• 民法親族・相続ー15.遺留分
  • 2.遺留分の範囲
  • 遺留分の範囲
  • Sec.1

1遺留分の範囲

堀川 寿和2022/01/06 16:02

遺留分権利者

(1) 意義

 遺留分を有する者を遺留分権利者という。


(2) 遺留分権利者の範囲

 遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人である(民法1042条)。つまり、遺留分を有するのは、配偶者、子(代襲相続人である直系卑属を含む)、直系尊属である。

胎児は、相続についてはすでに生まれたものとみなされるため、胎児も子として遺留分権利者となる。


①包括受遺者

 包括受遺者は、相続人ではないので、遺留分を有しない。


②相続欠格者、廃除者、放棄者

 相続欠格者、廃除された者、相続を放棄した者は、相続人ではないので、遺留分を有しない。

 ただ、相続欠格、廃除の場合、代襲相続人がいれば、その者が相続人として遺留分権利者となる。


遺留分を算定するための財産の価額

遺留分の額は、遺留分を算定するための財産の価額を基礎にして求める。


(1) 遺留分を算定するための財産の価額

 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその(生前)贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額である(民法1043条1項)。

遺留分を算定するための財産の価額
= 被相続人が相続開始時に有した財産の価額 + (生前)贈与した財産の価額 - 債務の全額

例えば、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額が3000万円、生前になされた贈与の価額が500万円、生前に残した債務の額が1000万円である場合、遺留分算定の基礎財産の価額は、3000万+500万-1000万円で2500万円となる。


(2) 算入される(生前)贈与の範囲

① 相続人以外の第三者に対する贈与

相続人以外の第三者に対する(生前)贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、その価額が算入される(民法1044条1項前段)。

ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にした贈与についても、算入される(民法1044条1項後段、3項)。当事者双方というのは、贈与者と受贈者のことである。ここでいう「損害を加えることを知って」とは、積極的な害意があることは要せず、贈与によって、遺留分権利者の遺留分を侵害することを知っていれば足りる。


② 相続人に対する贈与

相続人に対する(生前)贈与については、相続開始前の10年間にしたものに限り、その価額(婚姻もしくは養子縁組のためまたは生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)が算入される(民法1044条3項)。なお、被相続人が特別受益につき持戻し免除の意思表示をしていた場合であっても、算入されることになる(最判平24.1.26)。

ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、10年前の日より前にした贈与についても、算入される(民法1044条3項→1項後段)。


③ 贈与の目的財産の滅失またはその価格の増減があった場合の贈与価額

贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、またはその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなして定められる(民法1044条2項→904条)。

④ 遺留分を算定するための財産の価額

以上を踏まえて、さきほどの式を書き換えると、次のようになる。

遺留分を算定するための財産の価額
= 被相続人が相続開始時に有した財産の価額 + 第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内)+ 相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内)- 債務の全額


(3) 負担付贈与等がされた場合に算入される額

① 負担付贈与

 負担付贈与がされた場合における贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする(民法1045条1項)。


② 不相当な対価をもってした有償行為

 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなされる(民法1045条2項)。


遺留分の割合

(1) 単独相続の場合

 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、「遺留分を算定するための財産の価額」に、次の割合を乗じた額を受ける(民法1042条1項1号・2号)。


遺留分の割合
原則2分の1
相続人が直系尊属のみ3分の1


遺留分額(単独相続の場合)
= 遺留分を算定するための財産の価額 × 2分の1(*1)

(*1)直系尊属が相続人である場合は3分の1


(2) 共同相続の場合

 遺留分を有する相続人が数人ある場合には、遺留分の割合は、上記の割合にその各自の法定相続分を乗じた割合となる(民法1042条2項)。

遺留分額(共同相続の場合)
= 遺留分を算定するための財産の価額 × 2分の1(*2)× 遺留分権利者の法定相続分

(*2)直系尊属のみが相続人である場合は3分の1