- 不動産登記法ー8.仮登記
- 2.仮登記された権利の処分の登記
- 仮登記された権利の処分の登記
- Sec.1
1仮登記された権利の処分の登記
仮登記上の権利も処分することができ、その場合、以下の態様でその仮登記上の権利の移転等の登記をすることができる。
① 仮登記された所有権(1号仮登記)の移転 (以下、パターン①という。)
② 仮登記された所有権(1号仮登記)の移転予約 (以下、パターン②という。) ③ 仮登記された所有権移転請求権(2号仮登記)の移転 (以下、パターン③という。) ④ 仮登記された所有権移転請求権(2号仮登記)の移転予約(以下、パターン④という。) |
■1号仮登記された所有権の移転(パターン①)
(事例)甲が乙に不動産を売買したが、必要書類が添付できなかったため、1号仮登記で順位を保全した。その後、乙がこの1号仮登記上の権利を丙に売却。乙の権利が仮登記である以上、丙が取得できるのはやはり仮登記の権利にとどまる。
(完了後の登記記録)
その後、丙が本登記を取得するまでの流れ
不動産の所有権は甲から乙、乙から丙へと2段階で移転しているので、まずは甲から乙への所有権移転仮登記について乙を権利者とする本登記を申請し、次いで乙から丙への所有権移転仮登記について丙を権利者とする本登記をすることになる。
甲区2番の本登記によって、まず乙は対抗力のある所有権を取得した。
↓ そして
■1号仮登記所有権の移転請求権仮登記(パターン②)
(事例)甲から乙に所有権移転仮登記がなされた後、乙・丙間でその不動産について売買予約がなされた。この場合乙から丙に「売買予約」を登記原因とする1号仮登記所有権の移転請求権仮登記を申請することができる。
(完了後の登記記録)
その後、丙が本登記を取得するまでの流れ
不動産の所有権は甲から乙、乙から丙へと2段階で移転しているので、まずは甲から乙への所有権移転仮登記について乙を権利者とする本登記を申請し、次いで完全な所有者となった乙に対して丙が予約完結権行使の意思表示をして、丙を権利者、乙を義務者とする甲区3番の本登記をすることになる。
(完了後の登記記録)
■2号仮登記された権利の移転(パターン③)
(事例)甲乙間で売買予約がなされたので、甲から乙への所有権移転請求権仮登記がなされた。その後、乙がこの2号仮登記上の権利を丙に売却した。
* 丙が乙から取得した権利は所有権移転請求権という債権であり所有権ではないため所有権以外の権利の移転登記として付記登記でなされる。また所有権以外の権利が確定的に乙から丙に移転したので、この登記は仮登記でなく本登記でなされる。
(完了後の登記記録)
* 乙区2番付記1号の丙の登記は本登記なので、余白を設けない。
その後、丙が本登記を取得するまでの流れ
丙は甲区2番付記1号で確定的に乙から甲区2番の所有権移転請求権仮登記を取得したため、丙が甲に対して所有権移転請求権を行使したときは、所有権は直接甲から丙に移転する。乙は結局一度も所有権を取得しなかったため、乙を経由することはない。