• 民法親族・相続ー6.扶養
  • 1.扶養の当事者
  • 扶養の当事者
  • Sec.1

1扶養の当事者

堀川 寿和2022/01/05 16:23

「扶養」とは、肉体的、精神的、社会的事情等によって、自己の資産・労力によって生計を立てることのできない者に対して、生活上の援助をなすことをいい、「扶養義務」とは、一定の親族関係にある者が扶養をすべき私法上の義務をいう。

扶養の当事者

(1) 意義

 扶養当事者とは、扶養の義務を負う者(扶養義務者)と扶養請求権を有する者(扶養権利者)をいう。


(2) 第1次的扶養義務者

 直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある(民法877条1項)。


① 直系血族間

 父母と子、祖父母と孫は相互に扶養義務を負う。自然血族、法走血族を問わないため、実親子・養親子、また嫡出子・非嫡出子を問わない。父は、直系血族として、未成年の子に対して扶養義務を負い、父が必ずしも親権者であることは必要でない。


② 兄弟姉妹

 兄弟姉妹間の扶養義務も、兄弟姉妹であれば全血兄弟・半血兄弟、また養子と養親の実子を問わない。


(3) 第2次的扶養義務者

 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる(民法877条2項)。ただ、扶養義務の審判のあった後、事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる(同条3項)。

直系・傍系を問わず、また血族・姻族を問わない。「特別の事情があるとき」に限られるため、直系血族および兄弟姉妹以外の3親等内の親族の場合、家庭裁判所の審判によって例外的に扶養義務が負わされる


扶養の順位

(1) 扶養義務者が複数いる場合

 扶養義務者が数人ある場合には、まず、当事者である扶養を受ける者と扶養をする者の協議によって扶養すべき者の順序を定める。しかし、当事者間に協議が調わないときまたは協議をすることができないときは、家庭裁判所がこれを定める(民法878条前段)。


(2) 扶養権利者が複数いる場合

 扶養権利者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、(1)と同様である(民法878条後段)。


扶養の程度、方法

 扶養の程度または方法については、原則として、当事者間の協議によって定める。

 扶養の程度または方法について、当事者間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める(民法879条)。