• 不動産登記法ー10.処分制限の登記
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1仮処分の登記

堀川 寿和2022/01/18 12:50

仮処分の意義

 仮処分には、執行官保管の仮処分や、建築禁止の仮処分、仮の地位の保全の仮処分など、さまざまな種類のものがあるが、登記手続上で問題となるのは処分禁止の仮処分である。以下、処分禁止の仮処分について記述する。

処分禁止の仮処分手続

「処分禁止の仮処分」とは、債務者が目的不動産の譲渡、担保権・用益権の設定などの処分をすることを禁止する内容の仮処分をいう。


(1) 処分禁止の仮処分の機能

① 登記請求権保全機能

 仮処分債権者の有する登記請求権を保全する機能である。これによって仮処分権利者は、仮処分に抵触する譲渡などの処分行為を否定して、自己の登記請求権を保全することができる。

② 当事者恒定の機能

 もう一つは、本案訴訟の被告を仮処分債務者に恒定する機能である。例えば、真の所有者が所有権登記名義人に対し所有権移転登記の抹消を求めて提訴する場合に、被告の変動を防止するために処分禁止の仮処分が利用される。これによって訴え提起後の権利の承継人に対し、参加承継・引受承継の手続きを採る必要がなくなり、当初の被告人を相手に訴訟を継続すれば判決の効力を承継人にも及ぼしていけることになる。


(2) 処分禁止の仮処分手続き

 処分禁止の仮処分も、仮差押えと同様に、裁判所の「決定」でなされる。この仮処分命令の執行も、処分禁止の仮処分の登記をする方法によってなされる。この登記も差押え、仮差押え場合と同様に、裁判所書記官が嘱託する。

(3) 仮処分の効力

 処分禁止の仮処分の効力も相対的無効である。すなわち当事者間では有効だが、仮処分債権者に対抗することができない。


不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の登記の種類

 処分禁止の仮処分命令がされた場合、①処分禁止仮処分の登記だけがされる場合と、②処分禁止仮処分の登記とともに保全仮登記がされる場合の2つのパターンがある。