- 民法親族・相続ー13.遺言
- 1.総則
- 総則
- Sec.1
■遺言の法的性質
(1) 要式行為
遺言は、民法で定められた方式に従わなければならない厳格な要式行為で、これに反する遺言は効力を生じない。
(2) 相手方のない単独行為
遺言は一種の法律行為であるが、契約ではなくその性質上相手方のない単独行為とされている。
(3) 死後行為
遺言は、遺言者の死亡によって初めて効力を生ずる(民法985条1項)。
(4) 遺言者は生前いつでも撤回できる
遺言はいつでも、何の理由もなく撤回することができる(民法1022条)し、撤回の自由を制限されることもない(民法1026条)。撤回は遺言の全部または一部についても可能である。
(5) 遺言は代理に親しまない一身専属的行為である
後述のとおり、未成年者(ただし15歳以上に限る)や成年被後見人であっても意思能力さえあれば法定代理人の同意なく遺言することができる。また被保佐人も保佐人の同意なく遺言することができる。
■遺言能力
(1) 遺言能力の意義
遺言能力とは、遺言をなしうる能力をいい、遺言者は遺言をするときに、この能力を具備しなければならない。
(2) 遺言能力者
遺言も法律行為であるため、それをするには意思能力を要求される。しかし、遺言は通常の取引行為ではないので行為能力は必要がない。したがって、民法総則の行為能力の規定は適用されない(民法962条)。
① 未成年者
未成年者でも、15歳に達した者は単独で遺言することができる(民法961条)。なお、15歳に達した未成年者が遺言をするのに父母の同意が必要であるといった規定は存在しない。15歳に達していない者のした遺言は無効である。
② 成年被後見人
成年被後見人であっても、事理を弁識する能力を一時回復した時は、医師2人以上の立会いがあれば、有効に遺言することができる(民法973条1項)。
③ 被保佐人、被補助人
被保佐人(被補助人)は民法13条1項列挙の行為についても、保佐人(補助人)の同意なしに遺言することができる。
(3) 遺言能力の存在時期
遺言者は、遺言する時においてその能力を有していなければならない(民法963条)。すなわち、遺言書作成の全過程を通して遺言能力を備えている必要がある。遺言をした後で遺言能力を失っても、遺言の効力に影響はない。