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1養子

堀川 寿和2022/01/05 13:53

養子の意義

 「養子」とは、養子緑組によって養親の嫡出子としての身分を取得した者をいう。そして養子縁組とは、本来血族関係にない者につき、人為的に親子関係を形成する制度をいう。自然血族である実子に対し、法定血族と呼ばれる。養子には、「普通養子」と「特別養子」の2種類がある。

普通養子

 養子縁組が有効に成立するためには、次の実質的要件と形式的要件を備えなければならない。


(1) 実質的要件

① 緑組意思の合致があること

 養子緑組の成立には、当事者に縁組意思があり、その合致がなければならない(民法802条1号)。ここでいう「緑組意思」とは、真に親子関係を形成する意思を必要とするのか(実質的意思説)、または単なる届出意思の合致のみで足りるのか(形式的意思説)につき、判例(最判昭23.12.23)は実質的意思説を採用する。したがって、真に親子となる意思がないのに、何らかの方便として縁組届がなされても、縁組は仮装縁組として無効となる。

a) 縁組意思の存在時期

 縁組意思は、縁組届作成時のみならず、原則として届出をする時点にも存在していなければならない。


判例(最判昭45.11.24)
 当事者間で縁組の合意があり、かつその当事者から他人に届出の委託がなされたときは、届出受理の当時当事者が意識を失っていたとしてもその受理前に翻意した等、特段の事情がない限り、その受理によって養子縁組は有効に成立する。


b) 縁組意思能力

 縁組意思は、身分行為であるから、当事者の独立した意思があることが必要であるが、必ずしも行為能力があることを要しない。したがって未成年者であっても15歲以上の者は、法定代理人の同意を得ることなく、単独で縁組することができる(民法797条1項)。

cf.養子となる者が15歳未満のときは、例外的にその法定代理人が本人に代わって縁組の承諾をする(民法797条 代諾縁組)。

 また、成年被後見人も意思能力があれば、成年後見人の同意を得ないで、単独で縁組をすることができる(民法799条→738条)。

② 縁組障害事由に該当しないこと

 縁組の成立には、民法792条から798条に規定する要件を満たすこと(縁組障害事由に該当しないこと)が必要となる。縁組障害に反してされた縁組は、縁組の取消事由となる。

a) 養親が20歳に達した者であること(民法792条)

b) 養子となる者が養親となる者の尊属または年長者でないこと(民法793条)

これ以外には特別の制限はないため、成年者を養子にすることも、嫡出でない自己の子や孫やひ孫等の直系卑属、自分の弟や妹を養子とすることもできる。逆に、自分よりも年少であってもおじ・おばを養子にすることはできない。おじ・おばは傍系尊属に当たるからである。

c) 後見人が未成年被後見人または成年被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得ること(民法794条前段)

さらに、後見の任務の終了後でも、管理の計算が終わらないうちに縁組をするには、家庭裁判所の許可が必要となる(同条後段)。

d) 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者と共にすること(民法795条)

未成年の養子にとって、夫婦がそろって養親となる方が望ましいからである。

ただし、次の場合には例外的に単独で縁組をすることができる(同条ただし書)。

ⅰ)配偶者の嫡出子を養子にする場合

cf.配偶者の非嫡出子を養子とする場合は、原則どおり夫婦が共同して縁組をする必要がある。

この場合にまで単独での縁組を認めると、縁組をした者にとっては嫡出子になるのに、他方との関係では引き続き非嫡出子のままとなってしまい不都合だからである。

ⅱ)配偶者がその意思を表示することができない場合

e) 配偶者のある者が(成年者と)縁組をするには、他方配偶者の同意を得ること(民法796条)

配偶者の一方が縁組をするには、他方の配偶者の同意を要する。相続分等に影響を及ぼす可能性があるからである。養親となる場合も養子になる場合いずれの場合も同様である。

ただし、次の場合には例外的に他方配偶者の同意は不要である(同条ただし書)。

ⅰ)配偶者とともに縁組する場合

ⅱ)配偶者がその意思を表示することができない場合

f) 養子となる者が15歳未満のときは、法定代理人が縁組の代諾をすること(民法797条1項)

 15歳未満の者は自ら縁組ができず、法定代理人の代理によってのみ縁組ができるからである。

 父母共同親権の場合は、父母が共同して代諾しなければならない。また、代諾権者である法定代理人の他に、養子となるべき者の父母でその監護をすべき者が他にいるときは、その者の同意も得なければならない(民法797条2項前段)。例えば、離婚に際し父が親権者、母が監護者と定められた場合には、代諾権者は父だが、父だけの意思で代諾することはできず、監護者たる母の同意も必要となる。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様であるため、親権を停止されている者の同意も必要である(民法797条2項後段)。

g) 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得ること(民法798条)

 養子となる者が15歳以上で自ら縁組する場合のみならず、養子となる者が15歳未満である場合に法定代理人の代諾によって養子縁組をする場合であっても、養子となる者が未成年者である以上、家庭裁判所の許可を得ることが必要である。ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでないため、家庭裁判所の許可を要しない(同条ただし書)。


(2) 形式的要件

 縁組の実質的要件を満たした上で、戸籍法の定めるところに従い、養子緑組の届出をすることによって、縁組は成立する(民法799条→739条1項)。この届出は、創設的届出であり、届出の日に縁組が成立することになる。


判例(最判昭25.12.28)(最判昭50.4.8)
 真実の親子関係のない親から嫡出子出生届がされている場合、その届出を養子縁組の届出へ転換することは認められない。養子縁組は要式行為であり、したがって、その子は15歳に達した後でも、出生届を養子縁組届として追認できる余地はない。

→ 例えば、A・B夫婦の子である甲を、C・D夫婦が嫡出子として届出をしたような場合、その届出を養子縁組の届出に転換できないということである。


判例(最判昭27.10.3)(最判昭38.12.24)
 他人の子を実子として届け出た者による代諾は一種の無権代理であると解されるから、民法総則の無権代理の追認に関する規定及び養子縁組の追認に関する規定の趣旨を類推適用して、養子は満15歳に達した後は、父母でない者が代諾した養子縁組を有効に追認することができる。

→ 例えば、A・B夫婦の子である甲を、C・D夫婦が嫡出子として届出をし、その後C・Dの代諾でE・F夫婦の養子となったような場合である。


判例(最判昭54.11.2)
 認知の届出が虚偽のため無効である場合には、認知者が被認知者を自己の養子とすることを意図し、その後被認知者の法定代理人と婚姻した事実があるとしても、認知届をもって養子縁組届とみなすことはできない。

→ 例えば、AがBの子Cを認知したが、実の子でなかった場合、後にA・Bが婚姻しても、無効な認知届をもって、A・C間の養子縁組届出とみなすことはできない。


縁組の無効

(1) 無効原因

① 縁組意思の不存在

 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないときは、縁組は無効である(民法802条1号)。


判例(最判昭48.4.12)
 夫婦が共同して未成年者と養子縁組をするものとして届出がされたところ、その一方に縁組をする意思がなかった場合には、原則として、縁組の意思のある他方の配偶者についても縁組は無効であるが、その他方と縁組の相手方との間に単独でも親子関係を成立させることが民法795条本文の趣旨にもとるものではないと認められる特段の事情がある場合には、縁組の意思を欠く当事者の縁組のみを無効とし、縁組の意思を有する他方の配偶者と相手方との間の縁組は有効に成立したものと認めることを妨げない。


② 届出をしないとき(民法802条2号)

 ただし、その届出が民法799条において準用する民法739条2項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない(同条ただし書)。


(2) 手続

 縁組の無効は、利害関係人であれば誰でも主張することができ、また、縁組の取消しと異なり、訴えによる必要はない。


(3) 効果

 縁組の無効は、当然に無効であって、何ら縁組の効果を生じない。