• 不動産登記法ー5.根抵当権に関する登記
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1根抵当権設定登記

堀川 寿和2022/01/13 16:03

根抵当権の意義

 「根抵当権」とは、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度で担保する抵当権をいう。

(民法398条の2 1項)



上記のような根抵当権を設定しておけば、A・B間で生じた金銭消費貸借上の債権債務について、元本が確定するまで1000万円を限度として担保できることになる。元本確定時点で未だ弁済されていないA・B間の金銭消費貸借上の取引によって発生した債権債務を担保することになるため、どの債権が担保されることになるのかは、最終的に元本が確定するまでわからない。その意味で根抵当権は、設定段階では不特定な債権を担保することになるのである。

 

    根抵当権設定登記 申請書 記載例


根抵当権の法的性質

 根抵当権は不特定債権を担保するものであるため、この付従性が緩和されている。

① 成立における付従性

 根抵当権は、現に債権が発生しなくてもあらかじめ設定することができる。

② 消滅における付従性

 債権が弁済等によって一時的に消滅しても、根抵当権は消滅しない。継続的な取引によってまた新たな債権の発生が予定されるからである。

③ 元本確定による付従性の回復

 根抵当権も、ひとたび元本が確定するとその時点で弁済されていない債権を担保することが決定し、特定債権を担保する抵当権に限りなく近づいていく。よって元本確定時点で弁済されていない債権(特定債権)を担保することに確定し、それら確定債権の全部が弁済等によって消滅すれば、根抵当権も消滅することになる。

④ 随伴性の否定

 根抵当権によって担保される債権が譲渡されても、根抵当権はそれに伴って移転することもない。(随伴性の否定) 債権と抵当権との結び付きは確定まではないため、確定前に債権が移転してもその債権が根抵当で担保されるべき債権から外れるだけである。

⑤ 元本確定による随伴性の回復

 しかし、元本確定後は根抵当権も随伴性を回復するため、元本確定後に確定債権を譲渡すると、それに伴って根抵当権も移転することになる。


根抵当権の設定

(1) 根抵当権設定の目的物

 抵当権と同様に、民法上根抵当権設定の客体となるのは、不動産(の所有権)、地上権、永小作権である。


(2) 当事者

 根抵当権者となろうとする債権者と、根抵当権設定者(債務者又は物上保証人)の間の設定契約による。共有不動産の場合、共有持分のみに設定することも、共有者全員が不動産全部に1個の根抵当権を設定することもできる。

 根抵当権における債権者は、1人でも、複数でもよい。例えば、X・Yが同一債務者Zに対する不特定の債権を担保するため根抵当権を設定し、根抵当権を準共有することができる。

 この場合、申請情報として「持分」は必要がない。根抵当権の準共有の場合、どれだけの持分を取得することになるかは確定するまでわからないからである。

 また、XとYとで、債権の範囲又は債務者が異なっていても問題ない。

 例えば、X・A間の金銭消費貸借取引上の債権と、Y・B間の売買取引上の債権を担保するために、1個の根抵当権を設定することもできる。