- 不動産登記法ー1.不動産登記法の全体構造
- 2.登記申請手続
- 登記申請手続
- Sec.1
1登記申請手続
■登記申請の諸原則
(1) 申請主義
登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁もしくは公署の嘱託がなければ、することができない。(不登法16条)つまり、一定の例外を除いて、物権変動の当事者から「登記をしてくれ」という申し出(申請)があってはじめて登記が実行される。
cf 登記官の職権による登記
(2) 共同申請主義
① 共同申請の原則
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。(不登法60条)つまり、一定の例外を除き、不動産に関する権利を取得した者が単独で登記を申請することはできず、権利を失う者(登記義務者)と共同で申請する必要がある。
平成28年7月1日に甲から乙に甲土地について売買契約が成立し、その所有権移転登記を申請する場合、登記権利者である買主乙と登記義務者である売主甲が共同して登記の申請をする必要がある。権利を失うことになる登記義務者を関与させることによって、ニセの登記を防止するためである。
② 例外-単独申請
次の場合には、例外的に登記権利者(登記名義人)が単独で登記申請ができる。詳しくは、各論にて。
(イ)所有権保存登記
(ロ)相続・合併による権利の移転登記
(ハ)登記名義人の氏名・住所等の変更(更正)登記
(ニ)判決による登記
■登記申請の方法
登記申請は、登記所に対して登記申請情報(登記の申込書)と法定の添付情報を提供することによってされるが、その提供方法によって2つの申請形態がある。(不登法18条)
(1) 電子申請(オンライン申請)
インターネットによって登記情報と法定の添付情報を送信することによってなされる申請方法である。
(2) 書面申請
書面によって登記申請書と法定の添付書面を提出することによってなされる登記申請である。法務大臣が指定した一部の登記所では、書面に代えてフロッピ一ディスク等の磁気ディスクに必要事項を入力して、書面に代えて提出することも可能である。また、書面等を直接持参せずに、郵送することも可能である。
■登記申請情報の内容(登記申請書の記載事項)
登記の申請をする際には、登記の申込書に当たる申請書(申請情報)を登記所に提出(提供)する必要がある。つまり、書面によって登記を申請する場合は、申請書に必要事項を記載してこれを登記所に提出する。オンライン申請の方法で登記を申請するときは、パソコンの画面上に必要事項を入力して、これを「申請情報」としてオンラインで送信する。このような、申請書の記載事項(申請情報として提供すべき情報)を申請情報の内容と呼んでいる。
(*1)登記原因証明情報として、具体的には、甲・乙間の売買契約書もしくは売買契約の内容を記載した報告的書面を提供する。
(*2)登記義務者甲が所有権取得の際に登記所から通知を受けた登記識別情報(登記済証)を提供する。
(*3)登記義務者甲の市区町村長作成の実印の印鑑証明書を提供する。
(*4)具体的には、登記権利者乙の住民票の写しを提供する。
(*5)具体的には、登記義務者甲及び登記権利者乙の司法書士Aに対する委任状を提供する。