• 不動産登記法ー3.用益権に関する登記
  • 5.地役権に関する登記
  • 地役権に関する登記
  • Sec.1

1地役権に関する登記

堀川 寿和2022/01/13 10:17

意義

 「地役権」とは、設定行為で定めた目的に従って、他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供する権利をいう。(民法280条)通行地役権が典型であるが、引水地役権、眺望地役権、日照地役権などもある。



地役権設定の当事者

  要役地の所有者と承役地の所有者の間の地役権設定契約による。


先例(S39.7.31民甲2700号)
地上権者を登記権利者として地役権の設定登記をすることもできる。

⇒ 用益権者も自己の用益権のために地役権の設定を受けることができる。逆に、用益権者が設定者として隣地のために地役権を設定することも可能である。


地役権設定の制限

(1) 一筆の土地の一部の地役権設定

① 要役地の一部のための地役権

 一筆の土地の一部を「要役地」とする地役権の設定をすることはできない。地役権は要役地全体の便益のために設定されるべきものだからである。

② 承役地の一部のための地役権

 逆に、承役地の一部のために地役権を設定することは可能である。

 通常、一筆の土地の一部に用益権の設定ができないはずであるが、地役権については権利の性質上特別に認められる。後述するが、この場合、「範囲」が登記事項とされる。


(2) 二重地役権の設定

 地役権は、同一の承役地を目的として重ねて設定登記ができる。(民法285条2項)


先例(S38.2 .12 民甲390号)
承役地の一部にAのため地役権設定後、重ねて同一部分を承役地としてBのために地役権を設定することができる。

⇒Aの承諾は不要である。


先例(S43.12.27民甲3671号)
同一の土地を承役地として、異なる要役地のために送電線保持を目的とする数個の地役権設定登記をすることができる。

 ⇒この場合も、Aの承諾は不要である。


(3) 共有持分のみの地役権設定

 地役権は要役地の共有持分のために設定できない。(登研309号)

 また承役地の共有持分の上に設定することもできない。地役権は要役地全部のための利用権だからである。従って要役地の共有者の一人のための通行地役権の設定登記は認められない。