• 民法親族・相続ー9.相続の効力
  • 3.遺産分割
  • 遺産分割
  • Sec.1

1遺産分割

堀川 寿和2022/01/06 13:24

遺産共有

 相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属する(民法898条)。この共有関係はその後、遺産分割が行われるまで継続する。相続人が1人の場合は、遺産はそのまま相続人の単独所有となるため、遺産の共有という問題は生じない。

遺産分割の意義

 遺産分割とは、共同相続の場合に、一応相続人の共有となっている遺産を相続分に応じて分割し、各相続人に分配することをいう。

遺産分割の自由と禁止

(1) 原則

 共同相続人は、相続の開始後、いつでも、その協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる(民法907条1項)。


(2) 例外

 次の場合には、一定期間遺産分割をすることができない。

① 被相続人が遺言で遺産分割を禁止した場合

 被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止することができる(民法908条)。禁止は遺産の全部についてであっても、一部であってもよい。

 遺言により遺産分割を禁止された場合は、被相続人の最終意思を尊重するため、共同相続人全員の合意があったとしても、その期間内は遺産分割することはできない(民法907条1項)。


② 共同相続人間の特約により遺産の分割を禁止した場合

 共同相続人の全員で、5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁止する旨の特約をすることができる。また、この特約は、5年を超えない期間内で更新することもできる。なお、この場合には、共同相続人全員の合意があれば、禁止の期間内でも遺産の分割をすることができる。


③ 家庭裁判所が遺産分割を禁止した場合

 遺産の分割について、共同相続人間において協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部または一部の分割を家庭裁判所に請求することができる(民法907条2項本文)。この場合において、特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部または一部について、その分割を禁止することができる(民法907条3項)。家庭裁判所は分割禁止に際し必ず期間を定めなければならず、その期間はやはり5年を超えるこができないと解されている。その後事情に変更が生じれば、家庭裁判所は相続人の申立てによって、いつでも遺座分割の禁止の審判を取消しまたは変更する審判をすることができる(家事事件手続法197条)。