) 他の添付情報の申請を担保する印鑑証明書

① 意義

 登記原因について第三者が許可、同意又は承諾したことを証する情報を記載した書面、その他申請情報と併せて提供しなければならない同意又は承諾を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、その作成者が記名押印しなければならず、この場合、当該書面には、原則として、その記名押印した者の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。

 他の添付情報の一部としての印鑑証明書の添付を要する場合は、以下のとおりである。

(イ)仮登記義務者の承諾書に添付する印鑑証明書 (仮登記権利者が単独で仮登記を申請する場合)

(ロ)仮登記名義人の承諾書に添付する印鑑証明書(登記上の利害関係人が単独で仮登記の抹消を申請する場合)

(ハ)登記原因についての第三者の承諾書等に添付する印鑑証明書

(ニ)登記上の利害関係人の承諾書に添付する印鑑証明書(S31.11.2民甲2530号)

(ホ)戸籍謄抄本及び遺言書以外の相続証明情報に添付する印鑑証明書

 ただし、公正証書として作成された承諾書等の正本を添付するときは、印鑑証明書の添付を要しない。

② 例外

 以下の場合には、同意証明情報・承諾証明情報等への印鑑証明書の添付は不要となる。

(イ)同意又は承諾を証する情報を記載した書面が官公署の作成に係る場合

(ロ)申請を受ける登記所が、添付すべき印鑑に関する証明書を作成すべき登記所と同一であって、法務大臣が指定した登記所以外のものである場合

(ハ)公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合

(4) 印鑑証明書の有効期間の有無

① 独立の添付情報となる印鑑証明書⇒作成後3か月以内の制限あり

② 他の添付情報の申請を担保する印鑑証明書⇒有効期間の定めなし。


先例(S33.8.27民甲1738号)
在外日本人が登記義務者として登記を申請する場合、本人が署名した委任状と当該署名が本人の署名であることを証明した当該居住国の公証人の署名証明書を添付する。また、外国文字をもって表示された書面については、訳文を記載した書面をも添付するのが相当である。


先例(H2. 4.18民三1494号)
この署名証明書は、作成後3か月以内のものでなくても差し支えない。


先例(S34.11.24民甲8525号)
外国人が登記義務者として登記申請をする場合には、その者の所属国大使等が、申請書又は委任状の署名が本人であることの証明書を発給したときは、その証明書をもって印鑑証明書に代えることができる。


先例(S48.11.17民甲8525号)
この場合も、署名証明書は作成後3か月以内のものであることを要しない。