• 不動産登記法ー12.区分建物に関する登記
  • 2.区分建物に関する登記の制限
  • 区分建物に関する登記の制限
  • Sec.1

1区分建物に関する登記の制限

堀川 寿和2022/01/18 14:13

建物のみ又は敷地権のみを目的とする権利の登記の可否

 建物につき敷地権の登記、土地につき敷地権たる旨の登記がなされて一体化が公示されたときは、以後は原則として建物又は土地の登記記録には、建物のみ又は敷地権のみを目的とする権利の登記はすることができない。分離処分禁止に抵触する登記をすることはできないためである。


敷地権のみの移転登記の制限

(1) 原則

 敷地権である旨の登記をした土地は、原則として敷地権の移転の登記等をすることができない。(不登法73条2項)一体性の原則に反する無効な処分だからである。


(2) 例外

① 時効・収用を原因とする移転登記

 区分所有法22条1項が禁止する分離処分とは、意思表示による権利変動を指すため、専有部分のみ又は敷地のみを「時効」や「収用」により取得することは可能である。しかしこの場合でも、敷地権である旨の登記がされたまま移転登記をすることはできないため、その前提として建物の表示の変更登記により敷地権の表示の登記及び敷地権である旨の登記を抹消したうえで、土地のみの移転登記をする必要がある。

② 敷地権が生じた日より前の日を原因日付とする仮登記

 区分建物に敷地権が発生する前に、区分建物のみ又は土地のみの所有権が移転していた場合には、区分建物のみを目的とした所有権の移転の仮登記又は土地の所有権の移転の仮登記をすることができる。(不登法73条2項ただし書) しかし、本登記をするためには、その前提として建物の表示の変更登記により敷地権の表示の登記及び敷地権である旨の登記を抹消する必要がある。

③ 敷地権の対象が地上権又は賃借権である場合

 地上権又は賃借権が敷地権となっている場合、分離処分が禁止されるため、専有部分とは別にその地上権や賃借権のみの移転登記をすることはできない。しかし土地の所有権移転登記はすることができる。専有部分と一体化しているのは、地上権又は賃借権であり所有権については分離処分が禁止されないからである。


専有部分のみの所有権移転の制限

(1) 原則

 敷地権付区分建物には当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記をすることができない。(不登法73条3項)一体性の原則に反するからである。


(2) 例外(敷地権が生じた日より前の日を原因日付とする仮登記)

 ただし「当該建物のみの所有権についての仮登記であって、当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない(不登法73条3項ただし書)とされているため、建物につき敷地権が生じる前に、建物の所有権に関する仮登記原因が生じていたときは、建物のみの所有権に関する仮登記をすることができる。仮登記原因は、1号、2号を問わない。