- 民法親族・相続ー2.婚姻
- 5.内縁
- 内縁
- Sec.1
1内縁
■内縁の意義
内縁とは、婚姻意思をもって事実上夫婦としての共同生活を営んでいるが、婚姻の届出をしないため、法律上の夫婦と認められない男女の関係をいう。将来において婚姻しようという合意のみで、未だ夫婦としての共同生活を伴わない「婚約」と異なり、また、婚姻意思を欠き、婚姻とは別の形態で営まれる「同棲」とも異なる。
■内縁の要件
内縁として法的保護を受けるためには、原則として届出を除く婚姻の成立要件を満たしていることが必要である。よって、当事者間に「婚姻意思または少なくとも内縁関係を結ぶ意思」があることを要し、かつ「夫婦としての共同生活の事実」があることが必要である。
■内縁の効果
内縁が成立すると、婚姻によって生ずる効果のうち届出に関連するものを除き、原則として全ての効果が認められる。ただ、内縁が成立しても婚姻の届出を強制することはできない(大連判大4.1.26)。
(1) 身分上の効果
民法752条の同居・協力・扶助義務、貞操義務(大判大8.5.12)などは、内縁においても認められる。
(2) 財産上の効果
婚姻費用の分担義務(民法760条)、日常家事に関する債務の連帯責任(民法761条)、夫婦のいずれに帰属するか明らかでない財産の共有推定(民法762条2項)などの規定は、内縁においても類推適用される。つまり、法定財産制に関する規定は全て内縁に準用されるが、夫婦財産契約に関する規定(民法755条~759条)は準用されない。
(3) その他の効果
① 夫婦同氏の原則、配偶者の相続権、姻族関係の発生
いずれも婚姻の届出を前提とするため、内縁には類推適用されない。
② 内縁夫婦間に生まれた子
内縁夫婦間に生まれた子は非嫡出子となる。出生によって母の単独親権に服し、母の戸籍に入り、母の氏を称する。父子関係の発生には別途父の認知を要することになる。
③ 不法行為による損害賠償、慰謝料請求権
内縁配偶者としての地位は、第三者に対しても保護される。
判例 | (大判昭7.10.6) |
生命侵害を受けた者の内縁配偶者は、法律上の配偶者に準じて、加害者に対し財産的ならびに精神的損害(慰謝料)の賠償の請求ができる。 |
判例 | (最判昭38.2.1) |
内縁関係に対して、故意又は過失により不当な干渉をしてこれを破綻させた第三者は、不法行為者となり、これに加担した者も共同不法行為者となる。 |
→両親の嫁いびりに夫自身も加担したような場合である。