• 民法親族・相続ー16.特別の寄与
  • 1.特別の寄与
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1特別の寄与

堀川 寿和2022/01/06 16:23

特別寄与料制度の趣旨

 相続人が被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合は、その者の相続分の算定に当たって寄与分が考慮され、他の相続人より多くの財産を相続することができる。それに対して、相続人以外の親族は、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合であっても、相続人ではないので、遺産分割手続において寄与分として財産の分配を請求することはできない。そこで、寄与分が認められている相続人との公平を図るために、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族を「特別寄与者」とし、特別寄与者には「特別寄与料」の支払請求権が認められている。

特別寄与者の特別寄与料請求権

(1) 特別寄与者

 特別寄与者とは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族をいう(民法1050条1項)。

ただし、次の者は特別寄与者からは除かれる(同項)。

(イ) 相続人

相続人には寄与分が認められているからである。

(ロ) 相続人の欠格事由(民法891条)に該当しまたは廃除によってその相続権を失った者

これらの者に特別寄与料請求権を認めてしまうと、これらの者に相続を認めない趣旨に反するからである。


(2) 特別寄与者の特別寄与料請求権

 特別寄与料とは、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭をいう(民法1050条1項)。特別寄与者は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与料の支払を請求することができる(同項)。このように、請求の相手方は相続人である。


(3) 特別寄与料の額

 特別寄与料の支払については、原則として、当事者間の協議によって定められる。しかし、特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる(民法1050条2項本文)。その場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める(民法1050条3項)。

なお、特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない(民法1050条4項)。


(4) 権利行使期間の制限

 家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる期間については制限があり、次の(イ)または(ロ)いずれかの期間が経過したときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができなくなる(民法1050条2項ただし書)。

(イ) 特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6箇月を経過したとき

(ロ) 相続開始の時から1年を経過したとき


(5) 相続人が複数いる場合

 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に当該相続人の相続分を乗じた額を負担する(民法1050条5項)。この相続分は、相続分の指定がされていないときは法定相続分であり、相続分の指定