• 不動産登記法ー4.抵当権に関する登記
  • 6.抵当権の順位変更の登記
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  • Sec.1

1抵当権の順位変更の登記

堀川 寿和2022/01/13 15:00

順位変更の意義

「抵当権の順位の変更」とは、抵当権者の合意によって抵当権の順位を絶対的に入れ替えることをいう。抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。(民法374条1項)順位変更の結果、優先弁済権の順位については当初から変更後の順位でそれぞれの抵当権が設定されていたのと同じく扱うことになる。優先弁済の順位の変更であることから、順位変更の当事者となるのは抵当権等の担保権者(先取特権、不動産質権も含む)であり、用益権者(地上権、永小作権、賃借権者等)は順位変更の当事者になることはない



順位変更の要件

(1) 各抵当権者の合意があること

① 合意の当事者

 次の事例の場合、順位に変更のない中間の抵当権者Bも含めてA・B・C三者の合意が必要である。



一方、A・B・Cの順位をA・C・Bの順位に変更する場合には、B・Cのみの合意で足りる。同じくA・B・CをB・A・Cの順位にする場合はA・Bのみの合意で足りる。



 結局、順位変更の合意の当事者は、変更の頭と尻の範囲にある当事者全員によることになる。


(2) 利害関係人の承諾があること

 順位変更は、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない(民法374条1項ただし書)転抵当権者、被担保債権の差押債権者、質権者、抵当権の譲渡・放棄を受けている者などが利害関係人の例である。抵当権設定者や債務者は利害関係人に当たらない。順位変更の結果、順位の上がる担保権の上に上記の権利を有する者は、不利益になることはないため、利害関係人とはならない。



 順位変更の前後で順位の変わらない2番抵当権の上に転抵当等の権利を有する者は、変更後の順位で上位にくる担保権者の債権額が従前の担保権者より大きい場合には、利害関係人となる。


上記の事例で、1番抵当権と2番抵当権の順位変更をする場合、順位の下がるAから抵当権の譲渡を受けている甲は利害関係人となる。


先例(S46.12.24民甲3630号)

その不動産を目的とした利用権者、所有権の差押債権者、所有権の仮登記名義人は、順位の変更の利害関係人には該当しない。

 

(3) 変更登記があること

 順位の変更は、当事者間で合意がされただけでは効力を生じない。順位の変更の登記がされることによって変更の効力が生ずる。(民法374条2項)順位変更の場合、登記は単なる対抗要件に止まらず、効力発生要件とされている。


順位変更の登記申請手続

(1) 申請人

 抵当権の順位変更登記は、順位変更の合意をした担保権者全員の合同申請によってする。共同申請と違って「登記権利者」「登記義務者」という概念はなく、全員を「申請人」とする。


(2) 原因日付

 利害関係人の承諾が合意の有効要件であるため、合意後に利害関係人の承諾が得られた場合には、承諾の日が原因日付となる。順位変更の効力は、登記によって初めて生じることと比較。


(3) 登録免許税

 順位変更の登録免許税は、抵当権1個につき1000円である。(登録免許税法別表一、一、(八))


先例(S48.10.31民甲8188号)
順位の変更の当事者の一部に、国又は登録免許税法別表第2に掲げられた非課税法人(地方公共団体等)が含まれている場合でも、国等を含めて当事者全員が課税される。


(4) 登記の実行

 順位の変更の登記は、独立の順位番号を付した主登記でなされる。順位の変更の登記がされたときは、登記官は、順位を変更した各抵当権の登記の順位番号欄に、その順位の変更の登記の順位番号をかっこ書きで記録する。(不登規164条)


       抵当権の順位変更登記 申請書 記載例

(*1)合意と利害関係人の承諾がそろった日が原因日付となる。、

(*2)1番抵当権、2番抵当権、3番抵当権の全てを同順位とする順位変更の場合には、

変更後の順位 第1 1番抵当権

       第1 2番抵当権

       第1 3番抵当権       とする。

(*3)申請人全員の担保権取得の際の登記識別情報(登記済証)を提供する。共同申請ではないため、登記義務者の概念はなく本来ならば登記識別情報の提供は不要な場面であるが、不登法22条の「その他…政令で定めると登記として提供が要求されている。


 (完了後の登記記録)



先例(S46.10.4民甲3230号)
変更後の順位をさらに変更する場合は、別個の順位変更の登記によってする。

 ⇒ 順位変更の変更の登記をすることはできない。