- 民法債権ー2.債権各論
- 9.組合契約
- 組合契約
- Sec.1
1組合契約
組合契約とは、数人の当事者がそれぞれ出資をして共同で事業を営むことを約束する契約である。
■組合契約の成立
(1) 組合契約の成立
組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる(667条1項)。
Point 組合契約は諾成契約であり、出資の履行は契約の成立要件ではない。
(2) 出資
① 出資の目的
組合への出資は金銭や不動産に限られず、債権、無体財産権、労務、信用など、財産的価値があるものであれば、何でもよい。(金銭出資の不履行の責任)
Point 出資は、労務をその目的とすることができる(667条2項)。
② 金銭出資の不履行の責任
金銭を出資の目的とした場合に、組合員がその出資をすることを怠ったときは、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない(669条)。
(3) 他の組合員の債務不履行
① 同時履行の抗弁権・債務者の危険負担等の規定の不適用
組合契約に基づく組合員の出資債務の不履行・履行不能について、同時履行の抗弁権(533条)および債務者の危険負担等(536条)の規定は、適用されない(667条の2第1項)。
Point1 組合契約に基づく出資義務を履行しない組合員は、ほかにも出資義務を履行していない組合員がいることを理由に、同時履行の抗弁権を主張して履行を拒絶することができない。
Point2 ある組合員の組合契約に基づく出資義務が履行不能になったからといって、他の組合員は、このことを理由に自己の出資義務の履行を拒絶することはできない。
② 組合契約の解除の制限
組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない(667条の2第2項)。各組合員が組合の解散を請求することができるのは、やむを得ない事由があるときに限られる(683条、後述)。
(4) 組合員の1人についての意思表示の無効等
組合員の1人について意思表示の無効または取消しの原因があっても、他の組合員の間においては、組合契約は、その効力を妨げられない(667条の3)。
■組合の業務執行
組合の業務執行は、組合の内部における内部的業務執行と、組合が外部の者との間で契約などの法律行為をしたりする場合の対外的業務執行とに分かれる。
(1) 内部的業務執行
① 業務の決定および執行の方法
イ)組合員による組合の業務の決定・執行(業務執行者が定められていない場合)
組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する(670条1項)。
ロ)業務執行者による組合の業務の決定・執行(業務執行者が定められている場合)
組合の業務の決定および執行は、組合契約の定めるところにより、1人または数人の組合員または第三者に委任することができる(670条2項)。この委任を受けた者を、業務執行者という。
業務執行者は、組合の業務を決定し、これを執行する(670条3項前段)。業務執行者が数人いる場合は、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する(670条3項後段)。
組合の業務の決定および執行が業務執行者に委任されている場合は、各組合員は単独での業務執行権を失うが、この場合であっても、組合の業務について、総組合員の同意によって決定し、または総組合員が執行することは認められる(670条4項)。
ハ)組合の常務の執行
組合の常務は、各組合員または各業務執行者が単独で行うことができる(670条5項本文)。ただし、その完了前に他の組合員または業務執行者が異議を述べたときは、これらの者が単独で行うことはできず(670条5項ただし書)、組合員の過半数または業務執行者の過半数をもって決定することが必要になる。
② 委任の規定の準用
組合の業務を決定し、または執行する組合員については、委任の規定のうち「受任者の権利義務」に関する規定が、準用される(671条)。
Point 「受任者の報酬」の規定も準用されるので、組合の業務を決定し、または執行する組合員は、特約がなければ、組合に対して報酬を請求することはできない(671条、648条)。つまり、組合に対して当然に報酬を請求できるわけではない。
③ 業務執行組合員の辞任および解任
組合契約の定めるところにより1人または数人の組合員に業務の決定および執行を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができない(672条1項)。また、その組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができる(672条2項)。
④ 組合員の組合の業務および財産状況に関する検査
各組合員は、組合の業務の決定および執行をする権利を有しないときであっても、その業務および組合財産の状況を検査することができる(673条)。
(2) 組合の代理(対外的業務執行)
組合は法人ではないので、契約などの法律行為は、原則として、組合員全員の名でしなければならないが、一定の場合に、一定の者が組合員を代理することが認められている。
① 組合員による代理(業務執行者が定められていない場合)
各組合員は、組合の業務を執行する場合において、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理することができる(670条の2第1項)。
② 業務執行者による代理(業務執行者が定められている場合)
業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理することができる(670条の2第2項前段)。そして、業務執行者が数人あるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、組合員を代理することができる(670条の2第2項後段)。
Point 組合規約等で業務執行者の代理権限を制限しても、その制限は善意無過失の第三者に対抗できない(最判昭38.5.31)。
③ 組合の常務の代理
組合の常務を行うときは、各組合員または各業務執行者が、単独で組合員を代理することができる(670条の2第3項)。
■組合の財産関係
組合は、組合員からの出資や、組合の事業をとおして、権利や義務を取得するため、その帰属が問題となる。また、組合に生じた損益を組合員間でどのように分配するかも問題になる。
(1) 組合財産の帰属
① 組合財産の共有
各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する(668条)。
Point 組合財産についても、民法に特別の規定がない限りは、共有の規定が適用される。したがって、組合員の1人は、保存行為として、単独で、組合財産である不動産につき登記簿上の所有名義者たる者に対して登記の抹消を求めることができる(最判昭33.7.22)。
② 組合員の持分の処分および組合財産の分割
組合財産は共同の事業を営むためのものであるため、組合の事業に支障が生じないよう、組合財産の持分の処分や分割請求に一定の制約がある。
イ)組合財産の持分の処分の制限
組合員は、原則として、組合財産の持分を処分することができる。ただし、組合財産についてその持分を処分したときは、組合員は、その処分をもって組合および組合と取引をした第三者に対抗することができない(676条1項)。
それに対して、組合財産である債権については、組合員は、その持分についての権利を単独で行使することができない(676条2項)。つまり、組合財産である債権は、総組合員が共同してのみ行使することができる。
ロ)組合財産の分割請求の禁止
組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない(676条3項)。
Point 組合財産は総組合員の共有となるが、共同事業を営むための財産であるため、その持分の処分や分割請求が制限または禁止される(団体的拘束)。このような持分の処分や分割請求が制限または禁止された共有の形態は、「合有」と呼ばれることがある。
(2) 組合員の損益分配の割合
組合の事業を通して組合に生じた損益は、組合員間で分配される。
① 損益分配の割合を定めなかった場合
当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定められる(674条1項)。
② 利益または損失についてのみ分配の割合を定めた場合
利益または損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益および損失に共通であるものと推定される(674条2項)。
(3) 組合の債権者の権利の行使
組合の債権者は、組合財産とともに各組合員の個人財産についても、その権利を行使することができる(675条)。
① 組合財産への権利行使
組合の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができる(675条1項)。
② 各組合員の個人財産への権利行使
組合の債権者がその債権の発生の時に各組合員の損失分担の割合を知らなかったときは、組合の債権者は、その選択に従い、各組合員に対して損失分担の割合または等しい割合でその権利を行使することができる(675条2項本文)。それに対して、組合の債権者がその債権の発生の時に各組合員の損失分担の割合を知っていたときは、損失分担の割合でその権利を行使することができる(675条2項ただし書)。
(4) 組合財産に対する組合員の債権者の権利の行使の禁止
組合員の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができない(677条)。
たとえば、組合員の債権者が、組合員の組合財産に対する持分を差し押さえたりすることはできない。また、組合員の債権者がその債権と組合に対する債務とを相殺することもできない。