• 民法債権ー2.債権各論
  • 1.契約総則
  • 契約総則
  • Sec.1

1契約総則

堀川 寿和2021/12/28 12:22


債権各論では、債権の発生原因別に、それぞれに特有のルールを扱う。


 債権の発生原因の1つが契約である。契約総則では、契約に共通のルールが規定されている。


契約の成立

(1) 契約の締結および内容の自由

 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる(521条1項)。これは、契約自由の原則のうち、契約締結の自由である。

 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる(522条2項)。これは、契約自由の原則のうち、契約内容の自由である。


(2) 契約の成立と方式

 契約は、申込み(契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示)に対して相手方が承諾をしたときに成立する(522条1項)。

 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない(522条2項)。これは、契約自由の原則のうち、契約方式の自由である。


(3) 承諾の期間の定めのある申込み

 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない(523条1項本文)。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、その期間中であっても撤回することができる(523条1項ただし書)。

 その承諾の期間内に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う(523条2項)。ただし、承諾の通知が延着した場合、申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる(524条)


(4) 承諾の期間の定めのない申込み

 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない(525条1項本文)。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、相当な期間を経過していなくても、撤回することができる(525条1項本文ただし書)。

 対話者に対してした承諾の期間の定めのない申込みは、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる(525条2項)。対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う(525条3項本文)。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、効力は失われない(523条3項ただし書)。 


(5) 申込者の死亡等

 申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、または行為能力の制限を受けた場合において、次の①または②に該当するときは、その申込みは、その効力を有しない(526条)。

① 申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき
② その相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったとき


(6) 承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期

 申込者の意思表示または取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する(527条)。


(7) 申込みに変更を加えた承諾

 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされる(528条)。


第三者のためにする契約

(1) 第三者のためにする契約の成立

 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する(537条1項)。この契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合または第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない(537条2項)。

 第三者の権利は、その第三者が債務者に対してその契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する(537条3項)。


(2) 第三者の権利の確定

 第三者のためにする契約により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、または消滅させることができない(538条1項)。

 また、第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない(538条2項)。


契約上の地位の移転

 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する(539条の2)。


Point なお、賃貸不動産の譲渡と賃貸人の地位の移転に関しては、賃貸借の規定に特則が定められており(後述)、契約の相手方による承諾は不要である。