- 不動産登記法ー7.不動産質権に関する登記
- 1.不動産質権に関する登記
- 不動産質権に関する登記
- Sec.1
1不動産質権に関する登記
■不動産質権の意義
「不動産質権」は、債権者が債務者や第三者(物上保証人)から担保として提供された不動産を、弁済があるまで占有して使用収益し、弁済がないときはその目的物を競売して優先弁済を受けることができる約定担保物権である。不動産質権は、質権者と設定者の契約により設定されるが、要物契約とされているため、不動産の引渡しによりその効力を生ずる。(民法344条)
■質権の目的物
質権は、不動産(所有権)の他、地上権、永小作権、採石権を目的とすることもできる。
先例 | (S30.5.16民甲929号) |
譲渡又は転貸をなしうる旨の登記のある賃借権を目的として、質権設定登記をすることができる。 |
⇒ さらにその特約がない場合でも、賃貸人の承諾証明情報が提供できれば、設定登記ができる。
(書式精義中)
■質権の登記事項
(1) 絶対的登記事項
① 債権額
② 債務者の氏名、住所
(2) 任意的登記事項
① 存続期間の定めがあるときは、その定め
不動産質権の存続期間は、10年を超えることができない(民法360条)10年より長い期間を定めた場合には、10年に短縮される。
② 利息に関する定めがあるときは、その定め
不動産質権者は、利息の請求ができないのが原則である(民法358条)が、特に利息の請求ができる旨の特約をしたときはこれを登記することができる。
③ 違約金又は賠償額の定めがあるときは,その定め
違約金又は賠償額の定めがあるときは、その定めが登記事項となる。
抵当権の場合は違約金の定めは登記事項とされていないが、不動産質権の場合には違約金の登記も可能である。
④ 債権に付した条件があるときは,その条件
債権に付した条件があるときは、その条件が登記事項とされるので、質権の被担保債権に停止条件や解除条件が付されているときは、その条件を登記する。
⑤ 民法346条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
質権は、元本、利息、違約金、質権実行の費用、質物保存の費用、債務不履行又は質物の隠れた瑕疵により生じた損害の賠償を担保する(民法346条)が、設定行為でこれと異なる定めができ、その場合、その定めが登記事項となる。
⑥ 民法359条の規定によりその設定行為について別段の定めがあるときは、その定め
例えば、質権者は不動産を使用収益できない旨を定めた場合である。
⑦ 民法370条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
例えば、立木には質権の効力は及ばない旨を定めたような場合である。
登記事項の差異
抵当権 | 不動産質権 | |
存続期間の定め | × | ○ |
違約金の定め | × | ○ |
賠償額の定め | ○ | ○ |
使用収益できない旨の定め | × (*1) | ○ |
(*1)抵当権者にはもともと使用収益権がない。
不動産質権設定登記 申請書 記載例
(*1)債権金額を課税価格として、その1000分の4である。(登録免許税法別表一、一、(五))