- 不動産登記法ー13.総論
- 1.登記申請手続
- 登記申請手続
- Sec.1
1登記申請手続
■登記の種類
(1) 主登記と付記登記
主登記とは、独立の順位番号を付してなされる登記である。一方、付記登記は、主登記の順位番号に付記して「付記何号」という枝番号を付してなされる登記である。
登記は、原則として主登記の形式でなされ、付記登記は法律上特別に認められた場合の例外的な登記である。
主登記による登記 | 付記登記による登記(不登規則3条) |
・ 抹消登記(甲区・乙区を問わず)
・ 登記事項全部の抹消回復登記 ・ 所有権を目的とする処分制限の登記 (差押え・仮差押・仮処分) ・ 敷地権である旨の登記 (所有権・地上権・賃借権を問わず) ・ 順位変更の登記 ・ 所有権を目的とする根抵当権の分割譲渡の登記 ・ 不動産工事の先取特権の保存の登記 ・ 信託法第31条第2項の規定による委付の登記 ・ 1号仮登記された所有権の移転・移転請求権仮登記 | ・ 登記名義人の表示変更・更正の登記
・ 指定根抵当権者・債務者の合意の登記 ・ 根抵当権の分割譲渡をした場合においてなされる 原根抵当権極度額の減額の登記 ・ 根抵当権共有者の優先の定めの登記 ・ 根抵当権の極度額の変更・更正登記 ・ 根抵当権の元本確定登記 ・ 登記上の利害関係人の承諾のある又は利害関係人のいない場合の権利の変更・更正登記 ・ 登記事項の一部が抹消されている場合においてする抹消回復登記 ・ 所有権以外の権利を目的とする権利の登記 (地上権を目的とする抵当権・賃借権設定) ・ 所有権以外の権利を目的とする処分制限の登記 (差押え・仮差押・仮処分) ・ 抵当権の処分の登記 (譲渡・放棄・順位譲渡・順位放棄・転抵当権) ・ 所有権以外の権利の移転登記 ・ 共同抵当権の次順位者の代位の登記 ・ 抵当証券交付又は作成の登記 ・ 買戻特約の登記 ・ 買戻権の移転の登記 ・ 権利消滅の定めの登記 ・ 2号仮登記された所有権の移転・移転請求権仮登記 ・ 債権の分割による抵当権の変更登記 |
(2) 本登記と仮登記
本登記とは、対抗力を有する終局的な登記である。通常、登記といえば本登記のことを指す。
一方、仮登記とは、本登記をなし得るだけの実体法上又は手続法上の要件が備わっていない場合に、将来それらの要件が備わった際になされる本登記のために、あらかじめその順位を保全する目的でなされる予備的な登記である。仮登記は、順位保全の効力を有するが対抗力はなく、将来本登記がなされて初めて対抗力が生ずる。
■登記の効力
登記には、次の効力がある。
① 対抗力
不動産に関する物権変動があった場合、その登記をすれば、その物権変動について第三者に対抗(主張)することができる。これを登記の対抗力という。
② 権利推定力
「権利推定力」とは、登記があれば、その記載どおりの実体的権利関係が存在するであろうという推定を生じさせる効力をいう。
③ 形式的確定力
「形式的確定力」とは、登記がある以上、たとえその登記が無効であったとしても、何人もこの登記を無視して行動することができないという効力である。よって、第三者が勝手にした無効な登記であっても、これを抹消しない限りは、形式的に矛盾する登記はできないことになる。
④ 公信力
登記の公信力とは、権利に関する登記について、登記されたとおりの実体上の権利関係が存在しない場合であっても、その登記を信頼した第三者を保護するために、登記どおりの実体関係があるのと同様の法律的効果を生じさせる効力をいう。しかし、わが国では、登記に公信力は認められていないため、ニセの登記を信頼して不動産を購入したとしても、権利を取得することはできない。
■登記能力
(1) 意義
登記能力とは、不動産登記記録に権利の登記名義人として記録され得る能力のことを指す。
(2) 死者名義での登記
生前に有効に権利を取得していれば、死者を登記名義人とする登記をすることも可能である。
(3) 胎児名義での登記
登記実務上、胎児名義での相続又は遺贈の登記も可能である。(M31.10.19民刑1406号)
(4) 権利能力なき社団・財団名義での登記
権利能力なき社団又は財団名義での登記は認められていない。したがって、次のいずれかの方法で登記をすることになる。
① 代表者個人名義(最S47.6.2)
② 構成員全員の共有名義(S28.12.24民甲2523号)
③ 代表者以外の特定の構成員の個人名義(最H6.5.31)
先例 | (S36.7.21民三625号) |
権利能力なき社団の代表者である旨の肩書付の個人名義での登記は認められない。 |
⇒ ex「○○自治会会長 甲野太郎」
先例 | (S31.6.13民甲1317号) |
権利能力なき社団を抵当権の債務者とする登記は、認められる。 |
⇒ 登記名義人となるわけではなく、抵当権の債務者は一登記事項に過ぎないからである