• 民法親族・相続ー4.親権
  • 3.親権の喪失
  • 親権の喪失
  • Sec.1

1親権の喪失

堀川 寿和2022/01/05 15:36

意義

 父母の親権行使が、子の福祉および子の財産の保全を図る目的の観点から親権者として相当でない場合、あるいは管理が失当であったことにより子の利益を著しく害した場合には、子の福祉のために、親権を喪失・停止あるいは財産管理権を喪失させる必要がある。そこで、家庭裁判所は、子の親族などの一定の者からの請求によって、その親権あるいは管理権を喪失させたり、親権を停止させたりすることによって、子の福祉および子の財産の保全を図っている。


親権の喪失の審判

 父または母による虐待または悪意の遺棄があるときその他父または母による親権の行使が著しく困難または不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人または検察官の請求により、その父または母について、親権喪失の審判をすることができる(民法834条本文)。ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない(同条ただし書)。


(1) 要件

① 父または母による虐待または悪意の遺棄があるとき

② 父または母による親権の行使が著しく困難または不適当であることにより子の利益を著しく害するとき

③ 2年以内にその原因が消滅する見込みがないとき


(2) 請求者

子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人または検察官


(3) 効果

 親権喪失の審判があると、その者は親権を喪失し、身上監護権、財産管理権等を失うため、共同親権者の一方が親権喪失の審判を受けたときは、他方の単独親権となり、単独親権者も親権喪失の審判を受ければ後見が開始する(民法838条1号)。


親権の停止の審判

 父または母による親権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人または検察官の請求により、その父または母について、親権停止の審判をすることができる(民法834条の2第1項)。家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮して、2年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める(同条2項)。


(1) 要件

 父または母による親権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するとき


(2) 請求者

 子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人または検察官


(3) 停止期間

 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮して、2年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める(民法834条の2第1項)。効果親権停止の期間中は、親権喪失と同様の効果が生じるため、その者は身上監護権、財産管理権等を失うことになる。