• 民法親族・相続ー12.相続人の不存在
  • 5.民法958条3第1項と民法255条の関係
  • 民法958条3第1項と民法255条の関係
  • Sec.1

1民法958条3第1項と民法255条の関係

堀川 寿和2022/01/06 14:25

問題の所在

 Aが死亡したが、その相続人は存在しなかったため、Aの相続財産について清算がされ、清算後に甲土地の共有持分が残った(甲土地はAとB2分の1ずつの共有)。

 この場合、甲土地についてのAの共有持分は、民法255条によると他の共有者であるBに帰属するはずであるが、仮にAの特別縁故者甲がこの共有持分2分の1について、民法958条の3第1項の分与請求をしてきた場合、他の共有者であるBと特別縁故者甲のどちらが優先されるのかが問題となる。



判例(最判平1.11.24)の結論によると、民法958条の3の規定が優先する。つまり家庭裁判所は、相続財産に属する共有持分について、特別縁故者に分与することができる(最判平1.11.24)。

特別縁故者が分与請求しないか、もしくはしても家庭裁判所によって却下された場合に初めて、他の共有者に帰属することになる。


判例(最判平1.11.24)
 共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、民法958条の3の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、その財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときに初めて、民法255条により他の共有者に帰属する。