- 不動産登記法ー8.仮登記
- 1.仮登記の意義
- 仮登記の意義
- Sec.1
1仮登記の意義
■仮登記の意義
仮登記とは、本登記をするのに必要な手続的又は実体的要件を完備しない場合に、将来の本登記の順位保全のためにあらかじめする登記をいう。(不登法105条)
後に要件が完備して本登記をすれば、その順位は仮登記の順位によることとなり(不登法106条)、その結果、仮登記後になされた第三者の権利の登記は仮登記の本登記より後順位となり、第三者の権利を当該本登記と矛盾する限度において否定する効力をもつ。これが仮登記の順位保全効である。
A・B間で甲土地の売買契約が締結された場合、通常であればA・Bの共同申請でAからBへの所有権移転登記(本登記)をするはずであるが、仮にAが登記識別情報(登記済証)をなかなか見つけられないような場合、本登記の申請をすることができない。もし未登記のまま放置している間にAがCに甲土地を二重譲渡して、先にAからCへの所有権移転登記(本登記)をされてしまえば、BはCに対抗できないことになる。そこで、所有権移転仮登記をしておくことによってBは順位を保全することができる。
甲区3番で上記のようにAからBへの所有権移転仮登記をした後、AがCに二重譲渡して先に所有権移転本登記をしたとする。
上記のように、甲区4番でいったんAからCへの所有権移転登記がなされれば、甲土地の所有権はいったんAからCに移転することになる。しかし、後日Bが甲区3番で先になした仮登記の本登記をすれば、仮登記に遅れてなされたA・C間の処分は仮登記名義人Bとの関係では否定されることになる。
■仮登記の種類
(1) 1号仮登記
登記すべき物権変動の効力は生じているが、登記申請に必要な一定の添付情報を提供することができない場合に、将来されるべき登記の順位を保全するためにすることができる仮登記である。
(不登法105条1号)
(2) 2号仮登記
当事者間で物権変動はまだ生じていないが、将来において物権変動を生じさせる請求権等が発生している場合に、将来物権変動の効力が生じたときになすべき登記の順位を保全するためにすることができる仮登記である。(不登法105条2号)
■1号仮登記
(1) 意義
登記すべき物権変動は既に生じているが、登記申請に必要な一定の添付情報を提供することができない場合にすることができる仮登記である。
(2) 要件
登記を申請するために申請情報と併せて提供すべき情報(添付情報)のうち、法務省令で定めるものを提供することができない場合には、仮登記をすることができるとされている。
「法務省令で定めるもの」とは、以下のとおりである。(不登規178条)
① 登記識別情報
② 第三者の許可、同意又は承諾を証する情報
例えば、農地法の許可書がこれに当たる。農地法の許可は既に得られているが、許可書を紛失してしまったような場合である。
先例 | (S29.10.5民甲2022号) |
書面申請の場合に、申請情報と併せて印鑑証明書を提供することができないときは、仮登記をす
ることはできない。 |
⇒ 印鑑証明書は仮登記においても提供しなければならないので、印鑑証明書が提供できないときは仮登記もできないことになる。
住所証明書が提供できない場合や、登録免許税相当額を調達できないことを理由に仮登記をすることもできない。