• 民法親族・相続ー9.相続の効力
  • 2.相続分
  • 相続分
  • Sec.1

1相続分

堀川 寿和2022/01/06 12:14

相続分の意義

(1) 相続分の意義

 「相続分」とは、共同相続の場合に、各共同相続人が相続財産の上にもつ権利義務の割合をいう。


(2) 相続分の決定方法

① 指定相続分

 被相続人が遺言によって相続分を指定しているか、または被相続人が遺言で第三者に相続分の指定を委託している場合の相続分である。


② 法定相続分

 上記指定がない場合に、民法の規定によって定められる相続分である。


指定相続分

(1) 意義

 被相続人は、遺言で、共同相続人の相続分を定め、またはこれを定めることを第三者に委託することができる(民法902条1項)。この規定にもとづいて、被相続人またはその委託を受けた第三者によって定められた相続分を指定相続分という。

 被相続人は、共同相続人中の一部の者の相続分のみを定め、またはこれを第三者に定めさせることもでき、この場合、相続分を定められなかった他の相続人の相続分は法定相続分による(同条2項)。


(2) 相続分の指定の要件

① 被相続人自ら遺言で指定するか、または第三者に指定を委託すること

② 相続分の指定または指定の委託は必ず遺言によってすること。


法定相続分

(1) 意義

法定相続分とは、相続分の指定がない場合に、法律で定められた相続分である。


(2) 法定相続分


法 定 相 続 分
① 配偶者と子配偶者      2分の1
子        2分の1
② 配偶者と直系尊属配偶者      3分の2
直系尊属     3分の1
③ 配偶者と兄弟姉妹配偶者      4分の3
兄弟姉妹     4分の1


① 配偶者と子が相続人である場合

 子の相続分と配偶者の相続分は各2分の1で、子が数人ある場合、各自の相続分は平等であるため、2分の1の相続分をさらに頭割りすることになる。なお、養子は、縁組の日から養親の嫡出子たる身分を取得するので、養親の実子と相続分は同じである。


(イ) 代襲相続の場合

代襲相続の場合には、被代襲者の本来の相続分をさらに頭割りすることになる。



(ロ) 非嫡出子の相続分

非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分と同じである。



② 配偶者と直系尊属が相続人である場合

 配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1である。なお、実父母のほかに養父母がいる場合には、3分の1をさらに頭割りすることになる。



③ 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

 配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1である。兄弟姉妹が複数いる場合には、4分の1を頭割りすることになる。




 父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となる。




④ 血族相続人のみが相続人である場合(配偶者がいない場合)

 第1順位の相続人がいれば、第2順位、第3順位の相続人に相続権はない。第1順位の相続人がいなければ、第2順位の相続人に、第2順位の相続人がいなければ第3順位の相続人に相続権あることになる。

(イ) 子がいる場合(第1順位)

 第1順位の者がすべての相続分を取得する。複数名いる場合には頭割りすることになる。



(ロ) 第1順位の相続人がなく直系尊属が相続人である場合(第2順位)

 第2順位の者がすべての相続分を取得する。複数名いる場合には頭割りすることになる。



(ハ) 第1順位、第2順位いずれの相続人もなく、兄弟姉妹が相続人である場合(第3順位)

 第3順位の者がすべての相続分を取得する。複数名いる場合には頭割りすることになる。



⑤ 血族相続人がおらず配偶者のみが相続人である場合

配偶者がすべて単独で相続することになる。

(3) 二重に相続資格を有する場合

① 祖父または祖母が孫を養子にしていた場合



 「Aの相続に関し、Dは養子としての相続分(3分の1)とCの代襲相続人としての相続分(3分の1)の合計3分の2の相続分を有することになる!」


② 兄(姉)が弟(妹)を養子にした場合



 「甲の相続に関し、Bは子としての相続分(4分の1)と、兄Aの代襲相続人としての相続分(4分の1)の合計2分の1の相続分を有することになる!」


③ 養子が実子と婚姻した場合


 「Cの相続に関し、Bは配偶者としての相続分(4分の3)と、兄弟(姉妹)としての相続分(8分の1)の合計8分の7の相続分を有することになる!しかし、この場合は、先例(昭32.8.9)でBは配偶者としての相続分(4分の3)のみを取得するにとどまるとしている。」