• 民法親族・相続ー13.遺言
  • 4.遺言の執行
  • 遺言の執行
  • Sec.1

1遺言の執行

堀川 寿和2022/01/06 15:34

遺言の執行の意義

 遺言の執行とは、遺言の効力が発生した後、その内容を実現するために必要な事務を行うことをいう。

遺言の執行をする者

 遺言の執行をする者は、相続人である。相続人は、被相続人の一切の権利義務を承継しているため、被相続人の遺言についてもその執行すべき立場にある。ただ、後述するが、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者が遺言の執行を行う。



遺言書の検認

 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない(民法1004条1項前段)。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする(同項後段)。ただし、この規定は、公正証書遺言および遺言書保管所〔=法務局〕に保管されている自筆証書遺言については、適用しない(民法1004条2項、遺言書保管法11条)。したがって、それ以外の全ての遺言(自筆証書遺言のうち遺言書保管所〔=法務局〕に保管されていないもの、秘密証書遺言、死亡の危急に迫った者の遺言、船舶遭難者の遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言)の場合には、検認が必要になる。

 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封することができない(民法1004条3項)。家庭裁判所に遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、または家庭裁判所外においてその開封した者は、5万円以下の過料に処せられる(民法1005条)。ただ、家庭裁判所外の場所で勝手に開封したからといって、遺言自体が無効になることはない。


判例(大判大7.4.18)
 遺言書の検認とは、遺言の形式その他の状態を調査し、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造や変造を防止するための手続である。つまり、一種の証拠保全の手続といえる。

 公正証書遺言については、これを公証人が作成、保管することから、また遺言書保管法により遺言書保管所に保管されることとなる自筆証書遺言については、遺言書保管官が厳重にこれを保管することから、一般に偽造、変造等のおそれがなく、保管が確実であるため、検認が不要とされる。


判例(大決大4.1.16)
遺言書の検認は、その遺言の有効・無効を判断するための手続ではない。

⇒ したがって、検認の手続きをしていない遺言であっても、無効ということはない。